あらすじ
加藤ローサ、徳井義実(チュートリアル)主演の映画原作。もう、これ以上あの日々を続けることには耐えられない。上司のお小言。同僚の嫌味。毎日の生活。これを飲めば、あの日々から解放されるのだ。それを思えば、死ぬことなんて怖くない。そう言い聞かせ、睡眠薬を飲んだ私は、布団に入り固く眼を閉じた――。が、目覚めは爽快。やばい。すごくやばい。しくじってしまった。自殺は失敗だ!! どうすればいいんだろう……!? 無器用にしか生きられないあなたに贈る清爽な旅立ちの物語。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
これからどこへ向かうかは分からないけど、とにかくここにずっと留まるのは違うと気付く。だからまた歩き出す。
この前向きさのさじ加減にリアリティがあると思う。
チェックアウトの日、寂しさからかいつもより多くタバコを吸ってしまう田村さん。
八本目、としっかり数えてる主人公。
このあたりの、田村さんへの意識というか距離感というか、それが絶妙。
全く意識しないのは不自然だし、かといってコロッと恋に落ちるような展開も違う。
ちょうどいい。
共感がたくさん
自殺しようと思いつめている主人公、でも文章は軽やかさがあって重苦しい気持ちにはならずスラスラと読めました。会社に行きたくない主人公のこれまでの日常生活、感情、疲れ果ててしまった背景が描かれていましたが、言葉は簡潔であっさりとしているのに、疲れ果ててしまうまでの過程にとても共感してしまいました。わかるわかる、そうそうって思いながら泣きそうになりました。
死にたくなったり、自然の中でのんびりすることで人の心が回復していくというのは自分の経験とも重なる部分があり、さあこれから自分の足で歩いていかなくちゃ、と踏み出そうとしている主人公に自分を重ねて読み終えました。
根拠はないけれど何となく、何かがうまくいきそうな気がします。今このタイミングでこの本を読んだのも何かのご縁だなと思いました。
Posted by ブクログ
読みやすかった。
ここでずっと過ごすのかと思って読み進めていたが、ここは私の居場所ではないと判断し戻っていったのが予想外だった。
別の場所に行くことだけが全てではないし、人には人の居場所があると感じた結末だった。
Posted by ブクログ
自死という暗いテーマなはずなのに、クスッと笑えるところも多く読みやすい作品。
自分の中では重大事件で逃げられないと追い詰められることも、実は大自然の中では大したことではないのかもしれない。幾三のくだり、めっちゃ面白かった。ラブアンドピース以外のことは、幾三に任せよう。
Posted by ブクログ
2026/07/19
瀬尾まいこ氏の本を読むのは初めてだったが、勝手に作品に対してやわらかくて、生きていく希望があるような作品の印象を持っていた。
今回、人から勧められてこの本を読んだが、物語のスタートがセンセーショナルなわりに、進行は穏やか、円滑に読み進められる起伏がある揺蕩う波のような内容だった。
穏やかさというのは退屈さを生むが、「一度死んでいるはずだった」ことで、もう一度、ゆっくりと自分と向き合うための充電期間には、それがなかった。
五感で「味わう」ということが生きることに向いている人が、そこを働かせることなく一度死んでしまった話なのだろう、と思う。再生の話であり、回復の話であり、営みの話でもある。
主人公のアパートでの生活が、きっと向いている人もいる。しかし、無機質な「生きていない」暮らしでは、主人公は生きる希望すら無くしてしまうほど消耗していた。好きなことも、味わうことも、自分に向いている生活が行えない。それを自覚できない。
自分に合った息継ぎができないと、苦しくなってしまうのは当然のことで、彼女は民宿での21日間によって、自分なりの息継ぎの仕方を思い出す。文字通り「生活」できていたからなのだろう。
それでも、彼女にとっての天国というのを、一度死んだ身だからこそ、彼女は享受しきれなかった。
p5-l2
一度切ろうと思ったものを引き延ばすのには力がいる。
はじめの主人公の言葉は、本当だった。一度切ろうと思ったものを引き延ばす力を、主人公は田村とあの土地によって蓄えることができた。別れというのは切なかったが、続けたいと思ったものを断ち切るのにも力がいる。
主人公はその力も、この21日間で手に入れたのだろう。だからこそ、もう一度海に出ることができたのだと、私は感じた。