【感想・ネタバレ】アブラクサスの祭のレビュー

あらすじ

東北の小さな町の寺に勤める僧・浄念は、躁鬱に苦しみつつ薬と酒の力を借りて法要をこなす毎日。不惑間近となったいま、学生時代にのめり込んだバンドへの情熱が心を占める。やっと実現にこぎつけたライブのステージで、強烈な恍惚感とともに降りてきた啓示の正体は……。精神を病みロックに没入する僧が、祝祭の只中で感じた歓喜と安らぎ、心のひそやかな成長を描く芥川賞受賞第一作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

躁・欝・分裂の症状を抱え、そのなかで揺れ動く禅僧・浄念を主人公に、かれが出家以前から追いかけていた音楽とふたたび合一することで自我の安らぎを得るまでを淡々と、しかし静謐な筆致で描く。心理描写(あるいはこの小説の場合、精神状態の描写)が圧倒的に情景描写を上回る筆致でありながら、もたつかず重苦しくもならず進める技は見事というほかない。途中までは主人公やその妻などの視点を自由に越える「神の視点」で書かれていながら、クライマックスでさらりと一人称「ぼく」に飛び移ってしまえるところにもいい意味での軽さを感じた。

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2011年04月18日

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