あらすじ
やはり今晩にしよう──男の悲壮な決意は──自殺。手広く不動産屋を営んできたが、あっけなく去ったバブルは彼に多額の負債を残した。策は尽き、家族を守るための最後にして最善の手段を胸にひめつつ、ふと思い立って訪れた町で一軒の古い銭湯を見つける……。ありふれているようで多様な個性に富んだ市井の人々の表情。輪郭をうしなった魂が、この著者ならではのあふれる愛情をふきこまれ、しだいにくっきりとした力をとり戻していく表題作など、八つの短篇を収録。
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Posted by ブクログ
短編集の読みにくさというものが全くない。どの話も最初の数行から1ページ読む頃には、主人公がどんな人物であるか、これがどういった場面なのか、すぐ把握できるようになっていて、読むほうにもストレスがない。設定もさまざまなのに分かりやすく、構えずに読んでいける短編集だった。
色んな人生があるなぁと思わされる深みもある。
最後の話でなんだか心が暖かくなった。夫が亡き妻を思う愛、娘が父を思う愛、こんな愛は素敵だなぁと素直に思った。父と娘、二人とも無理をしないでこれから幸せに暮らしていけるのだろうと思うと私まで朗らかな気持ちになった。
Posted by ブクログ
借金を返さない人間に銀行は容赦しない。
かつては上場企業の社長であった高木は現在では自己破産を待つだけの日本のお荷物へと成り下がっていた。銀行は彼に莫大な金を貸しており、それを返済するよう正当な権利の主張を行ったが、立場もわからぬ愚か者はあろうことにもさらなる融資の提供を命じてきた。
馬鹿野郎が、お前のような屑は腐るほど見てきた。甘い見通しで借金をして自らの首を絞める無能に、会社という大きな『村』を率いる資格はない! さっさと首をくくって生命保険を充てにしろ! お前にできる唯一の手段は腹を切って金を生み出すことだけだ!
次回『生きねば』――本当にかわいそうなのは切られた社員です