あらすじ
広い世界を見るんだ――。僕は《在日朝鮮人》から《在日韓国人》に国籍を変え、民族学校ではなく都内の男子校に入学した。小さな円から脱け出て、『広い世界』へと飛び込む選択をしたのだ。でも、それはなかなか厳しい選択でもあったのだが。ある日、友人の誕生パーティーで一人の女の子と出会った。彼女はとても可愛かった――。感動の青春恋愛小説、第123回直木賞受賞作。
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Posted by ブクログ
カッコイイ‼︎
僕が今まで観た、読んだ、ラブストーリーの中では一番。
ケンカのシーンも多いが、スカッとする。
でも、この作品の一番のテーマは、
「アイデンティティ」
「正一」が巻き込まれるシーンや、「杉原」の葛藤は全てそこから。
娯楽作品でもありながら、かなり深さも感じる。
「杉原」、「オヤジ」もカッコイイし、「桜井」役の柴咲コウもぴったり。
原作も映画も両方いい。文句なし。
Posted by ブクログ
本作『GO』は、在日コリアンの主人公・杉原が民族の壁に葛藤しながらも、ヒロインとの出会いを経て成長していく青春物語。筆者金城一紀氏は在日コリアンとして生まれ、慶應義塾大学を卒業。本作で第123回直木賞を受賞。彼の作品には、映画化・ドラマ化されたものも多く、『GO』もその一つ。
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いやあ、良かった。
甘酸っぱい青春小説という要素をふんだんに取り入れながら、そこに正面から民族・出自の問題を取り扱っているところがわたくし的には琴線に響きました。
同じ日本生まれ・日本育ちでありながら、国籍が違うだけで差別される現実。
その現実を半自伝的に捉えた本作は、ほとんどの読者を当事者に置かせることで、なにがしかを感じさせずにはいないと推察します。
私たちは在日を差別してるのか? 私はどう?
自分ではそんなことはない、と考えています。ただ、異質なものは確かに感じていました。
思い返すのは私の通った中学・高校の近くにあった、とある朝鮮人中学校。
うちの中学・高校と距離が近いことから、部活の終了後に使う駄菓子屋がかぶっていたのです。しばしば、狭い駄菓子屋でうちの学校と先方と使う時間が重なり、会話は交わさないのですが、空気は明らかにとげとげしいものになったことを思い出します。
また、風のうわさで、うちの高校生が先方の中学生にカツアゲされるとか、ひ弱な私立高校にありそうな噂も流れてきたものです。
これが差別かは分かりませんが、少なくとも私は向こうを見ないようにし、存在していないように見做していたことは明らかです。
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国籍と差別。
国際結婚をして家庭を持った今、奥さんは外国籍で、子どもがハーフであることで、自分は傍観者ではいられない可能性を感じずにはいられません。
某政党が勢力を伸ばす中、家内は日本で差別を受けるのではないか。そういう恐れは十分にあります。というか東南アジアの人間を見下げる傾向は少なくても10年程前までははっきり感じました(とあるママ友は『あなたの実家は木の上に家があるのよね?』『あたなの国には炊飯器ってあるの?』とか正面きって家内に聞いていた)。
きちんと働いて、税金を納めて、ささやかな生活を築いても、外国人というだけで・国籍が違うだけで見下げられる。
うちの子どもたちは日本国籍ですが、半分しか日本の血が入っていることで「純潔」ではないのか?。逆に中国とか韓国で未だに反日的な話が出ますが、半分は責任免除されるのか?とか、疑問は尽きません。
なんかそういうモヤモヤが重なり、程なく、愛国心を煽るかのようなスポーツの国際試合、オリンピック、国籍とか、そういうものに興味がなくなってしまいました。
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だからこそ、本作主人公が朝鮮籍、韓国籍、そして日本国籍ではない状況に翻弄され、広い世界を目指す、国籍とか関係なく俺は俺なんだと叫ぶ姿に無性に感動してしまいました。
その目指すところがハワイだか、フィンランドだか分かりませんが、どこだっていいと思います。若者には失敗や軛を気にせず羽ばたいてほしい。
最終的には国籍は関係ないと信じたい。その人となりで判断される人になってほしい。
国籍とか関係なく、誰がなんといおうと私は妻を愛し守ります。ハーフとか関係なく、子どもたちは私たちの大事な子どもなのです。
だから、自分の家族を傷つけようとする人が居るとすれば私は全力で反撃したいし、駄目ならそんな土地からは脱出したい、と思います。
そう常日頃考えていたので、主人公の叫びに非常に共感しました。
別に日本が悪い国なのではないと思います。家内とも話しますが、むしろ日本は素敵な国です。皆勤勉で、いい意味で職人気質の人が多く、食材や外食などで食べ物もおいしく、安全で、清潔で、そして便利。
ただ、出自とか考えの違う人とうまくやるのが少し、苦手なのかもしれません。
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ということで金城氏の作品はこれで二作目でしたが、楽しく読みました。
一種ロミオとジュリエットみたいな作品、或いはドイツでトルコ出自の方とお付き合いするときとか、類似の話が出そうだなーとか感じました。
あ、あとどうでも良いですが、ふと映画パッチギで見せた、可愛らしい沢尻エリカさんの姿を思い出しました。あれは可愛かった!
民族問題、差別、国籍、国際結婚などにピンと来る方には興味を持って読んでもらえると思います。純然たる青春小説としても楽しめますし、YA的な作品としても読ませる作品だと思います。
Posted by ブクログ
杉原
朝鮮籍→韓国籍。中学まで民族学校『朝鮮学校』に通っていたが、日本の私立の男子高に進学する。
秀吉
杉原の父。在日朝鮮人。韓国の済州島生まれ。ハワイに行くため、韓国籍を取得する。日本ランキングに入ったことのあるライト級の元プロボクサー。パチンコの景品交換所を営んでいる。
道子
杉原の母。朝鮮籍。日本で生まれ、日本で育ち、十九歳の時に御徒町のアメ横でオヤジにナンパされ二十歳で杉原を産んだ。韓国籍を取得する。
息子のバカさに呆れている。
加藤
杉原の高校の同級生。広域指定暴力団の幹部組員の父親を持つ。
日本人。
竹下
杉原と同じ高校で加藤といつもつるんでいる。
桜井椿
加藤の誕生パーティーで知り合う。有名な私立の共学校の三年。
桜井の父
東大卒の有名企業のサラリーマン。
タワケ先輩
杉原の二つ上の先輩。剛毛。タワシの毛のように硬い。
正一(ジョンイル)
在日韓国人の父親と日本人の母親のあいだに生まれた。杉原の民族学校時代からの親友。
ナオミ
杉原の母親の同級生。
元秀(ウォンス)
杉原の民族学校時代の悪友。