あらすじ
同名アニメ映画の原作。精神医学研究所に勤める千葉敦子はノーベル賞級の研究者・サイコセラピスト。だが、彼女にはもうひとつの秘密の顔があった。他人の夢とシンクロして無意識界に侵入する夢探偵パプリカ。人格の破壊も可能なほど強力な最新型精神治療テクノロジー「DCミニ」をめぐる争奪戦が刻一刻とテンションを増し、現実と夢が極限まで交錯したその瞬間、物語世界は驚愕の未体験ゾーンに突入する!
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Posted by ブクログ
夢の、支離滅裂なのになぜか自分は納得しているような不思議な感じがそのまま表現されていた。
特に、後半は夢の中に入ったり、現実世界に戻ったり、夢が多重構造をしていたりで、ぐるぐるとスピード感を持って世界が入れ替わるのが読んでいてとても楽しかった。
敦子が性に奔放で、イケメンと言うよりは冴えない地味な男性やおじさんに好意を抱きがちなのは違和感が少しあると思って読み進めていた。
しかし、敦子自体が誰かの夢の登場人物であると考えると納得したし、なんならおじさんの理想のセラピストはきっと敦子みたいなキャラクターに他ないとさえ思う。
Posted by ブクログ
映画を一度見て、訳が分からず途中で見るのをやめてしまったのを悔いるくらい面白かった。こういう話だったのか。
賢く美しくチャーミング、仕事熱心で欲望に忠実な敦子が魅力的に見えて仕方がなかった。好意を持った患者にだけちょっと行き過ぎた治療を施す、そのモラルの欠如も夢の中ならではで、自宅で秘密を共有した特別感もまたそこに加われば、親密さが増していくのも頷ける。ノーベル賞だって何だって手に入れる、この静かな自信と欲深さが何故か嫌みではなく、好ましいものとして映った。男たちが争わず敦子の意思を尊重し、本気で愛を寄せているからかもしれない。男女の愛というより、女神を崇拝するのに似ている。敦子であってもパプリカであってもいつも知性が光っていて、並の人間では無いと納得させる力があった。
邪悪とも言える権力争いのなか、敦子と時田の関係がなんだか微笑ましくて癒しポイントだった。巨体だし子どもっぽいのに、甘いものが食べられない時田が面白かった。
同じ研究所で働く仲間を廃人にするという血も涙もない小山内と乾のやり方にはゾッとしたが、現実が現実のままやり合っているうちはまだよかった。夢と現実に境がなくなってからは、崩れていく世界についていくのに必死で、何を信じればいいのか分からなくなってしまった。夢の混沌が言語化されるとこうなるのかなと思った。私のような頭の硬い人間には一定の秩序がないと簡単に狂ってしまいそうだ。
ラストの陣内と玖珂の会話にギョッとした。
Posted by ブクログ
映画はだいぶ前に観たことあったものの、読んでいるとやっぱりまた観たくなる。
映画では特に千葉敦子が魅力的で不思議な女であるという印象だったが、実際は結構戸惑っていたり、葛藤しており、容姿の魅力をも武器にしているだけで人間らしい人間だったのだなと印象が変わった。
敦子が強姦されそうになるも、やむ無しと素直に受け入れることにしたにも関わらず、敦子のことを愛しすぎて不能に陥り、この役立たず!せっかくその気になってやったのに、と怒っているのが面白かった。
DCミニの欠陥や副産物がたくさん絡んできたのが面白かった。DCミニは使いすぎると睡眠が深くなりすぎてしまい、現実に戻ってくる(目覚める)のが困難になる。また、DCミニを使って他者の夢にダイブ(干渉)することができる。他、副産物としてSFチックだが、夢の中で手にしたものが現実の手元に反映される。
解説の最後、「読者に覚醒を促しているようにみえるからかもしれない。」というのが好き。
本編は意味深なやりとりで終わるのが、この解説でストンと落とされたようで良い読後感だった。
Posted by ブクログ
初めての筒井康隆。『朝のガスパール』は連載中に読んだけど私には難しすぎて理解できない人だと思い込んでいたのだが,この本は面白かった。登場人物一覧が欲しいと思ったけど,怒られるのだろう。何となくもりみーと同じ匂いがしたのだが(特に終盤),これも怒られるかな。