【感想・ネタバレ】望楼館追想のレビュー

あらすじ

望楼館、かつては田舎の大邸宅だったが、今や積み重なった歳月に埋もれたかのような古い集合住宅。そこに住んでいるのは、自分自身から逃れたいと望む孤独な人間ばかり。テレビドラマの世界に生きる女、汗と涙を流し続ける男、人間であることを忘れ犬のように暮らす女……。語り手であるフランシスは、常に白い手袋をはめ、他人が愛した物を蒐集し、秘密の博物館に展示している。だが、望楼館に新しい住人が入ってきたことで、忘れたいと思っていた彼らの過去が揺り起こされてゆく。鬼才ケアリーのデビュー作にして比類ない傑作、ここに復活!/解説=皆川博子

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Posted by ブクログ

ネタバレ

皆川博子「随筆精華Ⅱ 書物の森への招待」の推薦で興味を持った作家。
結構分厚いので寝かせていたが、思い立って。
(文春文庫「もっと厭な物語」で「私の仕事の邪魔をする隣人たちに関する報告書」既読だが、記憶にない)
章立てが細切れなので、割と読みやすかった。
つっても焦点の当たる人物が8人いるので、拡散し散漫になりがちな印象を、統合しながら読んでいく努力は必要。
と、いっても、全員風変り……はっきり言えば変人なので、たとえばジャン=ピエール・ジュネの「デリカテッセン」みたいな、ラフな楽しみ方でよさそう。
ツイッターで引き合いに出されていたジョン・アーヴィング原作トニー・リチャードソン監督「ホテル・ニューハンプシャー」は未読未見だが、
もっといえばキャサリン・ダン「異形の愛」を挙げてもよさそうなくらい、変人極まってる。
語り手であり(語り手なのに)まったく好人物ではないフランシス・オームにとって、か・な・り都合よく関係を向こうから求めてくるアンナ・タップは、村上春樹の「女性」を思い出さざるを得ないが、……人物造形の描き込みが全員に対して徹底しているので、設定の都合を超えて、迫ってくる。
で、全体として「愛の物語」になっているあたりが、憎い小気味よさ。
こんなに汚くて偏屈な人々が愛おしく感じられる……まさに文芸作品の効能(直接会いたくはない)。
章が進むごとに、失われる事物や人物がハッキリ段階的に明確になるが、それと反比例して、あまり顕示的ではない感じで、「得られる何か」がある。一定の場に集う、数名の人の、エグみと魅力。
これも文芸。
終幕のカタストロフィで、エドガー・アラン・ポーの「アッシャー家の崩壊」を思い出すと同時に、滝本竜彦の原作で大岩ケンヂが漫画化した「NHKにようこそ!」も思い出した(原作未読、アニメ未見)。
著者本人によるイラストも素敵。
同じ名のエドワード・ゴーリーと、似たクセツヨで、どうあっても腹に溜まる。



歳月に埋もれたような古い集合住宅、望楼館。そこに住むのは自分自身から逃れたいと望む孤独な人間ばかり。語り手フランシスは、常に白い手袋をはめ、他人が愛した物を蒐集し、秘密の博物館に展示している。だが望楼館に新しい住人が入ってきたことで、忘れたいと思っていた彼らの過去が揺り起こされていく……。創元文芸文庫翻訳部門の劈頭を飾る鬼才ケアリーの比類ない傑作。訳者あとがき=古屋美登里/解説=皆川博子

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2025年01月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最後まで頑張って読んだが、自分には残念だが全く合わなかった。決して読みずらい文体ではなく、主人公に
ただただ共感できない。だれかの替わりに生きていて、成長過程も複雑で可哀想だとも思うけど、やってることはただの泥棒だし、悪質だと思った。愛されてないから、他人の愛の物品が欲しかったんだろうか?
最後は、望楼館の終わりとともに主人公はどこにでもいる
普通の人になってしまったんだろうか?
好きな人は本当に大好きな本なんだと思う。
自分は多分読み返しはしないが、色々思わされる本だと思った。

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2023年03月03日

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