あらすじ
ヒト型ロボットが実用化された社会。ロボット学者の祐輔と進化心理学者の玲奈は、ロボットのケンイチと共に暮らしている。三人が出席した人工知能のコンテストで起こった事件から、悪夢のようなできごとは始まった。連続する殺人と、その背後に見え隠れする怜悧な意思が、三人を異世界へ引き寄せる――。人間と機械の境界は何か、機械は心を持つのか。未来へ問いかける科学ミステリ。
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Posted by ブクログ
ヒト型ロボットが実用化された社会。ロボット学者の祐輔と進化心理学者の玲奈は、ロボットのケンイチと共に暮らしている。三人が出席した人工知能のコンテストで起こった事件から、悪夢のようなできごとは始まった。連続する殺人と、その背後に見え隠れする怜悧な意思が、三人を異世界へ引き寄せる――。人間と機械の境界は何か、機械は心を持つのか。未来へ問いかける科学ミステリ。
・レビュー
面白かった。久しぶりにテンション上がりっぱなしだった。哲学は人を狂わすほどに面白くて、やめようと思ってもやめられない究極的な快楽だと思う。瀬名秀明のSFの面白さは『パラサイト・イヴ』で判ったのだけれど、『BRAIN VALLEY』ではSFだけでなく哲学の分野でも面白い小説を書くと気付いた。この作品『デカルトの密室』はSFであり哲学であり、そしてミステリでもある。個人的に最も好きなジャンル三つが含まれているのだから当然面白いわけだ。
こんな文章から、この小説は始まる。
“これは「知性(インテリジェンス)」についての物語だ。なぜこの宇宙に知的な存在が誕生したのか、なぜそのような存在はこの世界を、この宇宙を、そして自分自身のことをもっと知りたいと願うのか、なぜ人々は知能に魅了され、知能に幻惑され、知能の謎に搦め取られて、ときに殺人まで起こしてしまうのか、そういったすべての謎についての物語だ”
『デカルトの密室』というタイトルを見た時、『我思う故に我あり』という概念の密室性に挑んだんだろうと思った。ずっとこのテーマで物語を書きたいと思っていたのだけれど、実際は難しいというレベルではない。それを見事にこれだけ読みやすい物語に落としこんでいるのは見事。
しかし、内容はデカルト劇場の密室だけではない。人間は三つの密室に閉じ込められている。一つは身体。物理的な制約の密室。次に自我。思考する〈私〉を知覚することはできない。そして最後に宇宙。宇宙を認識することは何故可能なのか、認識するから宇宙があるのだとすればそれは観測者を含めて宇宙なのではないか。この三つの密室を巡って起こる事件と思考。そのための舞台として提示されたテーマはロボットと人間。ロボットと人間の違いは何か、考えるロボットが在ったとしてそれはいかにして判別できるのか、人間の自由意志とは何か、ロボットの自由意志とは何か。
まさに知性へ挑んだ物語だった。答えのない哲学に限界まで挑んだ物語として読み応えのある小説だと思う。
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ロボットと人間の境目を模索するSF小説。
東北大学の博士号を持つ元講師が書いているだけあって、内容が濃い。
自ら考える知能を持ったロボットは人間とどう違うのか、人間らしさやロボットらしさってなんだろうか等々、近年現実味を帯びてきた問題について葛藤する研究者が描かれている。
ips細胞の研究も進んできて、人間が造れるようになったら世界は随分変わってしまうだろうな。。という漠然とした恐怖を感じた。
Posted by ブクログ
どっかで森博嗣の「すべてがFになる」との相関を切々と解いてくれてる人はいるんだろうか?どっかで清涼院流水の「コズミック」との相関を切々と解いてくれてる人はいるんだろうか?SFとかミステリとか哲学とかそんな矮小な「カテゴリ」ではなく、「デカルトの密室」は明らかな「物語」で、<アタシ>にとって大切な物語となった。
哲学の密室
デカルトが提唱した「心身二元論」の考え方が作品の根底にある。
そこから人の心である「わたし」を身体から解放しようとする話が主題かな。
哲学的な考え方が、興味深いものばかりで面白い。
デカルトも哲学も何となくしか知らないけど楽しめた。
序盤は比較的わかりやすい気はしたけど、終盤は難しすぎて何回か読み直して想像力を働かせた。
近未来SFで、デカルトをモチーフにした哲学的な内容から、押井守監督の「イノセンス」が頭にちらついた。
イノセンス好きなら読んでみるのもあり。
逆も然り。
Posted by ブクログ
小難しい話が続き、分からんなぁと思いながら遠ざかると、ふいになんとなく共感できる部分が出てくるのでまた引き寄せられるの繰返し。
ロボットの知能(あるいは心)を考えるとき、機械からは遠いように思われる哲学の問題が出てくるのは面白い。しかし、人間は自分の枠を広げることは出来ても越えていくことはできないが、ロボットには枠を越える可能性があるとのだろうか。しかし、ネットもロボットも所詮人間が作ったものである以上その枠を越えることは出来ず、個を越えるだけだから、それほど魅力も感じないが。
ところどころ前に解決した事件、という話が出てくるが前作があったのか。そういう「設定」なのかと思っていた。
Posted by ブクログ
ヒューマノイドが商品化される近未来を舞台に、人間の意識・知能とは何かを探求する研究者を巡るサスペンス。脳科学、哲学、心理学、コンピュータ・情報理論などが展開されるアカデミックな内容の中で、自意識を持ったロボントのケンイチがボクとして一人称で語るところは中々深い。考えさせられました。
Posted by ブクログ
久しぶりに、読んでいて頭がしびれるくらい、頭フル回転させられた作品。脳みそで汗をかいた、という感じ。
チューリングテストを裏っ返して、人間がより機械らしく振舞うという発想とか、すごく面白かった。
フランシーヌ オハラは、森博嗣氏の作中に登場する真賀田四季博士のイメージと重なります。
Posted by ブクログ
作家ではないので推測でしかない。
でも、この作家さんはもしかしたら、
まるで恩返しをした鶴のように、身を削って作品を仕上げているのではないか、
そしてその作品はあたかも、彼の作品世界への試金石なのではないかと思う。
正直、読みやすくはない。
科学の知識がてんこもり、さらにその文章が精緻で、
いわゆる抜けの部分が少ない。
しかも意図的に(のはずだ、多分)一人称の主語が誰を指すのかが曖昧で、
時にその時制までもが緩やか、章と章に起承転結が分かれて配置されている。
デカルトの密室というタイトルの趣旨は理解しつつも思わず、
デカルトの迷宮‥ と、間違って記憶してしまいそうだ。
いやいや、お菓子で言ったら月餅?クリスマスのフルーツケーキのように、
みっちりと重力を感じる、重たい作品。
文章に重力があるとしたら、きっとそれは作家さんの思いに違いない。
真っ向勝負で、受け止められるか?
Posted by ブクログ
とっつきにくい本かもしれない、と敬遠していたが、実際に手にとって読み始めるとその世界の広がり、提示しているテーマに魅せられてどんどん読み進めることができた。もっとも主題はよくわからないところも多い。グレッグイーガンに似ているのかも。またこのテーマは森博嗣のと同じという気もする。
Posted by ブクログ
ヒト型ロボットが実用化された近未来。
ロボット学者の尾形祐輔と進化心理学者の妻・玲奈は、子供型ロボットのケンイチと暮らしていた。
祐輔は、副業で小説を書いていて足が不自由のためにアイボット(電動式の車椅子)に乗っていた。
三人は、人工知能のコンテストに出席するためにメルボルンに・・。
祐輔は、玲奈とケンイチより三日早く編集者と一緒に会場に来た。
コンテストの参加者の名前を見ると中学の時に出会った、人形のように表情が無い天才の美少女の名前があった。ここ十年事故にあって以来名前すら出てこなかったのだが・・・。
会場に入るとそこでその彼女と出会う。
その出会いは、事件の始まりだった・・・。
その日の会場を出ると祐輔は、行方不明になる。
逆さ眼鏡ををかけられ監禁されてしまう。
メルボルンに着いた玲奈とケンイチは、祐輔を探す。
そして、ケンイチは事件に巻き込まれる。
AI人工知能・・。ロボットの知能と人間の知能。
人間と機械の境界線は何か?
機械は、心を持てるのか?
人間の知能と心とは何か?
人間らしさロボットらしさ、知識・知能・心を題材にした科学ミステリーです。
人工知能の祖アラン・チューニング デカルト 「2001年宇宙の旅」「指輪物語」本書で、ポイントになる人や本・映画です。
今回は、難しい本になってます。
ロボットを通じて心とは、を問いかけてきます。
それでいて、ちゃんとミステリーになってるのですよ
ヤマヤマさん砂の果実さんにお勧めですね
瀬名さんの科学者としての知識満載の本でもあります。
ちなみに「パラサイト・イブ」「ハル」「八月の博物館」より難解です。
瀬名さんを読みたいと思った人は、まず「虹の天象儀」を読みましょう
瀬名ワールドはどこまで奥が深いのか・・・。
今は、東北大学機械系特任教授だって・・・
Posted by ブクログ
いやしかしこんなにも難解なことを常日頃から考えている人たちがいるというのが驚きではある。ロボットを作るにももうちっとシンプルに、例えば部屋の掃除とか、ゴミを拾うとか、食器を洗うとか、そういうのじゃダメか。こんな小難しいこと宣うロボットが家にいたら泣くってば。
ていうかけんいちがフランス人を殺した理由もよく分からんし、なんなら全体的に何言ってるか分からんくらいだけど、ロボット作りに心理学者とか巻き込んだらダメってことは分かったよ。
Posted by ブクログ
「ぼくらの意識は頭蓋骨の中に閉じ込められている。でもインターネットはそうじゃない・・・」ネットに人間の意識をつなげられたら・・・どんな世界が出現するのだろう、個人の肉体に付随した自意識を開放するとどうなるのか・・・
その心(自意識)が、宇宙を現実化しているのならば、人間は、この宇宙から逃れることはできないのだ・・・など、小説のストーリーには魅力はないが、上記のような問題提議はおもしろい、この様なお話しが好きな方におすすめ(笑
Posted by ブクログ
さすが科学者作家瀬名秀明という感じです。凄い作品だというのは判るんですが、私にはちょっと難しすぎました。ある程度理系の素養が無いと厳しいかなあ。
Posted by ブクログ
SFミステリー。
久々に、分量も内容も濃い小説でした。
人間と機械の境界は何か。そんなのは考えてもわからなかった。
森博嗣『すべてがFになる』を思い出す内容も少々。
Posted by ブクログ
ロボットを作るときに製作者は「人間らしさ」を求めるが、では「ロボットらしさ」とはなんだろうか?
なんというか観念的であるという前評判を聞いていたけれど、個人的には面白かった。好き。
理系であるんだけれども、森博嗣ほど無機質な感じはせず、有機的というか感情が熱い。
あとがきで石黒浩教授の名前があって噴いた。彼はロボットといえばどこでも出てくるんだろうか……。
Posted by ブクログ
こんなに凝った構成、人称トリックを仕掛けるには作者の筆力が足りていないように思えるが。随所に挟むのは科学薀蓄ではなくミステリとして面白くなる描写を。何回も読むよりは素直にマンガで読んだ方が多分面白い。5.0
Posted by ブクログ
読んだー!!!
立ち上がりの部分がすごく面白くて、引き込まれるように読み始め、
途中あまりに難解な哲学とか情報とかの理論に次第に食傷し、
でも、解らないながらにそれを何とか理解しようと考えて、
示唆を与えられたり、構成や文章の緻密さに感動したり、
読み応えのある作品でした。
ロボットと人間との差異を考えていく中で、
自分・人間とは何者なのかとか、
自分たちが見ている世界ってほんとは何なのかとか、
改めてちゃんと考えてみなさい、
という示唆を感じました。
とくに私がいいな、と思ったのは、
ロボットの不気味さとかがたくさん書かれるけど、
最終的にはロボットを好意的に受け止めて、
肯定して、ロボットはロボットとして、
一緒に生きていこう、的な流れになったところ。
ジャズのシーンあたりからのくだりがとても素敵でした。
ケンイチくんがなんかとても愛しくなってくる。
作者のロボットへの愛情みたいなものを感じられて、
それで読後感が非常によかったです。
いろいろちゃんと勉強して、
もういちどじっくり読み返したいなと思いました。
Posted by ブクログ
裏打ちの厚さって重要なんだな。
それにしても哲学者とか科学者は地や空を考えすぎて失うのかなぁ。着脱自由な四肢切断とかあり?
ぼく幻惑はちょっと読みのリズムがもたついたけど、まぁ意図してやってるんだからしょうがないか。
Posted by ブクログ
ロボットと人間、倫理と哲学、自我の話。
自分の知識や読解力の弱さを棚にあげるのも心苦しいところではありますが、対象となっている、科学技術、倫理、精神学上の知見が乱立されている印象が強く、全体的に何が示されてたのかよく理解できませんでした。
チューリングテストのコンテスト、中国語の部屋などは物語の舞台としては大変魅力的であり、文章も巧みであるため威風独特な雰囲気は十分に感じられるのですが、その舞台の特殊性がどのように生かされたのか、とどのつまり何のためのエピソードだったのかが最後まで理解できず、もやもやとした消化不良に苦しみました。
作中では舞台の転換や主格(ぼく)の転換が激しく、確かにそれは筆者の恣意的なものではあるのでしょうが、読者にとって有意義であるか否かは別の話であり、残念ながら全体的に理解に至らなかった自分としては、無駄に読者を混乱させるだけの要素としか感じられませんでした。
背景にある科学技術の難解さ、人間の全てを知覚するという壮大なテーマに内在する抽象性 神秘性と相まって、いつまでたっても問題の複雑度があがっていき最後まで収束していないという解釈にとどまりました。
訳知の優秀なキャラクターたちが、お互いに観念をこねくりまわして、思考のループの再確認して満足している、そんな印象です。
結局は、読み手の能力の問題なのでしょうか・・・?
神経伝達の束を意識と同義であると捕らえること、自己を書き換えながら増殖と連携を繰り返すソフトウエアに自我の発現を見るという考え方、量的な制約から解放されていることを上位層への遷移と考えることなど(そもそもこれらは誤解なのでしょうか・・)全く理解というか納得できませんでした。
メタな視点から観測できない差を、差がないと捕らえる考え方など、これらは哲学のものなのでしょうか?
下積みがないと太刀打ちできないということなのかもしれません。
他の方のレビューで、再読によって大きく印象や解釈が変わったと書かれている方が多かったように見受けられます。
今は食傷気味ではありますが、哲学が少しでも身に宿る機会があれば改めてチャレンジしてみたいと思います。
「不気味の谷」というものの存在は非常に興味深く、感覚的にも非常に納得できます。
本編とは全く関係ありませんが、時々メディアで見かける女性型ロボット・・・、たぶん高度な技術の結晶なのでしょうが、外見を人間へと近づけていく方向への技術革新とその成果には違和感を通り越して嫌悪感を覚えてしまいます。
歳なのかもしれないですね・・・。
Posted by ブクログ
デカルトを読んだことがあったらもっと楽しめたのかもしれないが、
哲学者のやっている、言葉遊びを展開したような小説で
どーにも。堅苦しかった。本当に狭い密室のような小説。