あらすじ
恋人に紹介できない家族、会社でのいじめによる対人恐怖、人間関係をリセットしたくなる衝動、わきまえていたはずだった不倫、ずっと側にいると思っていた幼馴染との別れ――いまは人生の迷子になってしまったけれど、あなたの道しるべは、ほら、ここに。もつれた心を解きほぐす、ぬくもりに満ちた全五篇。
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Posted by ブクログ
全編通して好きな物語でした!
おつやのよる
絵葉書を描くなんて素敵なおばあちゃん。そんなおばあちゃんの行動でみんなが変わっていく、動かされるお話。私が好きだったのはえなちゃんの旦那さんが迎えに来たシーン、おばあちゃんが旦那さんに日常を動画に撮って送っていた。妊婦ながら2人の息子をワンオペで面倒見て卵焼きとったとってない、じゃあもう一回焼いてあげる。怖い夢見て起きちゃった、大好きだよ明日また遊ぼうねって優しく宥めてくれる。なんて優しいお母さんなんだろう。理想としてはそうした方がいいって思いながらもこの行動を取れるのはすごいよなあ。息子ちゃんはこんな愛されて幸せだろうな、おばあちゃんはこういう日常を見れるのは当たり前じゃないよって言いたかったのかな。はやく迎えにおいでって言葉にするより、家族のこういう姿を見ると胸が詰まりそう。
彼氏が迎えに来てくれたところも良かった、こんな家族見せたくない恥ずかしいって言う気持ちを、彼氏の優しい素直な愛のある言葉で包んでもらえて幸せだな。あのえなちゃんの彼氏好きやな、お父さんも好きやな、従兄弟も好きやな、って私の恥ずかしいと思ってた部分を好きな人に肯定されるってすごく嬉しい。しかもそれがちゃんとした家庭で育って来た人に肯定されるのってまた自信になりそう。
お父さんも、大好きなお酒を飲まずに主人公の帰りを待ってたと思うと娘の事大好きなんだなってまた泣いた。
オーケストラばばあ
これそう言う意味やったのか!ってすごく納得。なんのために食器を箸で叩いてたんやろうってずっと分からんかったけど、あるカップが割れたときあんたの役目はもう終わり。もう泣かなくていいんだよっていう言葉でそう言うことか!て思った。
ここで泣けなかった人のために、代わりに泣いてくれてたんや。去るしかなかった人のために代わりに音を立てて泣いてたんやなあって。ここであなたがここにいなくともってタイトルの意味が理解できた。主人公の彼氏、本当モラハラでもう別れようよって最初から思った、自分を削ってくるような男はいらん。南さん?の私には真夜中、私のために自転車で爆走してくれる人がいるっていうの良かったなあ。そこまで自分のために動いてくれる人なかなかいない。しかもそれが他人、他人にそこまで愛してもらえてる、それは自信になるな。充分潰れない思いになる。私にもいるな!!
入道雲が生まれる頃
主人公のリセット癖、難儀やなあ。リセットしていくって周りの人間関係もやけど自分もリセットされていくようで私は気持ちいいと思えなさそう。まだ自分がゼロになった、って悲しくなりそう。
感情移入はできなかったけれど、主人公が藤江さんの遺品整理をしている時の気持ちはわかった。捨てて来たものを紙をちぎってそれを絵にして、ってじゃあなんで捨てて来たんや、悲しいって思っちゃう。でも本当に大事なものは形じゃなくても残るんだ、捨てきれないものってあるんだ。形じゃなくてもずっと自分の中にある。それは何年たっても消えないって言うのはこれからの自分の力になりそう。
くろいあな
もうこの話が一番続きが気になった!!時間なくてここまでしか読めない!っていうのが多くてむずがゆかった。渋皮煮の作り方知らなかったけど、こんなに手間のかかる物をよく自分をそんな扱い方する人に作るなあと驚いた。なんてまあ。不倫する人ってやっぱゆるいな。代わりに抱かれるっておかしいやろ。どんな価値ある男やねん。 でもこの、馬渕さんの奥さんの一言が!!あなたが摘まんだものはちゃんと食べなさい。 が!これどっちに向けて言ってるの!?悪意のあるこの栗は私に向けられるものじゃない、これを始めたあなたが食べなさいっていう旦那に向けた言葉!?悪意を感じるこの栗を入れた、けど貴女も摘まんだ、途中でやめるなって主人公へのメッセージ?やっぱ旦那へか…
また黒い穴が空いてる、悪意に気付かないのがまたバカな旦那。それをちゃんと食べたよってそんな天然な君も許すよっていう甘い言葉だと思ってるバカ、嫁さんが亡くなったから主人公へ?バカだなぁ。ちゃんと別れて良かった、そしておばあちゃんが教えてくれた大切な渋皮煮をこんな悪意を向ける物として使ってしまった自分を責めたのかもう作らない、代わりに八百清の奥さんへ教えます、そして主人がいい人でまた責められてる気分になった。
先を生く人
もうねー、ほんとに菜摘さんが好きだとは思わなかった。思い過ごしてあってほしかった。本当は主人公を好きだよって言って欲しかった。そこまで甘くなかったな。澪さんが素敵な人で若い人を応援してくれる人で良かった。偏屈な人なのかなって思ってた。興味で突っ込んだ自分を恥じたやろうな。
こういうのっていい人だった時ほど恥ずかしくなるよね。ないない、がそう言う意味やったのか?後の人に残せるものが見つかったてこと?そこだけちゃんと掴めてない。言葉がどれも素直で優しくて胸に響いた。ちゃんと生き抜いた自分を褒めたい、とか遠い先の未来に私が待ってると思いなさい、とか。誠実に生きて、生き抜いた先に澪さんみたいな人が待ってくれてると思うと恥じるような事は出来ないし、待ってるから頑張ろうってすごく勇気になりそう。私にもそういう人が欲しいな。
澪さん亡くなったのが残念。カナブンの、友達を立てる言葉すごく嬉しった!かよすごくいい子だよ!みたいな。後押しありがとう。
全編通して、あなたがここにいなくとも がすごく大きな意味だなあと感じた。後に続く言葉は何がいちばんぴったり?
あなたがここにいなくとも、あなたの想いは続いていく。私はやって行ける。あなたはここにいる。言葉を知らなくてぴったり思いつかないけど、どれもすごく今の私にいいお話だった。あとなんで全部九州だったんだ?作者が九州出身じゃないってあったし謎。
Posted by ブクログ
おつやのよる、ばばあのマーチ、入道雲が生まれるころ、くろい穴、先を生くひと、からなる短編小説。個人的には『くろい穴』の美鈴と栗の対比表現、『先を生くひと』の加代の素直さが好き。長さも丁度良く、読みやすい。
Posted by ブクログ
短編。
祖母が休止してお葬式のために帰省した清陽。
一緒に行くと言ってくれた彼氏に、酒癖の悪い父の姿を見せたくないがために突き放してしまったこと。
喧嘩しながらも、本音を言い合っている家族たちの姿を見て思ったこと。
職場でいじめにあってから、退職して工場の仕事で細々と日々を過ごす香子とモラハラ彼氏。
近所に住む庭で食器を叩いて演奏するオーケストラババアに、自分の浄化してほしい思い出のマグカップを渡して、次に進むことを決めたこと。
人間関係や環境を短期間でリセットしてしまう萌子。
親戚の藤江さんの訃報を受け帰省して、藤江さんは行方不明の赤の他人だったことがわかったものの
妹と遺品整理をして見えてきた、彼女が過去のことも大切にしていて、萌子自身もわかったこと。
祖母に作り方を教わった、手間のかかる栗の渋皮煮を、不倫相手の妻のために作る美鈴。
自分の矛盾した行動に嫌気がさして、虫食いの栗をわざとよけずに使ったこと。
後で知った不倫相手の妻の病気の末の死。
自分が犯した悪意と自責の思い。
幼馴染の葵生に恋していることに気づいた加代。
葵生が澪さんというお婆さんの初恋の人の代わりとして、家に通っていることを知り、加代も加わった。
澪さんは余命わずかで、生前整理をしていて、彼女の人生と思い出の品を、若い人たちで貰い受けたこと。
2番目の話、長く付き合ったモラハラ彼氏と電話だけで別れたのは、ちょっと納得いかない。。。
親戚のお葬式に行く話が2つもあって混乱した。
最後の、自分の思いの詰まった品を若い人たちがもらってくれるの、いいよね。