【感想・ネタバレ】フランソワーズ・パストルのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

【著者と私】
本書の著者は、私にとって・・・「大学の先輩」、「職場の先輩社員」、「独身寮(弦巻寮)の先輩寮生」に該当。 加えて、職域同窓会等を介しての交流が続いていますから、レビュー投稿は当然の義務です。ところで本書の主題=「文豪、若き日の醜聞」? 「国際恋愛の不実・婚約不履行」? 或いは「20世紀の『舞姫』事件」? 「芥川賞作家の隠された年譜」?・・・本書の多面性故に、如何様にも読めてしまいますが、どれも しっくり来ません。「我が師 F・パストル ~その愛と死」が最も相応しい気がします。 何故なら、本書が描く「F・パストル先生への師事」の日々(1966~71年)は、(我ら北大関係者にとって)札幌農学校・一期生とW・S・クラーク先生の魂の交流」(1876年頃)の相似形と読むのが自然だから。

【愛の書簡/遠藤からフランソワーズへ】
本書「附録」章、「遠藤周作からフランソワーズへの手紙」の文学史的価値は云うまでもありませんが・・・仏留学時代(結核闘病期)の遠藤による「仏語による告白」は、如何に解されるべきなのでしょうか? これらの熱情は、青年の本心(魂の叫び)だったとしても、自らの仏語「会話力」「文章力」に酔いしれている(自惚れている)部分を感じます。 彼の紡ぎ出す言葉が、ネイティブのフランス女性(フランソワーズ)に通じ、心を動かした手応えに、さらに増長したのでは?(洋の東西を問わず、男女間の恋愛には駆け引きがあって当然。たとえ不毛な結果となっても、それは男の不実・不義理ではない。騙される小娘が悪い、という冷徹な論理か?)

【或る仏人女性の生涯/国際恋愛の末に】
「26歳」の記述。遠距離恋愛で四年も待たされた上、遠藤が「その前年に日本人女性と結婚していたこと」を、人伝に知らされたフランソワーズ嬢の悲恋! これが遠藤の「不実」でなくて何でしょう。

「29歳」の記述。遠藤が「夫婦」で前年秋から渡仏し、フランソワーズと二人きりで再会する機会(或る意味で修羅場)を都合した事実に驚愕! しかもフランソワーズの実姉(次姉)によれば、「(現在の妻と)離婚することは困難だが、今でもお前を愛している」(遠藤)、「あなたへの愛情は変わらない。できれば私たちの子供をもちたい」(フランソワーズ)との会話が為された(憶測)とは! これでは、男に誠意の欠片も見出せず、「色男の火遊び」と同じなのでは?

「40歳」の記述。体調不良(乳癌)のフランソワーズは、このとき 既に死期を悟って達観(「恩讐の彼方に」の境地)? かつて愛した男(遠藤)と最後の会食! 当事者の二人が鬼籍に入った今・・・読者としては「彼女が安らかな心境で天に召された」と信じたいです。

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2022年07月14日

Posted by ブクログ

遠藤周作の短いパリ滞在期間に知り合ったフランソワーズと交わした手紙や彼女の家族への丹念な取材でこの本にまとめ上げられた。筆者は北大でのフランソワーズの教え子でした。
筆者は生前の彼女とはもちろん彼女の姉たちとも交流があったためこのような本にできたのでしょう。   お墓参りなども何度となくしているようで師として随分慕っていたと思われます。それにしても遠藤周作はあっけないほど素早く心変わりしたものだと驚きました。夢中になっていた時と心が離れた時の文面の違いの大きさに彼への見方が違ってきた。今頃草葉の陰で言い訳したくてうずうずしてるかもしれませんね。それにしても彼の妻となった岡田順子さんは辛かっただろうな........夫が後ろめたい気分でいるだろうと想像できるから。

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2022年12月12日

Posted by ブクログ

遠藤周作著「ルーアンの丘」を読んだのは、多分20年以上前…。内容も覚えていません。確かにフランソワーズさんのことは最後の方に書かれていた気がするけどそんなに印象に残る記述ではなかったような気が…。これは再読せねばと思いました。
それにしても…遠藤周作先生を見る目がちょっと(かなり)変わりましたね。真摯な面、ふざけた面、様々な顔を持つ人だなぁと思ってはいたけれどもこういう一面があったとは。実際の先生はおしゃれで気障な人だったという話は聞いたことはありましたが、こういうところのあった人とは。
これほど情熱的に愛をかき口説き結婚を約束していた男がこうあっさりと別の女性と結婚してしまうとは…。女性にとっては裏切り以外の何物でもない、悲劇でしかないでしょう。

遠藤先生が結核にならなかったら、そうしたら帰国することなく留学生として学業も私生活も本懐を果たせたのだろうか?…でもそうなると、芥川賞を受賞された「白い人」も代表作「沈黙」もその後の様々な作品ももしかすると生まれなかったのではないか、あるいは生まれたにしてもその作風や物語は今残されているものとは全く違うものになったでしょう。
このような人生、こんな運命に翻弄された人間だから生み出せた作品たちなのかもしれないとも思います。この世の残酷さ、人の変わり身の早さをつくづくと味わいました。

著者の方はものすごく恩師を敬愛されていたのだなと感じました。そして遠藤周作という男がきっと嫌いだったんだろうな、とも。
フランソワーズさんの家族との交流の様子や日本とフランスを行き来する中での様子を記述した文章のところどころに著者自身の思いや矜持が垣間見えて、ちょっとうるさく感じられる箇所が散見。
あとがきを読むと出版にあたりエッセイ部分に当たる文を大幅に削られたとのことで、きっとそこももっと濃密な(?)矜持を感じさせる、かつパストル氏を描き出す主題からはあまり関係のない文が多かったんだろうなぁ(失礼!)推察するところ。かなり構成を工夫したのは感じられますがちょっと読みにくかったかな…。力作であるのは間違いないけれども。
遠藤先生の奥様のエッセイも読んだことがありますが本書について奥さまの感想を聞いてみたい、と思ってしまいました。ご存命であられてもきっと叶わぬことですが。
本書に登場する主な関係者が鬼籍に入られている故に今出せた一冊なのでしょう。

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2023年03月20日

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