あらすじ
正直で有能、分別と信仰心を持つ奴隷頭のトムは、ケンタッキーのシェルビー農園で何不自由なく暮らしていたが、主人の借金返済のために、奴隷商人に売却されることに。トムが家族との別離を甘受する一方、幼子を売られることになった女奴隷イライザは、自由の地カナダへの逃亡を図る。
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Posted by ブクログ
とても面白かった。敬虔なトムが神の教えに従い、黒人奴隷の渇ききった心に愛を与える。トムの優しさに触れた黒人奴隷はトムの信じるクリスチャンの心を知る。今日では「アンクル・トム」という言葉は「白人に屈従する黒人」という意味を持つらしくタブーとされている。しかし、屈従などこの本のトムはしていなかった。自分の口できちんと白人に抵抗し、自分の強い心を示していた。著者は黒人奴隷の人間らしい心を認め、白人の無視する心をたしなめた。文中にも天国から除外される人は積極的に善行を行わないことを糾弾されるとある。屈従しているのは奴隷問題に対し見て見ぬ振りをしていた当時の白人の方であって、アンクル・トムの小屋のトムは善き人として語るに相応しい人物だと思う。
Posted by ブクログ
面白かったし他の人にも勧めたい。
世界史の資料集にタイトルが出てきたのを何となく覚えていて、ちょっと前にハックルベリー・フィンの冒険を読んだりBLM運動もあったりしたのもあって黒人奴隷・差別の歴史に興味を抱いて読んでみた。
程よい人数の登場人物と場面切替もあり読みやすい。トムが真面目実直な人物だからこそどうか少しでも良い生活を送って欲しいと思う(下巻はまだ読んでないので)。奴隷を「使う」側の白人の側にも良心的な登場人物がいて救われる。また、奴隷制度廃止の北部の心情の中には、(オーガスティンの推測としての)オフィーリア嬢のように近くに置いておきたくないという立ち位置もあるつと
奴隷にされ酷使されるということそれ自体がもちろん許されないことで、今まで自分はその面しか見れていなかった。しかし、愛する家族との別離をいとも簡単に強いられてしまうことや、さらに白人とは脳の作りが違うんだからその別離も大して辛いと思わないだろうと知性も見下されていること、アメリカという国の法律のもとでは奴隷制度が公に肯定され逃亡した奴隷側が悪になってしまうことなども含めた様々な面での苦しみがあると学んだ。
聖書の引用がかなり登場するのも印象的。今は奴隷制度を肯定していても(作中にもあるが宗派にもよっては否定派もあり)綿花の相場が下がればどうなるかわかったものではないという言葉もあり、教会の奴隷制度に対する立ち位置も興味が深まる。
Posted by ブクログ
ものすごく面白かった。まさに現代訳、と言うような雰囲気の作品。すらすら読める。現代訳ってすげー! 他の訳を見たわけではないけれど。
思わず眉を顰めるような表現はあるけれど、それはその当時の価値観に対してで、一番最後にある差別を助長するためではないことは、読んでいてわかります。
逆にそういうところを修正すると、その時代のことが全く分からなくなってしまうので、こうして不快に思われるだろうなと思いながらでも、そのまま訳してほしい。
私のイメージでは犬猫を飼うイメージで、黒人を所有していたのかなとずっと思っていたので、こうした価値観のある人たちがその当時にもいたのかなと思うと嬉しくなるけれど、そういう人たちがいたからこそ、奴隷制度は過去のことになったんだろうなと思った。
Posted by ブクログ
_小さな子供たちだけが、唯一本物の民主主義者だよ。_
なかなか読む機会がなかった名作
職場の読書会のおかげで読むことができました。
アンクル・トムの受難の物語。
ケンタッキー州の裕福な農場、シェルビー家のお屋敷に奴隷として仕えていたアンクル・トム。家族も一緒で、キリスト教徒の奥様から大切にされていた。もし彼らが自由の身ならば、皆、幸せそう。
しかし…
奥様の身の回りの世話をする美貌の女奴隷イライザの美しい子ハリーと共に、トムは、主人の作った負債のために奴隷商人に売り渡されようといている…トムは立派なキリスト教徒の精神を持ち、自分が売られることで、主人の農場も自分の家族もこのままここにいられるのならと、自ら運命に身を委ねる。
イライザは息子のハリーを抱き、逃亡中の夫を追ってカナダへと逃げようと決める。
トムの運命とイライザたち若い家族の二つの運命を描く。
とても辛いけれど、ぐいぐいと読ませるのは、魅力ある登場人物たちのおかげなのですよー
・まずはシェルビー家の息子、ジョージ坊っちゃま。彼は生まれた時からあたたかなトムの小屋で過ごし、トムの妻アント・クロウィの美味しい食事と彼ら自身を愛している。誰からも愛される輝くばかりの坊っちゃま。トムが売られていく時には、僕が大人になったら必ず買い戻しに行くと約束した。
・トムが南部へ行く船で知り合った新しい主は、エヴァという、全ての真の美しさを持った天使のような少女。エヴァもまた敬虔なクリスチャンで、トムや、家にいる黒人たち全てを幸せにしたいと思っている。彼女とトムの絆の美しさといったら…
・エヴァの父親、ルイジアナの農場主オーガスティンも私は好き。本当に愛した人と結婚できなかったせいで、心に傷を抱え、怠惰に生きている。ちょっとギャツビーっぽいデカダンスキャラ。でも奴隷たちにはおおらかで、なによりエヴァの理解者。(但し夫人マリーはひどい女)
・北部から、家を切り盛りしてもらうために呼び寄せたオーガスティンの従姉妹のオフィーリアさんは素敵!やっとまともな人来た!って感じ。潔癖ともいえる完璧主義者で、黒人には慣れていないのだけど、奴隷制度反対派。
・トプシー。彼女は生まれた時からの奴隷で愛を全く知らない。鞭打たれていた不幸な娘をオーガスティンが買い取ってきた。エヴァとオフィーリアさんのおかげで愛を知ってゆく。
・悪の化身ディグリー(レグリー)からトムを守ってくれる女性、キャシーはジプシー女みたいにかっこ良くて、男共をぎゃふんとて言わせてくれる。
(最後の大団円ぶりはどうかと思いますけどw)
若い頃からキリスト教に憧れてきた身なので、トムの生き方には尊敬する気持ちでいっぱいでした。
とはいえ、あまりにも宣教的ではとか、白人から見た都合の良さがないかとか、懐疑的になってしまう所も。当時のアメリカの南北の違い(プランテーションの南部と、工業化の北部)に奴隷制度への考え方の違いが比例していたこともよく分かりました。それにしてもこの本がきっかけで奴隷制度廃止の運動が高まり、南北戦争が勃発したと言われているとは、文学の力ってすごい。後年、リンカーン大統領が作者のストウ夫人と会見した際、「あなたのような小さな方が、この大きな戦争を引き起こしたのですね」と挨拶したという逸話があるとか。
Posted by ブクログ
小学生の頃ポプラ社の全集で読んだ。聖書がやたら出てくる、女性の奴隷が追手に迫られ。流氷の上を飛び移りながら逃げた、主人公のトムが売られた記憶がうっすらあるのみ。教訓的なお話というより小説としてのおもしろさに惹かれた。2023.7.2
Posted by ブクログ
黒人奴隷制度撤廃のきっかけとなった、人類史でのエポックメイキング的な、本書。黒人奴隷が受ける不当な扱いに怒りがこみ上げるが、この本を出版時の読者達はどのような気持ちで読まれただろう。大ベストセラーになったとのことなので恐らくは相当な物議があったことだろうと思いを馳せながら読む。作者はキリスト教の教えと奴隷制度が矛盾していることを強く訴え、当時の人達はその便利さ故、都合のよい解釈で折り合いをつけていたであろう事が本書でも読み取れる。アンクル・トムを始め様々な登場人物のキャラクター作りが上手く、感情移入しやすい。
説教一辺倒ではなく、黒人でもだらしない人が登場したり、トムが周りの人たちを穏やかに変えていく過程が好きです。
題名であるアンクル・トムの小屋から早々に出ていく羽目になったのですが、下巻で何らかの形で小屋が復活するのかが気になります。