【感想・ネタバレ】全部ゆるせたらいいのに(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

夫は毎晩のように泥酔する。一歳の娘がいるのに、なぜ育児にも自分の健康にも無頓着でいられるのだろう。ふと、夫に父の姿が重なり不安で叫びそうになる。酒に溺れ家庭を壊した父だった。夫は、わたしたちはまだ、立ち直れるだろうか――。家族だから愛しく、家族だから苦しい。それでもわたしが夫に、母が父に、父が人生に捨てきれなかった希望。すべての家族に捧ぐ、切実なる長編小説。(解説・桜木紫乃)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

読み進めていくうちに、タイトルの意味が深く染みてきた。物語の中にきれいごとは一切なく、読み終わってからしばらくは暗い気持ちが拭えなかった。
主人公に影を落としているのは、父親が原因だけではない。家族だからと無遠慮かつ無自覚に人を傷つける祖母、母の存在も心が痛んだ。
でも読んでよかった。何度読んでも苦しくなるだろうと思うけど、また何回も読んでしまう気がする。

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2023年06月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

みかける度に気になっていて、今だなと思って手に取りました。
『父がわたしを罵倒したり殴ったりしたのは、わたしのことが憎いからではなく、病気だったからなのだ。』
アルコール依存性の父を持ち、幼少期から苦しみ続け、夫もアルコール依存性になってしまいそうな日々。これほどの境遇に置かれても、父の死に対して、家族の形に対して、もっと違った道があったのかもしれないと後悔する。するんだろうか。全部ゆるせていたら、ざくろの木を見て穏やかに話すことも、ポケットの中で繋がれた手もなかったかもしれない。それでも、後悔するんだろうか。
全部ゆるせたらいいのに。シンプルな言葉だけど、難しいな。ゆるさない選択をしなくちゃいけないときがあるんだろうな。

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2023年05月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

どうして主人公はこんなにも夫の飲酒へ過敏になっているのだろう?と匂わせながら次章では父親目線や自分の幼少期の目線で話が進んでいく。
2人のボタンの掛け違い、或いは掛け違いに気付いていてもどうしようもないことへの切なさが読んでいて苦しかった。確かに、愛はあった。選択したことのひとつひとつ、気持ちの弱さや脆さが積み重なり心が壊れていく、家族が壊れていく。
最後まで宇太郎目線で話が進むことはなかったから、主人公が一番大切な人を信じることに気付いたラスト、宇太郎が、今の家族が、どうなっていくかは千映のこれからの"ゆるす"形なのだと思う。
ゆるすことは、酒を許すことではない。
酒を許すことは、"あきらめ"。
あきらめと、ゆるすは似たようで全く違う。
ゆるすことは、寄り添うこと。ひとりの人間として彼の弱さもみとめること。プレッシャーを背負う彼の逃げ場をつくること。それが酒ではないように一緒に考えてあげられること。

自分にも言い聞かせようと思う。

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2023年05月06日

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