【感想・ネタバレ】百合小説コレクション wizのレビュー

あらすじ

実力派作家の書き下ろしと「百合文芸小説コンテスト」発の新鋭が競演する、珠玉のアンソロジー。百合小説の〈今〉がここにある。

【著者略歴(五十音順)】

・アサウラ
1984年生まれ。TVアニメ『リコリス・リコイル』ストーリー原案など。

・小野繙(おの・ひもとく)
1996年生まれ。第4回百合文芸小説コンテスト・河出書房新社賞受賞。

・櫛木理宇(くしき・りう)
1972年生まれ。『ホーンテッド・キャンパス』『死刑にいたる病』など。

・坂崎かおる(さかさき・かおる)
1984年生まれ。第4回百合文芸小説コンテスト・大賞受賞。

・斜線堂有紀(しゃせんどう・ゆうき)
1993年生まれ。『恋に至る病』『楽園とは探偵の不在なり』など。

・南木義隆(なんぼく・よしたか)
1991年生まれ。『蝶と帝国』「月と怪物」など。

・深緑野分(ふかみどり・のわき)
1983年生まれ。『ベルリンは晴れているか』『スタッフロール』など。

・宮木あや子(みやぎ・あやこ)
1976年生まれ。『雨の塔』『ヴィオレッタの尖骨』など。

◎カバー装画=めばち
◎カバーデザイン=名和田耕平デザイン事務所

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Posted by ブクログ

ネタバレ

楽しみにしていた百合アンソロ。
一番好きな作品は櫛木理宇さんの「パンと蜜月」。現実味があったし、当事者同士が一番幸せそうだったので。
斜線堂有紀さん宮木あや子さん深緑野分さんはやっぱり安定感ある。
アサウラさんの「悪い奴」そうくるか!って唸る学生百合でよかった。

0
2023年06月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

アニメや漫画や映画に関しては百合大好物だが、百合小説には疎い。
カバーイラストを「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」に関わるめばちさんが描いているので、手を伸ばした。
気になっていた作家さんも多かったし。
ネット発の作家さん多し。
とはいえ、カバーイラストが具体的にどれかの作品を表しているかといえばそうではないし、むしろ半分くらいがファンタジーや歴史モノやメタモノなので、イラスト詐欺といえなくもないが、まあ変化球を含んでいるということ。
絵はいい。断然いい。→このイラストの路線を求める方には、むしろ漫画の「エクレア あなたに響く百合アンソロジー」をお勧めしたい。
以下、私的好み度をA、B、Cで。

ちなみに帯の
〈名前をつけたい関係も、
 名前のいらない紐帯も。〉
は名作。

■斜線堂有紀「選挙に絶対行きたくない家のソファーで食べて寝て映画観たい」

それこそ「スタァライト」の古川知宏監督と、脚本としてタッグを組んで「ラブコブラ」というか「タイトル未定作品」を待ちわびている。
本作はギスギスというか、彼我の政治意識差が、読んでいて辛かった。
今鑑賞中の「私の百合はお仕事です!」もそうだが、私が個人的に百合にギスギスを求めていないということなのかしらん。

■小野繙「あの日、私たちはバスに乗った」

独特……。そしてそこが面白い。
西尾維新とか舞城王太郎とかの文体芸を思い出した(もはや古いか)。

■櫛木理宇「パンと蜜月」

純文学風な舞台立てか? やや類型的な印象。

■宮木あや子「エリアンタス・ロバートソン」

スピンオフらしいので、いったん保留。

■アサウラ「悪い奴」

「リコリス・リコイル」のストーリー原案として知ったが、実は「メルヘン・メドヘン」の脚本も手掛けられていたのだった。「ベン・トー」は未見。
タイトルの意味が都度都度判明するのが面白い。

■坂崎かおる「嘘つき姫」

これはいい小説だ……。
皆川博子的本格西洋ではないが、スピリットは通じ合っている。

■南木義隆「魔術師の恋その他の物語(Love of the bewitcher and other stories.)」
S!
以前からネット上の記事で気になっていた作家さん。
「アステリズムに花束を」収録の「月と怪物」を読みたいと思っていたところ。
今野緒雪「マリア様がみてる」をもじって、〈僕は自分で百合小説を書くとき、「これは『マリみて』のシェアード・ワールドです」と時々言うんですよ〉〈もちろん冗談ですよ(笑)。けれど、僕は『マリみて』も僕の作品も、同一の世界で起こっている話なんだとしばしば思い込んでしまうことがあるんです。同じ世界なんだけど、「マリア様が見ている」部分で起きているのが『マリみて』。対して、僕が書くべきなのは、そこからこぼれ落ちた「マリア様が見ていない」「マリア様が見過ごしている」部分の話だと思っているんですよ、勝手に。〉という発言で、信用度を高めていたところ。
津原泰水の小説講座を受講していたという経歴も目を引いた。
で、実際読んでみたら、文体のマジック! たとえば【薔薇子1】冒頭部の、
《家は帰るべき場所ではないから街に午後五時を告げるチャイムが鳴り響くのを背にきみは、他に人影のない冬の海に佇んで空になった猫用缶詰を片手に煙草をくゆらせている。歳は十三。》
とか、まさに津原泰水の文章を読んでいるかのようで、嬉しくてちょっと涙ぐんでしまったわ。
津原全作品の冒頭部分を最近読み直したので、この感想は間違いない。
会話文の粋さも通じている。
作者ご当人はおそらく、過剰に津原の弟子みたいに言われたら嫌だろうけれど、題材や筋もさることながら小説って文章の芸よねと再確認させてくれた点で、やっぱり津原泰水を強烈に思い出してしまったんだから仕方がない。
また、たとえば、宮崎駿「魔女の宅急便」とか新房昭之「魔法少女まどか☆マギカ」とか、典型的魔女描写という点で「魔女の旅々」とかを連想させておいて(たぶんわざと)、別ベクトルに読者を拉致せんとする豪腕さ。
さらに、冒頭と終盤で「痛み」の意味を別次元に転化された、驚きと、嬉しさとで、うっとりしてしまった。
敢えて大袈裟に言ってしまうが、この小説は額装して部屋に飾っておきたい。

■深緑野分「運命」

このアンソロジーに深緑さんが加わるのは確かにと思ったのは、「オーブランの少女」という弩級の名作をものした作家さんだから。
が、むしろ坂崎かおる「嘘つき姫」に深緑っぽさを感じた。
かたや本作は今敏ふう?
油圧カッターという無骨なモノを持って走る姿は、実にいいが。

0
2023年05月23日

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