あらすじ
これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、どんなにねがうかわかりません――生前唯一の童話集『注文の多い料理店』全編と、「雪渡り」「茨海小学校」「なめとこ山の熊」など、地方色の豊かな童話19編を収録。賢治が愛してやまなかった“ドリームランドとしての日本岩手県”の、闊達で果敢な住人たちとまとめて出会える一巻。
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Posted by ブクログ
賢治の独特な感性で、岩手の風景が幻想的なイーハトーブに変貌する。ユーモラス(時には辛辣)な童話を通して、自然との向き合い方について考えさせられる。
自然あっての人だ。そのことを忘れてしまい、横暴を振りかざしてしまっては手痛いしっぺ返しを喰らうやもしれぬ⋯
1,どんぐりと山猫
どんぐり裁判の判決を通して、世の中に人の優劣など無いと説く。
2,狼森と笊森、盗森
大きな岩が語る、森の名前の由来。それはまさに、人が森と共生を試み自然に順応しようとしてきた歴史そのものだった。
今でも人は、森の住人たちに粟餅を上げることが出来ているだろうか⋯
3,注文の多い料理店
小学生ぶりに読んだ。怪しさを積み重ねて積み重ねて⋯見事な怪談だ。大人になって読むと、ふたりの男には賢治なりの文明批判がこめられているのかもしれないなと思った。
4,烏の北斗七星
敵と憎み合い戦わずとも済む世の中を夢想しながら戦う烏たち。矛盾に満ちた世界を烏の兵隊の心情を通して告発する。なんだかハッとさせられる童話であった。
5,水仙月の四日
賢治の独特な世界を堪能した。星や動物、植物と、東北の山々を彩るものたちが、賢治の手にかかると幻想世界の住人に様変わりする。水仙月って、何月なのだろう。
6,山男の四月
山男は妖怪? それとも妖精? 解説によると「遠野物語」にも出て来るらしい。
漢方薬に変えられてしまった山男の脱出劇で、山男が終始ユーモラスで面白い。
7,かしわばやしの夜
柏の木の歌合戦に立ち会うことになった樵の清作。ユーモラスな詩歌の披露の場が清作への批判の場に変化していく。
山の所有者には許可を得ている。
では木には? ⋯考えさせられた。
8,月夜のでんしんばしら
電信柱の軍隊が、軍歌を歌いながら勇ましく行進していく。賢治のユニークな発想が光る。ドッテテドッテテ、ドッテテド⋯♪
耳に残る。巻末には楽譜が載っていた。
9,鹿踊りのはじまり
伝統行事「鹿踊り」の由縁となった出来事がファンタジックに描かれる。落ちている手拭いに怯え、周囲をぐるぐる回る鹿たちがとてもかわいらしくてたまらなかった。
10,雪渡り
四郎とかん子は小狐紺三郎と出会い月夜の幻燈会に招待される。人の子と狐たちの愉快な歌を通した交流がファンタジック。現実でもみんながみんな、こんな風に仲良く出来れば良いのになと思わずにいられない。
11,ざしき童子(ぼっこ)のはなし
座敷童子とはどんな存在かを、4つの挿話を通して紹介する作品である。別の屋敷へ移る際、瞬間移動とかじゃなくて普通に交通手段を利用するのかと驚いた。怖い気もするけれど、会ってみたい気もする。
12,さるのこしかけ
小猿の大将に導かれ栗の木の中の階段を上っていくと、広い草原が現れる。主人公の楢夫くんは、草原で小猿たちにイタズラを仕掛けられる。小猿たちが小さいからとナメて、尊大な態度をとったからだろうか。
14,気のいい火山弾
ベコと呼ばれる石は、その形故に、周りの石からからかわれたりしている。蚊からも嫌味を言われる始末。嘲笑されまくるベゴ石の大逆転が痛快だ。だが、単純な出世物語にあらず。己の役目とは何か、静かに問い掛けて来る。たった数ページにこの深みはすごい。
15,ひかりの素足
幼い兄弟が雪山で遭難するお話。冒頭から不穏な予兆が散りばめられており、読んでいる間ずっと胸がざわざわした。
弟くん(楢夫)の笑顔の意味が冒頭とは全く異なるラストがとても切ない。
16,茨海小学校
狐の小学校の科目は狩猟術(獲物をどう捕るか)や護身術(猟師から如何にして身を守るか)である。護身術か⋯考えさせられる。
17,おきなぐさ
蟻と会話したり、風を読むひばりとお話したりと、想像力の豊かな童話である。
ラストシーンの美しさと儚さと言ったらない。命は美しい、ということだろう。
18,土神ときつね
美しい樺の木を巡る、小汚いが正直な土神と身綺麗だが不正直なきつねの三角関係の顛末が描かれる。とてもストレートな悲劇が訪れる。結末は半ば予想していたものの、なんとも痛ましくて、胸に残る。
19,楢ノ木大学士の野宿
地の文の韻の踏み方がリズミカルで心地良い。リズミカルな文体で、まるで詩だ。どうしてこのような書き方なのだろう。
楢ノ木大学士は宮沢賢治自身が投影されている気がする。鉱物マニアぶりが楽しい。
野宿する楢ノ木大学士の耳に岩石たちのお喋りが聞こえてくる。他にも、恐竜の登場といった幻想描写の面白さが際立ち、読み応え抜群だった。これまでにない読書体験!
20,なめとこ山の熊
猟師小十郎と熊達の、互いを愛しているからこその悲劇⋯。自然と人の関係の複雑さが短い物語の中にこめられていた。