あらすじ
今度の柚木麻子は何か違う。
著者の描く3歩先の未来にあるのは、ちょっとの希望とささやかな絆。
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友達もいない、恋人もいない、将来の希望なんてもっとない。
貧困にあえぐ苦学生の真央が出会ったのは、かつて栄華を誇った山戸家の生き残り・四葉。
「ちゃんとした人にはたった一回の失敗も許されないなんて、そんなのおかしい」
彼女に託された一つの宝石箱が、真央の人生を変えていく。
「大丈夫だよ。オール・ノットの真珠にすれば。あんたみたいながさつな子も。これは絶対に切れない、そういうつなぎ方をしているんだよ」
「え、オール・ノットって、全部ダメだって意味じゃなかったっけ?」
「全部ダメって意味もあるけど、全部ダメってわけでもない、っていう意味もあるんだよ。そうだよ。全部ダメってわけじゃないんだよ。なにごとも」
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
奨学金の苦学生の話かと思ったらお金持ちのお友達の盛衰の話だった。
日本が貧しくなることは確定だなぁと思うような近未来の描写もあった。
面白かった
Posted by ブクログ
横浜が舞台のお話。奨学金の返済を抱えて四苦八苦するヒロインと、昔はお嬢様だったのに、没落してマネキンの販売員をしている老女の交流。やる気なさげなのに、抜群の売れ行きを誇る彼女の秘密とは。以下、ネタバレ込みで。
うーーん、モデルはいるのかなぁって。この老女(名前忘れた)の存在感、スゴイです。「さらさら流る」のヒロインにも共通する、本当の「育ちの良さ」。逆境とか困難とか他人の悪意とか、受け止めるけど染まらないんですな。ずる賢い輩に利用されたりもするし、そのせいで損害被ったりもするけれど、だからって他人をうらやんだり、恨んだりという心持に至らない。泰然自若。この老女の来し方が、次第に明らかになっていく。モラハラとか、同性愛とか、当時としては一般的でなかった問題に、臆せず対処していたこと。そのせいで、財産の大半を失ってしまい、贅を尽くした屋敷も手放さざるを得なくなったこと。それでも、なんというか泰然自若。正しいことをした結果がこうなら、黙って受け入れます、みたいな。
オール・ノットのノットは結び目のこと。真珠のネックレスの糸が切れても、真珠がバラバラになってしまわないよう、粒と粒の間全てに結び目があること。
ダメだ。時間がちょっと経っただけで、ろくに要約できなくなってる。
でも、読後感最高です。オススメです。
Posted by ブクログ
柚木麻子さん、BUTTERを読んで以降、気になる作家さんとなったが、それ以上にYouTubeに登場する数々のトークが面白く、ますます気になる作家さんに。
このお話は女性同士の連帯、今はやりのシスターフッドのちょっと負の部分を描いたもので、展開が全く予想できない方向に進んでいくので、最後の最後までとても面白かった。
Posted by ブクログ
本の帯によれば、試食販売で出会ったなんでも売れる嘘つきのおばさんが出てくる話とあったので、もっとコミカルな話を想像していたのに、意外と深刻な現代の問題を内包していた。
冒頭の軽いタッチの書き味から徐々に社会問題に移行していくので、重苦しく無く深い話に突入していくので、本の世界に引き込まれて1日であっという間に読んでしまった。
宝石の通販番組の伏線が回収されて、そうなるのかーー!って面白く読み終われたのも楽しかった。
Posted by ブクログ
読み始めてしばらく苦学生の主人公と同僚(?)の四葉さんの穏やかなページが続くので、その雰囲気はどこまで続くのだろうと思っていたら、四葉さんの過去に進むにつれ、引き込まれて一気に読んでしまった。
「もう引き返すことができない」って思った。
四葉さんって不思議な人。
私も会ってみたい。
宝石のように人が惹かれてしまう人。
Posted by ブクログ
戦後から令和までの貧困が書かれた本…
と、読み取ってしまったのはわたしが貧困やからか(笑)
でもやっぱり高度成長期はいいよねと思う。あの、日本中がハイテンションな感じが。
章立てごとに突然主観が変わるのに
「えっ? 誰?」
って一瞬なりつつ、でもまあ結局はどこかで山戸家に繋がってくるんやろうと信じつつ読み進めるという珍しいパターンやった。
わかりにくいのではなく、わたしの読解力がない。笑
一章が面白かったので、二章のミャーコさんの話がちょっと集中しにくかった。
山戸家に一番突っ込んだ第三者視点やったはずなんやけど、なんちゅうかこう、どうしようもないどろどろした雰囲気というか…?
女同士の、悪意ギリギリの距離感って馴染めなかったらちょっと引くよね。
現実でも、フィクションでも。
舞さんのくだりに至っては
「誰?」
ってなったし(バックグラウンドはわかったけど、今までこんな伏線ありましたっけ? 的な)、面白かったけど、とにかくつかみどころがなかった。
結局は山戸四葉を中心とした昭和から令和までの時代を書いた話かな、と、思うと、同じ時代を生きてるので、ぐっとくるものはある。
でも、お若い人には面白いかどうかはわからない(笑)。
「集中するのが怖かった」
と、いうミャーコさんの最後の言は、感覚でわかった気がした。
集中するのが怖いというより、自分の力をそこまで賭してもし失敗したらどうしよう、と、いう恐怖なんかな、と。
一生懸命やればやるほど、やったのに失敗したときのダメージはでかいんじゃないか、
と、思ってしまったら、そもそも「一生懸命やる」「全力でうちこむ」と、いうことができなくなる
と、いうことなのかなと。
なんとなく、わからなくもない。
でも、たぶん、(自分が納得できるほど)「一生懸命やった」結果、失敗しても、案外ダメージってないんよね。
なんかもう
「あっ、そうなん」
ってなる。
やるだけやってあかんかったらもうこれ以上自分にできることはないから、これは届かないものやってんな、と、すこーんと腑に落ちるというか、世界が変わる気がする。
わたしはこれを、10代のころにスポーツを通して味わったので、わりと失敗に対する恐怖はない
…と、思ってたけど、出産してからがらりと変わってしまったのは前述のとおり。
わたしがなんぼ「一生懸命」やったとしても、子どもらの人生が失敗するか成功するかは、わたしではどうしようもないんやもの。
でも、できることはやらないとあかん。(親の責任として)
その線引きがどこなのか、どこまでわたしはやればいいのか、その怖さに立ちすくんだ。
30代がずっとそう。まあ、今もそう。
ずっとひとりで子育てしてるからね。
この本はそういう本ではないし、とにかく、景気のいい昭和時代と、中途半端な平成をなんとなく思い出せるのはよかった。
令和の貧困具合は、せつない…笑。
真央ちゃんが最後にいうてた、
「下の世代が自分よりさらにひどい苦境に立たされているのを見て抱く感情は憐みではない」
と、いうのは、わかるような気がする…。
すべてではないけど、権力を持つ人がどうしてそういう感覚をおぼえないのかが不思議で仕方ないし、それこそ理不尽に歯噛みしたくなる。
わたしはこの本を淡々と
「へー」
って読んだけれど、それはあまりにも日常の話をつづったように見えたからかもしれない。
これが
「舞台こそ現代やけど全然違う世界線の話」
と、思えるのなら、それはそれで、いいなと思う。
というか、それが、いいなと思う。
(わたしが20代のころに高村薫氏の本を読んだときにそう(=後者)感じたけれど、たぶんあのとき40代やった人は、こんな感じ(=今のわたしのよう)になっていたのかなと思った)
過去のことは歴史でいいのよ。
でも、いいことは繋げていってほしいし、よくないことは改善していく未来であってほしい。
読後爽やかで、とても良い体験でした。
貧しい学生の真央が出会ったのは不思議な女性山戸四葉。四葉との出会いと彼女からもらった宝石箱が真央の人生に影響を与えます。
四葉の家庭や過去を知るにつれて搾取されている可哀想な女だと思うこともありましたが、賢く強かでとても素敵な女性でした。弱者としての女性が描かれていますが、同時に強く生きる女性の姿でもありました。
Posted by ブクログ
なんとなく表紙に惹かれて読んだけど、内容もグッと惹きつけるものがあり、一気に読み終えてしまった。
人の生き方に考えさせられる内容でもあり、最後は強さなのかな、とも思った。
Posted by ブクログ
苦学生の真央は自力で大学に通うためバイトに明け暮れている そこで出会った四葉に宝石箱をもらうが 学費返済には足りず 大学も辞めてしまう
四葉はかつて横浜でお城のような家に住む女の子だった 生きるために働くのだけれどお金の為だけでは何処かで歪みがきてしまう これから人間はどうやって生きていくのか不安になるが こんな生き方もあるよ うまくいくことばかりじゃないけど 何とかやれるものだよと思えた
Posted by ブクログ
あまり読んでるわけではないけど、柚木麻子作品の中で今のところ一番好き。
思いがけず一気読み。
とにかく四葉さんが好き。
ミャーコのことも不思議と嫌いになれない。
と言うか、登場人物の誰にも感情移入できないのに、なぜか好ましく感じてしまう。
後半明かされる山戸家に起こった全ての顛末に驚愕。
でもとても四葉さんらしい。
結末も好き。
ハッピーエンドとまではいかなくても、ふわっと幸せな気持ちにさせてくれるラストが好き。
Posted by ブクログ
差し伸べられた手が実際の助けにならなかったとしても、手を差し伸べられた事実が心の救いになる。
気高い心を見失わない没落したお嬢様と貧しい少女の交流を描いた、柚木麻子流『小公女』。
主人公は貧しい少女であるところの、苦学生 真央。彼女の視点で小公女セーラであるところのお嬢様 四葉さんを描いている。ちなみに本作のセーラは少女ではなく歳を重ねた女性、資産を築いたのはお父様ではなくおばあちゃま、そしてラストがなんとも柚木麻子らしい。
オールノットが真珠のネックレスを指す言葉だと本作を読んで初めて知った。四葉さんのように、そして真央のように、ひとつひとつ堅実に積み重ねていくことで、けっしてほどけないオールノットの真珠のネックレスのような人生をつむいでいけるのかもしれない。
また真央の、人助けをよしとしない風潮を疑問視する言葉に勇気をもらった。
Posted by ブクログ
四葉さんが小説に出てくる某王子のように、お供のツバメを巻き込んで与えるだけの人で終わらなくて良かった。
私は東横線、みなとみらいあたりに思い出があるので登場人物があの近辺で日々を過ごしているところも良かった。しかもパシフィコ横浜でイベント仕事をした週末に読んだのでなおさら。柚木さんの土地や建物の描写は食べ物くらいしつこくてそこが好き。
Posted by ブクログ
かつて富裕層として暮らしていた一族の生き残りと、家庭環境も人間関係も恵まれず独りで慎ましく生きる苦学生がアルバイト先で出会い、交流を持ったことでそのずっと先の人生の助けとなる存在となる人の縁(えにし)のお話。
託された物や思いって見た目や想像以上に重かったり、悲しくなるほど軽んじられたりすることがあるけれど、それをどう扱うかは自分自身の人間としての力量次第で毒にも薬にもなります。
託されただけでは何も変わらない。自分がどう生きて成長するかでその価値も変わるのです。
私自身にも覚えのある懐かしい横浜港町の記憶の断片も親しみ深く、長い年月をかけての人とのかかわり合いや仕事、人生観の変化が面白かったです。
私自身にも覚えのある懐かしい横浜港町の記憶の断片も親しみ深く、長い年月をかけての人とのかかわり合いや仕事、人生観の変化が面白かったです。
私自身にも覚えのある懐かしい横浜港町の記憶の断片も親しみ深く、長い年月をかけての人とのかかわり合いや仕事、人生観の変化が面白かったです。
Posted by ブクログ
かなり面白かった。柚木さんの長編小説はやっぱりわくわくする!
読み終えた後は強すぎる宝石の光に射られたように、濃厚な外国風のコース料理を食べ終えた後のようにぐったりしてしまった。
読後の今の私にもビーフティーが必要だ。。
かつて栄華を極めた豪奢なものが古くなって埃を被ってる様子ってすごく興味を惹かれる一方で人間の激しくて汚い感情が眠ってるような気がして底知れない恐怖を感じたりする。
山戸家のお屋敷の描写にそれをありありと感じてどっと疲れたのかも。
四葉も一葉もみつばも、誰かが正義という描き方はしていなくて、ダメなところもいいところもある。他の登場人物たちも魅力と汚いところとどちらも描かれていて単純に誰かに肩入れできない。
元気づけられたり溜飲が下がることってないんだけど物語に引き込まれた。
Posted by ブクログ
この作者の作風からすれば時代背景や経済の動き(戦後やバブル)なんかを丁寧に描くという感じはなかったけど、女性たちのそれぞれの生き方を通じて、本質的に大事なものを訴えようとしているのかな、と感じる。257頁の一文が主題かな。懸命に生きる人に幸あれ。
Posted by ブクログ
やはり柚木さんの小説には、いつも美味しそうな食べ物がたくさん出てきます。
英国式のスコーンや紅茶、ビーフティーを食べてみたくなりました。
物語は、それぞれの章で違う時期、違う人物の視点から、描かれていて、少し混乱する部分もありましたが
なかなか先が読めず、展開に驚く部分もありました。
ラストは、パールの査定がどうなったのかな?!とページをめくってびっくりしました。こんなに唐突に終わってしまうとは。
四葉が、世間への声明を出したあと、SNSなどの情報に踊らされずに
知ったところでどうなるものでもない、時間の無駄。相手にするのもくだらない。という態度だったところは、情報社会にいる自分にはとても輝いて見えました。
主人公の真央が大学生から40歳になるまでの間と、40代の四葉の学生時代までの間のそれぞれの時代において、奨学金問題、同性愛、性犯罪など、さまざまなテーマが、描かれており、時代によって状況や受け止め方も変わってきたんだなと気がつきました。
登場人物の女性たちが皆、愛すべきキャラクターだったなと感じます。
良い男性は、、テーラー郷田のおじいちゃんくらいかな。。
人生一度きりだから、やりたいことをやりたいと思った時にやるべきだし、大きな失敗はしておくものですね。この物語の人物は、みんな自分の欲望に忠実だったのだと思います。
そして、若い人たちには自分たちが感じた不安や不自由を、引き継いでほしくない。しかしそのために自己犠牲の精神で周りを幸せにしようとするのは、幸福の王子のようにツバメもろとも死ぬことになる。
一緒に幸せになる方法を模索するべきだった。
これは、今の日本にも必要な考え方だなとおもいました。
時々、意味がよくわからない文があったりしてちょっと戸惑いましたが、1章のスーパーのアルバイトで出会ったふたりが、こんな壮大な物語を見せてくれるとは思わず、楽しく読むことができました。
Posted by ブクログ
決して順調でない人生。そんな辛苦のなかを生きる女性たちのゆるやかにつながった縁(えにし)を描くヒューマンドラマ。
◇
宮元真央は奨学金とアルバイトの掛け持ちで学費と生活費を賄う苦学生だ。
真央が下宿先から通うのは東京でも名の通った私大だが、実家には仕送りしてくれるようなゆとりはなく、頼りにできる親類縁者もいない。おまけに時間に追われ容姿も平凡な真央には、恋人や友人もいない、まさに孤立無援の状態だ。
経済的にも体力的にもギリギリの毎日は真央から希望を奪っていったが、そのことに気づく余裕さえ真央はなくしていた。
ある夏のバイト先でのこと。スーパーのバックヤードから缶ビール2ダースを抱えて売り場に出てきた真央に、試飲用の熱い紅茶を差し出してきた中年女性がいた。
暑さのあまり冷たい飲み物を欲していた真央だったが、ひと口飲んで驚く。7月末にも関わらずその熱い飲み物の美味しさはまったく格別で、いつの間にか真央は暑さを忘れてしまっていた。
その女性こそ「何でもよく売れる」と評判の試食販売員、山戸四葉だった。( 第1章 )
※全5章。
* * * * *
降りかかる数多の苦労に耐えながら人生を好転させていく女性を描く、ひと昔前によくあったタイプの物語かなと思ったら、趣が少し違っていました。
苦学生の真央。没落長者の四葉。画家くずれの実亜子。モデルくずれの舞。
皆それぞれ人生につまづき辛酸をなめるけれど、しぶとく生き抜き自分なりの道を切り開いていきます。
そのポイントになった人物は四葉でした。
育ちのよさなのか、四葉のスタンスは常に前向きで信じた相手に裏切られようと微動だにしない強さがあります。
彼女が惜しみなく分け与える善意や指し示す進路により、真央が、実亜子が、そして舞が、苦境を脱し、人生が開けていきます。
なのに真央たち3人ともが四葉の善意を享受しながら彼女を切り捨て一顧だにしないということに胸が痛んだし、読み続けるのが辛くてこのまま閉じてしまおうかと思ったりしました。
四葉はある意味いちばんの不運と苦労を背負ったと言えるだけに、長所を活かす生活を手に入れたラストの描写には正直、安堵しました。
感銘を受けた四葉の姿勢があります。
1つめは、「嘘つき」でいること。
ただし、自分のための嘘や人を不幸に陥れるような嘘はつきません。四葉が口にするのは、相手の心を和ませ少しでも前を向けるようにする嘘だけなのです。
2つめは、縁あって出会ったと思う人間に対し、惜しみなく善意を向けていくこと。
精神的に物質的に金銭的に。たとえそれで自身が窮することになっても気にしません。ただ相手の人生が立ち行くことを願い喜ぶのです。
3つめは、窮しても決して挫けたりしないこと。これは、自分にできることとできないことをきちんと弁えているからでしょう。
持てるものをすべて他人に分け与えて貧していく四葉に、童話『幸福の王子』に似ていると舞が言う場面があります。
それに対して四葉が答えます。
「自分は自己犠牲は嫌。絶対に長生きするし、ツバメにも町の人達にも幸せになってもらいたい。」と。そして永く語り継がれなくても構わないから、幸せな結末を迎えるという気概を見せます。
こういう柔軟かつ強靭な精神を持つ女性は本当にステキだと思います。
『オール・ノット』というタイトル通り、主要な女性たちは、たとえネックレスの糸が切れてもバラバラに散ってしまうことはない真珠玉のように、それぞれが独立しているけれど実は知らずのうちに細い糸で繋がっていました。
そしてどんな苦境に陥っても、すべてが悪いというわけでもないということを感じてもいるのです。
柚木麻子さんにしては暗い描写が多い作品でしたが、何かが心に刻まれたような気がする作品だったと思います。
Posted by ブクログ
苦学生の真央と、真央のバイト先のスーパーで試食販売をしている四葉。四葉は真央と同じく余裕のない生活をしているにもかかわらず、真央のために、全財産だという宝箱をくれた。もとは横浜の裕福な家の生まれだった四葉。現在に至るまでの人生には、ミャーコという親友が深くかかわっていて……。
シスターフッド小説だという。けど、格差問題、同性愛、性被害と、社会的なトピックの色濃さのほうが印象に残った。きっとそれは、「すべてを個人の連帯に任せてはいけない」という柚木さんの意思があるからこそなのだろう。よって、小説内でのシスターフッドは、時に切れてもしまう脆いものとしても描かれている。
真央と四葉の物語として読めればもうちょっとシンプルだったのだろうけど、それではおさまらないほど色々なことが盛り込まれていて、ちょっと散漫な印象だった。あと真央にあんまり共感できず。自己解決するのが得意というか、そうせざるを得ない環境で育ってきたからこそでもあると思うが、あんまり読者を寄せ付けず、介入を許さないような雰囲気を感じた。
Posted by ブクログ
実際にありそうな話だなと思った。一代で大富豪になった一家とその周りの人達の歴史をみている様な気持ちになった。一番気になる四葉さんの事については、最後まで触れられず、気になって読んだけど四葉さんは最後の最後に居場所がわかって良かった。
Posted by ブクログ
始まりから終わりまで、生きることってこんなに苦しいっけ、こんなに孤独だっけ、と思う内容だった。でも、奨学金返済にずっと悩まされてきた点には同じ思が少なからずあって、つらい、と、わかる、がずっと心の端にある話だった。最後の章のような日本にならないことを、本当にねがう。
Posted by ブクログ
オールノットとは、真珠ネックレスやブレスレットを作る際に、各真珠と真珠の間に結び目(ノット)を入れ、糸が切れても真珠がバラバラにならないようにする仕立て方のこと。
人生良い面だけでも、悪い面だけでもなく。色々と紆余曲折あれど、なるほど、この本はまさに、人の繋がりがオールノットなんだなと読み終わりがすっきりした。
Posted by ブクログ
柚木麻子さんということで期待しすぎたかもしれない…
主人公の苦学生・真央が、かつての名家出身でなんでも試食させれば売れてしまうおばさん(実は商品をかなり自己流レシピでアレンジしている)四葉と出会い、絶望していた毎日が、四葉さんの持つ日常を丁寧な生活で彩る力で変わっていく、第一章が1番面白かった。
そのままのテンションでお話が続いてほしかったけど、第二章からは毎回四葉さんの家に関わった別の女性の視点で、時代を超えて語られる思い出話(恨み節)で、面白さが見つけられなかった…
Posted by ブクログ
勤労学生の真央さんと、現在はアルバイターだけどかつてのお嬢様の四葉さんの出会い。
そして四葉さんの過去がどんどん明らかになり・・・
最初はランチのアッコちゃんシリーズのような雰囲気の話なのかなーと思いましたが、長編なだけあって色々と過去エピソードが出てきて、読んでるうちに印象が変わります。
山戸家の過去の舞台は横浜で、馴染み深い場所なので情景をイメージしながら楽しく読めましたが、ミャーコさんの人柄がいまいち好きになれず・・・最後の舞さんの話もちょっと無理やり感があったような。
最終的に全部がダメじゃない、何か一つでも救えたなら、動けたならいいじゃないかというオール・ノット精神は伝わりましたが、なんだか微妙な気持ちで読み終えました。
Posted by ブクログ
四葉さんという中年女性を見て、地味でみすぼらしい普通のおばさんと感じるか、それともシンデレラの魔法使いのような不思議な力を持つ上品な淑女と感じるか。
作中で四葉さんの生き様は、さまざまな人がさまざまな言葉で言い表していた。まるで別人のような表現で四葉さんという人が言い表されるのは、彼女が変わったのではなく、周りの人自身の思いが反映されてそう見えるだけなのだろう。四葉さんをみすぼらしいと感じる人は、その人自身、心身に余裕がない状態なのだろうし、逆に不思議な力を持つ淑女と感じる人は、未知への世界の扉を開く機会を渇望している。
四葉さんは不思議な力を持つ訳でもみすぼらしい訳でもなく、何度も失敗してさまざまな物を失いながら、それでも目の前の大事な人に真摯であろうとする芯のある人だ。彼女は始めから最後まで変わることなく、柔らかで揺らぎなかった。
四葉の祖母・みつばは米軍向けのレストランを開いたが、料理は手作りではなく仕入れた物を出すだけという、ある意味デマカセで米軍人を魅了した。みつばの夫との結婚も嘘から始まり、孫たちにも都合の良い作り話を吹聴していた。
嘘だらけだが、そんなこと知ったこっちゃないと言いたげなほど、自信満々で生き抜いたみつばを思うと、あっぱれと言いたくなる。自分に自信が持てない私やみつばの周りの人々からすると、嘘まみれでも力強く堂々としている彼女は滑稽だが、一方でまぶしくも見える。周りの人々が思わず目を向けたくなるような人だったから、みな騙されたのではないだろうか。
主人公の真央は正直、あまり好きではなかった。しかしさまざまなキャラクターの人生が入り乱れる、数十年にも及ぶストーリーにも関わらず、それぞれの人間の深いところまで窺い知ることのできる濃密な作品だった。最後まで読んでよかった。
Posted by ブクログ
友情以上の関係で、不思議な縁で仲良くなる、こういうの、何て言うんだろうな。
どんどん話が広がっていくので、ついて行くのに精一杯だったけど、最後まで読んでよかった。
Posted by ブクログ
「オール・ノット」 一粒真珠を通すたびに、しっかり固く結んで、たとえ切れたとしても真珠がバラバラにならない技法
そんな様に登場人物達が、細い糸で結ばれて行く物語
Posted by ブクログ
オールノット?って何のこと?
all not? 全部、だめ?
とおもっていたら、スペリングはnotではなくknotだった。
でもまだ何のことかわからない。
答えは物語の中に。
ネックレスの繋ぎ方のうち、真珠の繋ぎ方の事だという。
バラバラにならない繋ぎ方なのだそうだ。
この物語は、真珠のネックレスの結び方を比喩にした、人と人を繋げる物語。
読んでいる時は、横浜の物語、苦学生の物語、と思っていたけれど、後から考えてみれば、きっとそういう意味に違いない。
舞台となる学校、都心の蔦の絡まるキャンパス、観光学部というと、池袋にキャンパスのある(出身者曰く、池袋より新座の方が過ごした時間が長いそうだが)有名大学をすぐに思い浮かべた。
横浜の学校も、六本木の学校も、どれも中学受験で私にとっては馴染みのある学校だった。
主人公の真央の物語は少し苦しい。
女だから我慢させられるということはまだたくさん本当にあるようだ。
特に地方では。
私はたまたま学力があって、母親がお金をかけてくれて進学がかなったけれど、それでも奨学金はもらっていた。
たまたまそれなりの就職先を得て、高校大学の奨学金を10年せず返し終わったけれど、ひとごとの物語ではなかった。
四葉の話はどこか浮世離れしていてどこまで本当かわからないけれど、たった一人で何かを変えようとしていた強さは、心に火を灯した。257ページの真央の問いかけは、この国の、いや、人に対する問いかけだ。
たった一人の力で何が変わる、だって?
それが無駄なんてあなたはどこの場所からものを言っているの?
弱さや脆さを指摘して、無駄だと笑うあなたはそもそも何か動いているの?
人を見下して、嘲って、安全地帯から御高説を垂れていただかなくって結構。
「うまくいかなくて当たり前」。
何だかその言葉に力づけられる。
成功しなきゃ無駄、なんてそんなわけないでしょう?
作者の物語はいつもゆっくり、心の火を灯す。
私も強くありたい。
大事な人を守れる程度に。
困っている人に、小さな手伝いを行える小さな強さを。