あらすじ
結婚二十年。娘は大学生に育ち、住宅ローンもほぼ完済し、主婦・絵里子の人生は穏やかに収束するはずだった。夫の風俗通い、娘の危険な恋愛、愛した父の不実など、思いがけない家族の秘め事が明らかになるまでは……。妻でも母でもない道が、鮮やかに輝き出す長編小説。解説・島本理生
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Posted by ブクログ
女性は、長らく、自分の人生を自ら選択して歩むことが難しかった。できるよ、と言われても、多くは慣習や前例によって阻まれた。時代が流れて、できる女性とできない女性、しなくてもいい女性とせざるを得ない女性、ときに分断が生まれることもあり、主体的に人生を歩むことに対する否定的ななまなざしはなかなか減少しなかった。
その理由のひとつにロールモデルが少ないことはあるけれど(できる女性とせざるを得ない女性がいるのでいるはいる)、それ以前に自分が置かれてる状態への違和を感じるきっかけがなかなかないことも理由のひとつだと思う。主人公のように、夫の風俗のカードを見つけたりしない限り。また、違和を感じても、自ら選択したいと思える心の準備や選択するぞという意志の確立ができるタイミングも難しい。
いろいろな条件がそろわないと人生を自ら選択することが難しい環境で、それめも自分とは何者かを考え続け、どうやって主人公が「自分の」人生を歩んでいくかという物語でした。
久々の長年の幼なじみが女性をパートナーというエピソードがある。そのカップル2人の出会いエピソードは自然な感じでよかったし、その幼なじみはロールモデルが少なく自分の人生を歩まざるを得ない女性であるのは間違いなかったという意味で、とても重要なキャラクターである。
ただ、自分が同性に惹かれることに気付いたきっかけがアダルトビデオという女性同性愛者は少数派な気がする(いないとは言わないけれど)。あと、最後の方で「籍をいれてちゃんとしたカップルに」みたいなワードも出てくるけれど、まだ日本では同性婚できないので何を指していたのか謎。
パートナーシップ制度は自治体は認めてくれるけど国家レベルでの法的な保証は何もないし、同性婚のできる海外に脱出してその国の人になって婚姻するならギリギリわかるけど、日本に店を構えようとしているなら海外行く気ないと思うのでたぶんあまり正確な表現ではない。養子縁組を指してるのかなと思ったけど、籍は繋がって安定感はあっても表現に合う感じのちゃんとしたカップルと言い切るには代替案。親子になっちゃうし。
なかなか把握も難しいだろうけど、そこだけパラレルワールド化してしまったので最後急にスッと引く部分ができてしまった。主人公に言ってるのでわかりやすさを優先したのかもしれないが、そういうニュアンスに取れなかったので、ちょっと残念。