【感想・ネタバレ】日本語の発音はどう変わってきたか 「てふてふ」から「ちょうちょう」へ、音声史の旅のレビュー

あらすじ

問題「母とは二度会ったが父とは一度も会わないもの、なーんだ?」(答・くちびる)。この室町時代のなぞなぞから、当時「ハハ」は「ファファ」のように発音されていたことがわかる。では日本語の発音はどのように変化してきたのか。奈良時代には母音が8つあった? 「行」を「コウ」と読んだり「ギョウ」と読んだり、なぜ漢字には複数の音読みがあるのか? 和歌の字余りからわかる古代語の真実とは? 千三百年に及ぶ音声の歴史を辿る。

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高校生時代、日本語の発音が現代と異なる事だけは授業で聴いたが、それきりだった。p→f→hというハ行発音の変化や、五十音表にない『ゐ』『ゑ』が消えた経緯を知れて良かった。本居宣長の仕事が発音記号もなかった江戸時代に於いて刮目する偉業であると改めて認識できた。

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2023年06月06日

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「てふてふ」、「ふじ」と「ふぢ」など。仮名遣いと発音の関連性。羽柴秀吉はファシバフィデヨシと発音していた等日本語の発音の変遷を辿る。

万葉集の漢字の使い方であったり宣教師の辞書のポルトガル語表記の日本語などから当時の発音や母音子音の変遷を探る。音声を聞けなくても復元していく試みは凄い。近年に限った研究ではなく江戸時代に本居宣長なども研究している。

また方言に過去の発音が残っている例も面白い。

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2023年04月17日

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高校のころ、古典の授業中にこんな話を聞いた。昔、『母には二たびあひたれども父には一度もあはず』という謎々があった。答えは『くちびる』で、このことから昔は母は『ファファ』のように発音していたことがわかるということ。この話を聞いて、発音も変化するのだと思い、新鮮だった。
書店で帯に『羽柴秀吉はファシバフィデヨシだった!』と書いてあるこの新書を迷わず手にした。

いろいろと新しいことを知ることができたので満足。でも、実際の音は読んで想像するだけでは、どうにもならないなぁ。以下は少し長くなるが、特に興味をもったこと。

万葉仮名の使い方を調べてみると、奈良時代には『い、え、お』の音が二つあり、母音が合わせて八つあったことが分かる。そもそも万葉仮名から、音が推測できることが凄い。その頃の語は1音節か2音節だったものが、情報量の増加に伴い多音節化が進み、微妙な音の使い分けが必要なくなり、平安時代になるころには5母音になっていった。
先ほどのハ行については、奈良時代はp音で、平安時代にf音に近い音になり、18世紀前半頃には現在のh音になった。途中平安時代の後期に、語中や語尾のf音は かは→かわ、かひ→かゐ のようにw音化も起こった。サ行も奈良時代はts音だったが、平安後期までにs音になった。『し』については、室町時代にsh音に変化した。平安時代には、音便による短縮化、い・ゐ、え・ゑ、お・を の合流が起こった。
平安時代にできたひらがなは文芸作品に使われて、書写が繰り返された。連綿体は書写に打ってつけだった。当時の和歌や日記、物語は総ひらがなで書かれていたが、発音通りに文字にすればよかった。しかし定家の時代(鎌倉時代)になると、音声変化のため綴りに乱れが生じて、作品を読むことができなくなっていた。定家はかな綴りの規範を作った(定家仮名遣)。漢字かな混じり文を進め、意味の纏りを意識して文を綴った(我々が普通に読む古典のスタイルを初めた)のも彼だ。
ところが江戸時代に入ると、定家の仮名遣いは平安初期の仮名遣いと一致しないことに契沖が気付いた。契沖は万葉集などに基づく仮名遣いをつくり、次第に受け入れられた。これがいわゆる、歴史的仮名遣いのもとになった。

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2025年09月16日

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本書をおすすめしたい人のリストです。
・日本語の変遷に関心のある人
・音声学を学習中、学習経験のある人
・日本語学を学習中、学習経験のある人
・言語学を学習中、学習経験のある人

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2024年12月14日

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かねてより「昔の日本語はこんな発音でした」みたいな記事を読むたびに、どうやってそんなことを調べられるのだろうかと不思議に思っていた。本書によりおおむね疑問氷解。スッキリしました

日本語は五十音図の母音と子音がクロスした発音であると思ってふだん疑うこともないが、たとえばタ行などは、同じt音で揃えると実はタ・ティ・トゥ・テ・トになる。そんな身近すぎて逆に意識できていないことが見えてくる快感もあった

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2024年02月25日

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ネタバレ

「発音の変遷」というよりも「音と文字の不一致がどのようにして生まれてきたか」という観点でとてもおもしろく読めた。
文字(漢字)が伝わる前にも日本語は存在していたが、漢字が伝わったことで音に相当する漢字を割り当てるようになった。それが万葉仮名としてある程度整理される。その段階では、同じ「い」の音でも排他的に2グループの漢字群が割り当てられていて、「い」の発音にも2種類あったことが分かる。そんな漢字で当時の母音は8種類あったことが分かった。
しかし音声は変わっていく。音節の少ない原始的な日本語が、より複雑な節や語を含む言語に発展していくにつれて、微妙な音の違いで意味を区別する必要が薄れていく。すると発音は手を抜く方向に変化していき、母音は今と同じ5つに集約されていく。pで発音された「は」行もより楽なΦ(歯は使わず、唇を合わせるだけのfのような音)に変わっていく。
鎌倉時代にはすでに平安時代の和歌がまともに読めなくなっていて、藤原定家がそれを体系的に整理して読めるようにした。これが今に伝わるいわゆる古典の原型になっている。
漢語は外国語としてそのまま日本語に吸収される。現代において英語がカタカナで日本語に吸収されるのとまさに同じように。漢語が伝わった年代によって、中国の政治的中心が異なるため、同じ漢字でも発音が異なる。だから漢字の音読みは複数あることが多い。また中国語の発音そのままでなく、日本語が持つ音体系の中から発音が割り当てられる。これも現代そのまま。
さらに契沖、本居宣長らが現代の五十音を整理する。

実は書いてある内容はかなり専門的であり、正しく理解できている自信がない箇所が結構ある。なので上記はかなり雑なまとめであり、間違いもあるかもしれない。
でもとにかく日本語という言語が1000年以上も前に成り立っていて、それが大きく形を変えることなく綿々と伝わってきているということがとても実感できた。

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2024年01月02日

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新書にしては歯ごたえがありましたが、学びが多くたいへん面白く読みました。学術的な記述が多く寝落ちに持ってこい(笑)なのですが、時々顔を出すぷっと吹き出すような言い回しとのキャップがよかったです。
副題にある「てふてふ」から「ちょうちょう」へ、というのは「てふてふ」と書いて「ちょうちょう」と読むものだと思っていたのですが、昔はそのまま「てふてふ」と発音していた、というのを初めて知りました。では、どうして「てふてふ」が「ちょうちょう」になったのか。この本を読めばわかります。
私たちが日本人として当たり前に使っている平仮名・片仮名、漢字の音読み、訓読み、あいうえおの「五十音」などなど、知らなかったことだらけで、驚きの連続でした。人に話したくなるけど、うーん、難しい!日本人として日本語を大切にしたくなる内容でした。日本語がもっと好きになりました。

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2023年10月15日

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なんとなく言語学と呼ばれるだろう分野に興味があったが、これはその興味のど真ん中ドンピシャにささる本だった。少々難解な箇所はあったが、それを上回る知的興奮を覚え、一気に読み終えた。

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2023年06月02日

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発音や発声のメカニカルなところは今ひとつ理解できなかったけど、日本語をどう表記するのが理解しやすく読みやすいのか、上代から連綿と工夫してきたんだね。
「じ」と「ぢ」、「ず」と「づ」。この4音もかつては使い分けていたし、聞き取ることができていた。母音だってかつて日本語は8音だったという。円を「yen」と表記するのは、外国の方にはそう聞こえるから。失われた日本語の母音の一つだね。

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2023年03月28日

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ネタバレ

 「国語」学の教科書のような新書。
 良い意味で、とても懐かしい一冊だった。
 今の大学生は、こういう手堅い入門書を楽しく読めるのだろうか。

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2023年03月26日

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これもとっくに読んだのだけど。

YouTube番組『ゆる言語学ラジオ』で以前言及されていた本。とても興味深い内容だったが、専門的な知識がないので、少々難しかったな。

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2025年11月23日

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なぜ接続の「は」は「wa」と発音のか。なぜや行とわ行にはイ段とオ段がないのか。なぜ「じ」と「ぢ」はどちらも「zi」と発音するのか。

 日頃、私たちが何気なく使っている日本語。その音の響きには、古代から連綿と続く歴史があります。本書『日本語の発音はどう変わってきたか』(釘貫亨著)は、そんな日本語の音、特に音韻がどのように変化してきたのかを、わかりやすく解説してくれる一冊です。

 驚くべきことに、奈良時代には「笹の葉サラサラ」は「ツァツァノパツァラツァラ」と発音されていたそうです。そこから時代を経て、「ササノファサラサラ」「ササノハサラサラ」へと変化したそうです。現代の我々からすると、古代の日本語はまるで外国語のように感じられます。本書は、こうした日本語の音の歴史的変化を、音響学や音韻論の観点から、丁寧に解き明かしてくれます。

 日本語の音の歴史は日本と日本人の歴史と密接に関係しています。しかし、日本語を母語とする私たちは、普段意識することなく日本語を使用しているため、その奥深い歴史や仕組みについて意外と知らないことが多いのではないでしょうか。本書は、私たちが当たり前のように使っている日本語のルーツを改めて教えてくれる、知的好奇心を刺激する一冊です。

本書を読み進めれば、冒頭に挙げた音に関する素朴な疑問も氷解するはずです。

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2025年05月19日

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なかなか難敵な1冊でした。大学生の時に勉強した英語学の発音をもう一度学習し直してからチャレンジすべきだったかもしれません。

とはいえ・・、そんな余裕もないので、読みきりました。

日本語は難しい。言われてみれば、漢字に加え、ひらがな、カタカナ、ローマ字、英語まで文中に存在する言語。こんな言語は世界広しといえども日本語だけ。でも、そんな言語を小学生でもある程度の精度で話している。それが、日本人。

そもそも、何でこんな複雑な言語構造なったのか?
その謎に真っ正面から解凍してくれる1冊です。

そもそも、漢字だけで文章を構成していた日本人。そこに、ひらがな、カタカナが生まれた。似→い、伊→イ、と何故か漢字から2種類の文字が生まれてしまう。そして、漢字とひらがなを組み合わせた藤原定家。彼がいなければ、我々の日本語はまた別のものに変化していただろう。

戦国時代、、江戸時代に当時どんな日本語を話していたのか、興味を持たないない日本人はいまい。

あいうえおはいつ、始まったのか?

小倉百人一首は、何故難しいのか?

こういう問いに素直に答えてくれる本である。

子供の頃から、不思議に思っていたことに対する答えを今見つけた感じがする。



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2023年11月04日

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