【感想・ネタバレ】同調者のレビュー

あらすじ

マルチェッロが殺人を犯したのは13歳のとき。以来、日常生活のなかでは「正常」であろうと努め、果てはファシズム政権下のイタリアにて政治警察の一員に。人並みな結婚を目前にある暗殺計画に関わることになるが、任務中に思わぬ欲望が芽生えて……。映画『暗殺の森』原作としても知られる、20世紀最大の小説家の一人による円熟期の代表作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

『軽蔑』『薔薇とハナムグリ』『視る男』『豹女』の次に読む。

面白かった。
むかし、映画化したのもわかる。映画化しそうなストーリーだから。ただ、映画とは異なるところもあるようだ。(映画は観てない)

自分が異常ではないかと悩み、普通であることを確かめる人生。
しかし、それは、結局のところ、リーノを殺していようがいまいが、同じ人生を歩んでしまうとわかる。純真さは誰だって失われる。

リーナとの関係が強引すぎる。
マルチェッロのやり方ってほとんどセクハラなんだけど。冷たくされて嫌がられてるのに、よくこんな行動できるなぁと。
ジュリアの愛人時代の体験もひどい。脅しとレイプである。


[プロローグ]
マルチェッロは、トカゲを殺したことから、自分は普通ではないかもしれないと悩む。
ある日、いじめにあった時、リーノという元牧師に出会う。彼は子供への猥褻罪で捕まったことがある。
13歳のマルチェッロは、いじめから逃れるため、学校で一目置かれている生徒にピストルを手に入れられると約束してしまい、リーノにピストルがほしいと頼む。
リーノはピストルはやるが、代わりに何かしてくれと言う。
マルチェッロはリーノの部屋に連れて行かれ、代わりの何かをさせられそうにやるが、ピストルを手に取り、銃口をリーノに向ける。
リーノは殺してくれと言う。マルチェッロはリーノを撃ってしまう。
その事件でマルチェッロは疑われることはなかった。

[第一部]
マルチェッロ30歳。
他の人と同じことをしているのを見るたびに自分は普通の一般的な人間であると確認して安心している。
20歳になったばかりの婚約者ジュリアがいる。
マルチェッロは諜報員の仕事が与えられる。
ジュリアとのハネムーンでパリにきている夫として、暗殺計画に関わることになる。

結婚する前にマルチェッロは告解する。初めて殺人の話を人にすることになる。

P.268
“彼のなかには悪意というものは微塵もなく、ただ己が生まれついた環境や、生きるよう定められた世界を素直に受け入れてきただけなのだ。”

“彼は宗教から外れたところにいて、たとえ己を浄化して正常に戻るためだったとしても、宗教に戻ることはできないのだ。”

母親は痩せこけて、部屋の中はぐちゃぐちゃに。運転手の愛人もいる。

父親は病院に入っていて、マルチェッロは月に少なくとも一回は訪ねている。父親の錯乱は手の施しようがないと思っている。
母親が言うには、父親が狂い出したきっかけは、マルチェッロが愛人との間の子であると思い込んだからだと言う。

[第2部]
マルチェッロはジュリアと結婚した。義母もジュリアもマルチェッロの人を殺した過去は知らないので、良い人と結婚できたと思っている。
マルチェッロは一般的なことを見つけると安心している。
ジュリアがある告白をする。15歳から6年間、弁護士の愛人だったと。レイプ、虐待に当たるが、母娘の生活を支えていたため、従っていた。
マルチェッロはそれを冷静に聞いていた。

P.285
“正常さというものは、ある種の体験を避けることによって決まるのではなく、そうした体験をいかに判断さするかによって決まるものなのだ”

マルチェッロは仕事の話をするため、オルランドと待ち合わせする娼家へ行く。
そこで、指令の変更があったと。しかし、あらかじめ決められていただろう。はめられたと思う。
クアードリと接触して、場所を知らせるための仕事で、マルチェッロがわざわざやることはないものだったが、加担させることで、クアードリ殺害の連携責任を負わせるというものだ。

ジュリアとパリへ新婚旅行。
クアードリとリーナ夫妻と会う。
マルチェッロは、リーナに一目惚れするが、リーナはジュリアを気にいる。
強引にリーナを振り向かせようとするマルチェッロ。
リーナにしつこくされて嫌がるジュリア。
計画では、クアードリが先に旅に立ち、後でリーナとマルチェッロたちが到着する予定にし、クアードリが1人の時に殺される予定だった。
しかし、リーナは嘘を言っていて、クアードリと一緒だったため、2人とも殺される。
その後、オルランドから、この任務はキャンセルされていた。無駄なことをしたと伝えてくる。
キャンセルの伝達がミスって、クアードリ事件は起こってしまった。
しかし、マルチェッロは、自分たちはどうすることもできなかったと割り切り、ジュリアと帰国する。

[エピローグ]
マルチェッロはジュリアと娘と普通に暮らしていた。しかし、ジュリアが心配し、やはりクアードリ事件にマルチェッロが関わっているのを本人から聞いて、マルチェッロが心配だと不安がる。
マルチェッロは公園でリーノに会う。彼は生きていた。

P.545 リーノの言葉
子供の頃は誰だって純真。
“形こそ異なれ、誰もがいつしかその純真さを失う。それが普通というものだろう”

マルチェッロは、リーノを殺してようが、殺してまいが、結局は同じ道を歩むのだと思う。

マルチェッロは、リーノを殺してなかったことで、またリセットされ、新しい人生が始まるような気持ちになっていた。
これまで自分は普通にならなければと必死だったが、そんなことはしなくていいのだと思う。
そして、娘の将来のことも考える。良い人生になるように。
しかし、車で家族で移動中、戦闘機からの攻撃で死んでしまう。

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2025年04月01日

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