あらすじ
町田康さん推し!
言葉に幅があり、しかもそれが的確に使用されている。辛辣な個性とその周囲を無情に描いていてよい。
(文藝賞選評より)
現役慶応大学院生であり、漫画『踊るリスポーン』の著者・三ヶ嶋犬太朗が鮮烈の文芸デビュー!
「捨てられたものを拾うのは泥棒ではない」と嘯き、女装をして女子トイレに侵入し、捨てられた生理用ナプキンを盗む百枝菊人。女装がバレたら心の性別をたてに被害者ぶろうと思っていたところ、同じ学校の明石睦美に目撃される。彼女は百枝が自分と同じく、性別に違和感を抱いていると思い急速に接近してきた。無理解と偏見がマイノリティを利用し、共感と愛情が暴力を肯定する……。表題作「赤泥棒」に加え、文藝賞最終候補に選ばれた「青辛く笑えよ」、「普通」を唾棄する高校生が才能の塊と出会い自我を崩壊させる「寄食のダボハゼ」をおさめた短編集。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
あまりにも倒錯した自意識の暴走に吐き気を催すような中篇小説3本 地の文の書き方が特徴的で多少の読みづらさはあったものの、どれも強烈でとても面白かったです 登場人物たちが基本的にみな突き抜けていていいですね 暴力的な描写もあり人は選びそうですが、奇妙なポップさと爽快さが癖になります
ひ弱な悪党、という自分を映す鏡
赤泥棒がどんな悪人かと思ったら
生殖行為への畏敬を持った人だと感じた。
おそれるくせに、悪に
敢然と立ち向かうところなど持たぬ。
哀れ。そして身につまされる。
このストーリーには
人に言えない孤独な悪が複数、
並置される。
神と肩を並べるほどに
図々しいくせに、
何てひ弱なんだ。
でも、他人ごとではない。
ここには孤独の中で
どのように自分を完成させるかの
失敗例があり、
自分を映す鏡の側面もあり
また、どことなく惹かれる
何かがある。
待てよ。
このようにしかいられない、
そういうことがやはりあるのか?
完成し損ねたのでなく
これ以外ではいられない?
人のことはわからない
でいいのか?
人のあるべき状態があるはずだ
というのは幻想なのか?
Posted by ブクログ
あらすじから、もっと露悪的というか、過激な文体をイメージしてたので、内容に対して客観的な文体に驚いた。こういう内容は、主観ゴリゴリの文章と、第三者の視点のある冷静な文章どちらの方がキツイだろう……。無難に扱えば早々刺さらないけれど、うっかり刺さると抜けないし傷口はズタズタになっていく棘って感じ。
Posted by ブクログ
私は特に「奇食のダボハゼ」が好きです。
祐斗にすごく共感した(出来れば共感したくないけど…)
高い自尊心(プライド)は恥ずかしいなと読んでて思った。周りから見ると、私もこう見られてるのかなと思うと怖いな。
Posted by ブクログ
『地ごく』のインパクトが凄すぎて、最初はイマイチかなと思ったけど『奇食のタボハゼ』は凄い。共感性羞恥でああーってなる私は、少なくとも天才ではないことがわかりました。
Posted by ブクログ
地ごく が良すぎて読んでみた。
・赤泥棒
経血に執着する男子高校生という気色悪い設定が女を殴る男らしさに終着する。犯罪者が歪んだ経緯を丁寧に書いて理解を誘ってるけど実際こういう趣味の奴はただ病気なだけなんだよなーと冷めた。
・青辛く笑えよ
理想を押しつけて星であってほしいと願うのは愛じゃなくてエゴで、近くに愛があるっていうのはよかった。暴力描写と脳天気な場面の緩急がつきすぎてて薦めづらい。
・奇食のダボハゼ
自分を過信して努力を見下して生きていくしかない高校生より、圧倒的才能のほうが怖いなあ……。この展開で読後感(比較的)爽やかなのが不思議。妹がルッキズムから解放されますように。
三作通して、歪みや狂気の理由や経緯が説明されていたな、という印象。汚いものを安全なところから見たくなってしまうからまた読むと思う。
Posted by ブクログ
0204
気持ち悪いんだけどどんどん読んじゃう。読み終わってからなぜか共感しちゃったり感情移入しちゃったりして苦しくなった。すごく好き。素敵な作家さんに出会えて良かった
Posted by ブクログ
表題作を読んで、少し苦手かも…と思いながらも他3編読んでみたらかなり好みだった。
最後の話は、自意識の書き方がすごい。こんなに小説読んでて自意識に悶々とするのは町田康の「告白」以来。
Posted by ブクログ
表題作含む3編。
出てくる人ほとんどに狂気を感じる。だがかなり引き込まれる。話の終着点はどこへ行くのか気になりながら読むも、全く想像出来なかったラストに唖然とした。
表題作は女性の生理に羨ましさを持つ男子高校生菊人と、男性の精神だが肉体は女性である女子高校生睦美が出会うところから始まる。
出会う直前まで菊人がやっていたことがかなり衝撃的で気持ち悪くなりそうだった。
自分のやっていることは世間的には犯罪だと菊人は自覚しているが、本心では何の問題もないと思っている。実際、こういう人が周りにいたら嫌だろうなぁと思うが、彼は巧妙に自分を隠しているので、いたとしても分からないだろう。
終始、菊人は睦美をうまく誘導しているように見えた。睦美も"自分と似た存在"として菊人を見ており、2人の関係は外面的には良好だった。
しかし、これがラストで一転してしまう。
私はこのラストが好ましく思えた。自分の性に悩み抜き、自分なりに結論を出した睦美の姿は神々しかった。その結論が間違っていようがいまいが、それで良いのだ。
願わくば、これで睦美は自分の性を証明したのだから、これ以降は暴力性と無縁でいてほしい。
菊人の方は、新しい何かに目覚めたようで。めでたしめでたし。笑
著者の献鹿さん、好きな作家の1人になりそうだ。
ここまで気持ち悪くてハマる話は久しぶりだった。
Posted by ブクログ
おぅっ……となった。
作者若そう…って思ったらやはり若かった。
青辛く笑えよが好き。
奇食のダボハゼは出だしが好きではなく、飛ばそうかという考えが過ったけど、結局最後まで読んだ。そして嫌いではなかった。
Posted by ブクログ
自分には文体が難しくあまり理解できなかった。
自分にはまだ早かったのか合わなかったのか分かりませんが、朧気ながらもわかった時は面白かったです。個人的に奇食のダボハゼが好きです。
Posted by ブクログ
2024/2/3
最初の5ページくらいが生理的に無理で、乗り越えたら見方が変わった。
ジェンダー。
癖のある文体だから好みが分かれそう。
若い人が書いてるんだろうな、と思ったら賢くて若い人だった。
Posted by ブクログ
女性の使用済みナプキンを集める性癖のある高校生や夢を掲げながら現実よりネットの世界にのめり込むうんちく高校生とか色々な価値観の主人公が出てくる短編。読んでいてむず痒い思いがしたかったり、現代っぽい雰囲気を味わいたい人にすすめたい。最近、周りに変な人ばかりいる環境にいたりはするけど改めて人の数だけ価値観や癖があるなと思わされた。
Posted by ブクログ
序盤、地の文が神視点なのか登場人物視点なのか分からず少し混乱したが、神がめちゃめちゃ解説してくれる形式なんだと分かってきてからは読みやすくなったように思う。
登場人物の心情や行動の理由について、読者に読み取らせるというよりは、解説のように細かく鮮明に、異常で複雑な心の中を分からせるように書かれている印象だった。
それ故に登場人物は異常だと思える人ばかりだけど、どこか自分自身とも共感できるところも発見してしまって、気まずさ、面白さ、怖さなど複雑な気持ちになる。
暴力的な描写も気持ち悪さの描写も巧くて、読んでて辛かったけど、もう一度あのページ見直してみようかなと思ってしまう中毒性もあった。
漫画家さんでもあるんですね。ググったら更に驚いた、リスペクトです。
Posted by ブクログ
共感されない世界でもがいている存在たちが多く
描かれている本作は、天才と呼ばれながら苦しんでいる人と、人には言えない自分のマイノリティを隠しながら生きる人と、1人の存在のために、自らの身体を捧げて1千万円を貯めた人など、何かをもがいている人物たちが、多く登場します。
「マイノリティの中のマイノリティ」この一文が
特に心に響きました。
文章が難解
文が難解すぎて途中で読むの諦めそうになる。赤泥棒はナプキン泥棒っていう衝撃的な設定から始まったのに何故か清々しい終わり方であまり好きじゃない。普通も同じく何故か清々しい終わり方。青辛く笑えよが1番好き。