【感想・ネタバレ】フランソワーズ・パストルのレビュー

あらすじ

留学中の遠藤周作がパリで出会った才媛、フランソワーズ。日本と数奇な縁で結ばれたその短い生涯を、二人の交わした書簡と遺族らへの丹念な取材から浮かび上がらせる。次姉ジュンヌヴィエーヴの手記、および未公開の遠藤の恋文19通全文を特別収録。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

【著者と私】
本書の著者は、私にとって・・・「大学の先輩」、「職場の先輩社員」、「独身寮(弦巻寮)の先輩寮生」に該当。 加えて、職域同窓会等を介しての交流が続いていますから、レビュー投稿は当然の義務です。ところで本書の主題=「文豪、若き日の醜聞」? 「国際恋愛の不実・婚約不履行」? 或いは「20世紀の『舞姫』事件」? 「芥川賞作家の隠された年譜」?・・・本書の多面性故に、如何様にも読めてしまいますが、どれも しっくり来ません。「我が師 F・パストル ~その愛と死」が最も相応しい気がします。 何故なら、本書が描く「F・パストル先生への師事」の日々(1966~71年)は、(我ら北大関係者にとって)札幌農学校・一期生とW・S・クラーク先生の魂の交流」(1876年頃)の相似形と読むのが自然だから。

【愛の書簡/遠藤からフランソワーズへ】
本書「附録」章、「遠藤周作からフランソワーズへの手紙」の文学史的価値は云うまでもありませんが・・・仏留学時代(結核闘病期)の遠藤による「仏語による告白」は、如何に解されるべきなのでしょうか? これらの熱情は、青年の本心(魂の叫び)だったとしても、自らの仏語「会話力」「文章力」に酔いしれている(自惚れている)部分を感じます。 彼の紡ぎ出す言葉が、ネイティブのフランス女性(フランソワーズ)に通じ、心を動かした手応えに、さらに増長したのでは?(洋の東西を問わず、男女間の恋愛には駆け引きがあって当然。たとえ不毛な結果となっても、それは男の不実・不義理ではない。騙される小娘が悪い、という冷徹な論理か?)

【或る仏人女性の生涯/国際恋愛の末に】
「26歳」の記述。遠距離恋愛で四年も待たされた上、遠藤が「その前年に日本人女性と結婚していたこと」を、人伝に知らされたフランソワーズ嬢の悲恋! これが遠藤の「不実」でなくて何でしょう。

「29歳」の記述。遠藤が「夫婦」で前年秋から渡仏し、フランソワーズと二人きりで再会する機会(或る意味で修羅場)を都合した事実に驚愕! しかもフランソワーズの実姉(次姉)によれば、「(現在の妻と)離婚することは困難だが、今でもお前を愛している」(遠藤)、「あなたへの愛情は変わらない。できれば私たちの子供をもちたい」(フランソワーズ)との会話が為された(憶測)とは! これでは、男に誠意の欠片も見出せず、「色男の火遊び」と同じなのでは?

「40歳」の記述。体調不良(乳癌)のフランソワーズは、このとき 既に死期を悟って達観(「恩讐の彼方に」の境地)? かつて愛した男(遠藤)と最後の会食! 当事者の二人が鬼籍に入った今・・・読者としては「彼女が安らかな心境で天に召された」と信じたいです。

0
2022年07月14日

「ノンフィクション」ランキング