あらすじ
海岸で発見された男性の死体。彼の死に隠された真相とは? 小さな町に起きた奇妙で複雑な事件に、刑事マシュー・ヴェンが挑む。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
初めての作者。創元のシリーズは全く知らなかったけど、手を出したくなると思うくらい良かった。真摯でまともなミステリというか、事件があって、捜査で関係者から話を聞いて、犯人を見つけていくというシンプルなストーリーを物理的な厚さに乗せる形で、内容の厚みと充実さを感じさせていくのは大変な力量で、主人公の生い立ちや同姓パートナー、との心情のきめ細やかな描きぶりや、重要な役割を担うダウン症のルーシーの雄弁な描き方などの深堀りなど、物語としての強さを感じた。文庫本もほんとに高くなったけど、しっかり読んでいきたい。
Posted by ブクログ
謝辞に、
――イギリスでは通常ダウン症の人々は「学習障害のある人々」と呼ばれる。この用語はいかなる価値判断を含まないので、本書ではこれを用いた。この用語が適切でないとみなされる場合があるのも知っているが、もちろん悪意をもって用いたわけではない。――
とある。
警察の捜索では
「~は保護の必要な成人(ヴァルネラブル・アダルト)で、学習障害があり、精神年齢は子供と同等だ」という情報共有。
本書では、ゲイカップルが登場する。
ゲイと宗教、家族。
Posted by ブクログ
死人に口無し。
死んだ人間を語るのは、いつだって生きている者たちだ。
ある海岸で殺された一人の男は、別の町から流れ着き、その土地に住み着いていた。
酒に溺れ、身を持ち崩し、誰かの助けがなければ生きていけそうにない男だった。
舞台はイギリスの片田舎。
伝統的な宗教観が色濃く残るその街で、人々は彼に救いの手を差し伸べる。
――その男が、殺された。
小さな村の閉じた人間関係の中で、それぞれの思惑が交錯し、人々は口々に男を語る。
そうして断片的な言葉が積み重なり、一人の人間の輪郭が、少しずつ形作られていく。
真実を静かに、粘り強く追う刑事マシューがいい。
寡黙で仕事ができ、職人のような刑事。
表面だけを見れば、完璧なプロフェッショナルに映る。
だが彼は、厳格な宗教を尊ぶ家庭に生まれ、それに反発した結果、家族とは断絶状態にある。
プライベートでは男性と結婚しており、そのこともまた、家族との距離を決定的なものにしている。
事件の全容解明と、マシュー自身の人生が重なり合い、物語は静かに終盤へと向かう。
そしてラスト、殺された男の「生きた意味」がそっと浮かび上がり、強く胸を打たれる。
沁みる一作。
Posted by ブクログ
2作目が出たので読んでみた。
初っ端に殺人事件が起きるのが早くて良い、そこから評判は聞いてたけど、じっくりゆっくり事件解明。出てくる人達の描写が丁寧。
内容にショッキングな所が少ないので全体的に落ち着いてる。
ラスト近くにようやく走り出すけど、ラストはスッキリしない感じ。
マシューの性格が落ち着いてるからだろうけど、ストーリーの熱もマシューみたい。何処かで冷静に出来事を眺めてるような気分だった。
ただルーシーが可愛いくて、解説でも取り上げてたけど両手でグーサインするの最高ですね。他にも好きな台詞があって
「彼は個人的な好き嫌いを道徳規範と混同するタイプの人間だった。」とかよかった。
Posted by ブクログ
アン・クリーヴスの新シリーズ!
「凄く好き」と「星4つ」が同居する不思議。
派手さや尖ったところがないので星4つにせざるを得ない。
けれども脳内にはこの上なくしっくりくる。
シェトランド諸島とは打って変わって今度はイングランド南部のノース・デヴォンのスモールコミュニティが舞台。
マシュー・ヴェンはこの地を担うバーンスタプル署にとってまだ新顔の警部。
かつて家族内の信仰に背を向けたことにより堂々と参列出来ない事情のある父の葬儀。
物悲しさと共に遠目で見やった余韻もままならぬ中、自宅付近の海岸で刺殺体が発見される。
身元を辿っていくと夫のジョナサンが運営するケア・センターとの繋がりが。
被害者の同居人、次いで発生する誘拐事件の被害者、関係者がことごとくケア・センターに通じていく中、ジョナサンの夫であるマシューは利害関係があり過ぎると悩みつつ捜査を指揮していく。。。
そう、マシュー・ヴェンは同性愛者。
これまで同性愛者の登場する物語はそこそこ出会ってきた気がするけど、主人公かつ警部ってのはなかなかない気がする。
なのに自然体。
嫌味やこれみよがしさが全くない。
ジミー・ペレスとはまた違った善良さ、生真面目さも持ち合わせていて好き。
松恋さんの解説によればあと2作程は邦訳待ちになりそうで待ち遠しい!
Wikipediaによれば、御年69歳の著者。
凄いなー。
Posted by ブクログ
海沿いの街でおきた殺人事件、その一つの事件に対し冗長とも思える、周りの人々のひとりひとりの人物紹介に加え、施設の意義、案内を含め生まれつきの病気を持つ女性たちのことも丁寧に。尚且つ受け持つ警察の人たちの過去や現在抱えている悩みや状況まで。
丁寧すぎると言えばそれまでだけどようやく解決させるまでの長かったこと。
この作家さんの前のシリーズと共通するのはその丁寧さで読者の感情移入までさせてくれて、理詰めに緻密に事件を解決する整った感。読む人を選ぶのかもしれない。私は嫌いじゃないけれど。
このシリーズの警部は配偶者に対してかつてない愛情の深さを示してくれてその点でも、作家さんの本を書く丁寧さが伝わってきて、いろんな意味で好感が持てる。
Posted by ブクログ
殺人事件はすぐに起きるのだけど、少し前までホームレスだったアルコール依存症の男が、なぜ殺されなければならなかったのか、が全然わからない。
そこがわからないので、もちろん容疑者なども全然絞れない。
捜査責任者のマシューの生い立ちや、部下たちの生い立ちも交えて描かれるこの作品は、ともすればまだるっこしく感じられるかもしれない。
しかし、親や夫の言葉や肉体への暴力にされされてきた捜査員たちは、被害者がボランティアとして働いていた複合施設で接していた、学習障害のある人々(社会的弱者)が被る偏見や、彼らの持つ優しさ・素直さなどから、徐々に事件の本質に迫っていく。
そしてそれは殺人事件の解決だけではなく、捜査員たちの抱えるトラウマ(とりあえず今回はマシューの家族問題)をも徐々に解いていく。
多分これ、シリーズ物になると思うだよなあ。
マシューの部下のジェンやロスの成長や家族問題、今回出て来たルーシーなど、もっと読みたいと思った。
Posted by ブクログ
・あらすじ
イギリスのランディ島が舞台。
海岸で発見された男性の死体。アル中無職ホームレスだったその男性は死の直前にダウン症女性との謎の交流をしていた。
社会的弱者である(になる)人々の問題なども描かれている社会派ミステリー。
・感想
主人公のマシューが内省的なのに加え事件の概要や書かれる風景描写なども合わさって全体的に物静かな作品だった。
皆それぞれ日々の生活で苦しみ、悩んでて謎解きよりも人物描写がメイン。
マシューとパートナーのジョナサンペア好きだったけど、とにかくルーシーの明るさがこのどこか陰鬱で物静かな作品に華を添えてた。
中盤までジョナサンが黒幕かもしれない…って穿った読み方してたw
タイトルがすごく作品を表していて良いなと思う。
哀惜;人の死などを悲しみ惜しむこと。また過ぎ去ったことに心ひかれて惜しむこと。