あらすじ
キム・ジヨンの人生を克明に振り返る中で、女性が人生で出会う差別を描き、絶大な共感で世界を揺るがした(事件的〉小説、待望の文庫化! BTSやRMらが言及、チョン・ユミ、コン・ユ共演で映画化。韓国で136万部、日本で23万部を突破。フェミニズム、韓国文学隆盛の契機となる。文庫化にあたり、新たな著者メッセージと訳者あとがき、評論を収録。
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Posted by ブクログ
韓国の小説にはいつも出会ったことがない言葉が書いてあって驚かされる
本文より
「〜子供をを産む母親には、痛みもしんどさも死ぬほどの恐怖も喜んで受け入れて勝ち抜けというのである。それが母性愛であるかのように。母性愛は宗教なんだろうか。天国は母性愛を信じる者のそばにあるのか。」
あとがきより
「キム・ジヨンさんは今も、ましにもならず悪くなりもせず、何かを選択することもそこを去ることもせず、問いかけもしないし答えもしません。答えを探すのは、小説の外を生きていく私たちの役目であるようです。」
これ、どの小説に対しても同じこと言えるじゃんって、慄いた
Posted by ブクログ
大変読みやすく、面白いと言う表現は語弊があるけどとても満足度の高いものでした。作品全体を覆う閉塞感はジヨン氏のものなのか。時々涙が出そうになるくらい辛かった。最後の数行の仕掛けは秀逸で、救いの無さに思わずうおーっと声がでた。女性の社会的地位の低さは日本も似たところはあるだろう、だけど慣れてしまって気づかないことがどんだけあるだろう。
救いはジヨン氏のお母さんが学歴もない中、家庭を切り盛りし商売を成功させ、アホボンな旦那に一撃かますとこ。ほんとカッコよかったね!
Posted by ブクログ
初韓国文学、初フェミニズム小説。
読む前はタイトルに惹かれただけで、フェミニズム文学とは知らなかったけど、読んでいくうちに日本でも同じようなことが起きているなと思った。
ネットでフェミニストはバカにされる対象だし、逆差別という主張はレディースデイ、レディース割への反論でも記憶に新しい。ミソジニー的な犯罪や発言は溢れかえっているし、2025年の今の日本でもホット。
なぜここまで性別で揉めるのかと考えると、解説にあるように自分にはない特権を持っていると捉えてしまうことが発端で、女性だけでなく多岐にわたるマイノリティへのヘイトの多くがこれ。
それってつまり、みんなが苦しんでいる証拠かなと。政治や経済が良くなればヘイトの火は小さくなっていくんだろうなと改めて思った。
良書だった。
Posted by ブクログ
本作も数年前に話題になっていたし、私がお邪魔するブログでも結構取り沙汰されていたと思います。
読みたいなー、読みたいなー、と思っていましたが、今般やっと許容範囲のお値段で手に入れることができました。
で、読んでみてびっくり。というか想定しておらず。
これはいわゆるフェミニズムの本であります。そして、とにかく暗い。
女性という性に対し、後天的に付与された窮屈な立場、逃げ場のない袋小路が淡々と描かれます。こういうのはきっと男性こそ読むべきものだと思いました。
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1982年生まれのキム・ジヨンは、結婚・出産を機に退職し、育児と家事に追われる日々を送る33歳の主婦。ある日突然、他人が乗り移ったような言動をするようになった彼女は、精神科医の診察を受ける。
その半生を振り返る中で、彼女が幼少期から社会人、そして母親となる過程で直面した女性差別の困難と不条理が浮き彫りになる。
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私は韓国には行ったことが無いのですが、韓国はそんなに男尊女卑が強いのかな、とやや驚きました。
昭和生まれで、昭和、平成、令和と生きてきて、社会情勢の変化は体感してきましたが、私が新卒で就職した平成初期は、私の居た職場には所謂一般職・総合職という区分けも既になく、セクハラという言葉も流通し、女性が差別されるという雰囲気は余り感じられませんでした。
しいて言えば、女性の先輩が、「こんな厳しい時代なのに取ってもらえて御の字だよ」とか言っていたのは印象にあります。逆に卑下しているような。就職難の時代でしたからでしょうか。
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きっと、日本でも世界でも、今後は本作のキム・ジヨンさんのような人は少なくなるのだとは思います。むしろ女性の進出をどんどん進めよう、という動きかと思います。うちの会社でも女性管理職〇〇%以上みたいなKPIが設定されました。
想定されるのは、今後は昇進候補者の選定にあたり、評定の低い女性が昇進し、評定の高い男性が僅差で昇進できないというケースも出てこようと思います。
きっと男性はこれを総体として受け止めねばいけないのでしょうね。
個別のケースで考えるのではなく、総体として男性はこれまで女性より優遇されてきた、と。これを是正する社会的過渡期にあると。
まあ男性からしたら、なんで俺なんだよ、みたいな感覚もあるかもしれません。
自分の父親、祖父、叔父、そうした人たちがエンジョイしてしまった優遇の対価を我々が支払うということかもしれません。あるいは自分自身、気づかずに享受していた優遇もありましょう。そうしたものの揺り戻しなのかもしれません。
ただ、別の考えもできましょう。自分の妻・彼女・娘・お嫁さんなどが正当に扱われるのだとすれば、これはこれで受け入れられるのかな、とも思いました。
もっとも私は昇進もへったくれもありませんでしたが…。
米国での黒人差別を経ての大学入試でのポリティカル・コレクトネス、またオーストラリアやニュージーランドでの先住民の大学入学におけるクオータ制が想起されます。これらがどうやって受け入れられたかは一つ先例として参考になるかもしれませんね。
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ということで、内容はじっとりと暗い女性の半生を描くフェミニズム小説でした。
社会が変わりつつある中、中高生が読んでも面白いと思います。
社会人の男性が読んで違和感を感じる箇所があれば、それが世の潮流との「ズレ」かもしれません。そうした「ズレ」が大きくならないうちに予防接種的にも使える作品かと思いました。