あらすじ
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鮮烈なマゼンタ(赤紫色)のコンテナやコンテナ船を見たことがありますか? 日本海運業の存亡を賭けた日本郵船、商船三井、川崎汽船のコンテナ船事業部門の大統合で誕生したシンガポールに本拠を置くオーシャン・ネットワーク・エキスプレス、略称ONE。2017年に設立されたONEの軌跡とコロナ禍による世界のコンテナ業界の大激動を追ったビジネスドキュメント。著者は海運専門紙記者と海運研究者。
世界第2位のコンテナ港を擁するシンガポールで、邦船3社の30代、40代が中心となって作り上げた19カ国のスタッフを抱える多国籍かつ世界標準のスタートアップは、結果としてコロナ禍によるサプライチェーンの混乱とコンテナ運賃急騰などもあり、2年連続で2兆円の利益を上げる。赤字お荷物部門からの大逆転劇だ。
成功のキーワードは、「出島組織」。その定義は、以下の2点。
(1)本体組織から何かしらの形ではみ出して
(2)新しい価値を生む組織
ONEの目覚ましい成功は、日本の伝統的な大企業、いわゆるJTC(Japanese Traditional Company)の再生の方向性を示す格好の事例と言えるだろう。
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Posted by ブクログ
日の丸コンテナ会社ONEはなぜ成功したのか?
あのピンクのコンテナが放つ誘惑は、既成概念を壊す革命の証だ。
日本の古ぼけた大企業の殻を破り、シンガポールに設けられた「出島組織」としてONEは生まれた。若手経営陣が自由を手にし、古い価値観を震わせる。民間主導の強烈な危機感と行動力が、赤字の負の連鎖を断ち切り、2兆円超の利益を叩き出すまでに躍進させた。その背後にある熱と焦燥は、甘美な挑発としてほのかに香り、経営の技巧が肌にまとわりつく。だが全てが順風満帆ではなく、時に冷酷な現実が牙を剥き、興奮と不安が交錯する。成功の物語に潜むその隙間こそが、我々の心を掴む本当の魅力だ。活況の裏に潜む痛みも忘れず描くことで、ただの賛美に終わらない、生々しい人間味を残しているのだと感じた。
Posted by ブクログ
就活時に大本命だったので本を買って読んだけど落ちました笑泣
日本のインフラをしっかりと支えているのは日経と外資の間にあるような、活気のある若者を中心にできた出島組織であるのだと思った。落ちても魅力的な会社だと思う
Posted by ブクログ
ロジスティクスの視点で大手海運3社のコンテナ事業には大変注目していた。もう少しインサイダーや裏話的なことを期待して、ある種野次馬的に読んだが、そういった意味では綺麗すぎて若干不満も残るが、大変丁寧に、そして著者たちがこの会社に敬意を払って書いていることがよくわかる。
邦船大手の統合など少し長めの歴史についても参考になる記述が多かった。特に世界レベルの船会社アライアンスについて敬意等をここまで詳細に扱ったものはこれまでなかった気がする。
いずれにしてもニッチな興味・関心のある人にはお勧めの一冊であり、汎化した一般ビジネスにおいても、難しい企業統合のお手本にもなり得るかも知れない。(これを主目的で読むと少し期待はずれかも知れないが、得られることがない訳ではない)
Posted by ブクログ
日本郵船、商船三井、川崎汽船が2018年にコンテナ事業を統合して設立したのが、Ocean Network Express、略称はONE。そして本書は、その設立を巡るドラマである。正確にはマゼンタらしいのだが、まず目につくのはピンク色の船だ。目新しさや他との違いは、このカラーリングにより、この統合による斬新さ、チャレンジ精神を一層引き立てる。
2016年にはアジアから欧州までの海上運賃がコンテナ1本あたり最安値で約8万円円まで落ち込んでいた。いくらコンテナ船が大型化して、大量輸送によるコスト抑制を進めているとは言え、20トンを超える貨物を運ぶ大きなコンテナを1ヵ月以上かけて、アジアから欧州に運んで10万円も受け取れない。過当競争は、利用する側は利用料が安くなるから歓迎だが、事業が続かない。
2016年8月、韓国海運最大手の韓進海運が経営破綻。2011年マレーシアの海運、大手MISCは、コンテナ船事業からの撤退を発表。次々と、戦線離脱。海運業界では、2009年のリーマンショック以上に2011年のマースクショックも影響が大きく、コンテナ船業界をめぐる過当競争が招いた不況とも言われ、2016年に至る業界再編の震源地となった。ONE結成にはこうした背景もある。
以前、マゼンタ色をした箱型ティッシュペーパーのノベルティをこの会社から頂いた。本著にも紹介されるがオフィス環境もスタートアップ企業のようであり、これらは若手経営者がリードして進めているのだという。古い世代の古い価値観を変えるなら、経営者を若返らせる事も重要かも知れない。
Posted by ブクログ
面白かった。
3社統合のコンテナ会社oneの統合の経緯を描いている。
しかし、内容がさらっとしており薄く、物足りない。
成功の要因は、本書にもある通り、従来のしがらみや慣習を受けなかったこと、これに尽きる。
やたらと出島と書かれているが、正直出島はあんまり関係ないので気にしなくていい。
本書に関連して、コンテナの歴史と物語についてはマルクレヴィンソンのコンテナ物語が非常に面白く、内容も濃いので、超オススメ。
Posted by ブクログ
お荷物部署と呼ばれ続けて来た邦船3社のコンテナ部門がスピンアウトして設立されたONE社。金融機関主導ではなく民間の意思で日本海運の復権を目的として、シンガポールに設立された同社はエネルギー溢れる中堅、若手が一体となって業務に取り組んだ結果、親会社の最高益を叩き出す利益をあげることになる。
Posted by ブクログ
2023年14冊目。満足度★★★★☆
日本郵船、商船三井、川崎汽船のコンテナ事業をまとめる形でシンガポールの「出島」に新設会社として誕生した会社を中心とする海運会社に関する書籍
私の様な業界に詳しくない人には、業界の経緯や基礎的な知識が手軽に把握できて良い
Posted by ブクログ
☑︎船舶は大型化すればするほど、貨物の単位当たり輸送コスト、すなわちコンテナ1個当たりの輸送コストが減少して、コスト競争力が増す。
☑︎コンテナ輸送は国際政治と無縁ではあり得ず、その重要な要素と言える。
☑︎実際にコンテナ貨物の輸送依頼をする際、ブッキングする海運会社と実際に運ばれる海運会社の違いを認識している荷主の担当者がどれだけいるだろう。
☑︎コンテナ船事業は、無数に運用している1本当たりのコンテナでどうやって収益を上げ、そのコンテナでいかに稼ぐかということに尽きる。