あらすじ
イギリス南西部の建築事務所で非正規社員として働くレベッカは、幼いときに父親が家を出ていっていしまい、母親に育てられた。父親のレオには20年近く会っていない。ある日、男性記者エリスが取材目的でレオの行方を尋ねてきた。レオはかつてBBCの子ども番組に出演していた人気俳優だったのだ。エリスはレオが現在どこにいるのか見つけられないという。父親など存在しないかのように暮らしてきたレベッカが母親や親戚に聞いても、「ろくな男じゃない」としか教えてもらえず、生死すらわからない。だが、祖母がこっそり一冊の本を渡してくれる。それは、父親が自分のために書いてくれたらしいおとぎ話の本だった。レベッカはエリスの取材に協力しつつ、本を手がかりに父親を探そうとするが……。〈収集家と水の精〉〈世界の果てへの航海〉〈魔女とスフィンクス〉……7つの奇妙なおとぎ話が収められた本が、知らなかった父親の想いを描き出す。本をこよなく愛する著者が贈る、切なくも心温まる家族の物語。
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Posted by ブクログ
かつて子ども向けTV番組『密航者』で名を馳せた父、レオを探す娘レベッカの物語。
間も無く26歳になるレベッカは、幼い頃蒸発してしまったレオについて、彼に関する話題への家族のだんまり、拒絶も手伝い、ほとんど考えることなく過ごしてきた。
あの世間を賑わせた『密航者』ですら観たことがないくらいに。
ところが、とあるネット記者が「回顧記事に憧れのレオを取り上げたい、居所を知らないか」と協力を求めてきたことから、父との鮮やかな日々の思い出が蘇り、俄然自分ごととして父の行方が気になり始める。
家族に当たりをつけても、不穏な空気になるばかり。
そんな中、祖母から手渡された『7つのお話』。
父が失踪の2年後に9歳のレベッカに向けて書いたおとぎ話だという。
失踪した父の足跡を娘が辿る話、よくある話のようで、あれ、意外と思い浮かばない。
7つのおとぎ話が作中作として全文掲載されているも特徴的。
そして、調べを進めるうちにそのおとぎ話が暗示する解釈に胸がキリキリする。
どうにも制御出来ない心と大切なものを失いたくない気持ち。
共感できる部分ばかりではないけど、なんか分かるよその生きづらさ。
なんと言っても18章で語られる父レオ目線での顛末に胸を打たれる。
これが男性作家が書いたものならただの自己陶酔ではと感じてしまうが、女性作家に描かれることにより公平性が増すように思える。
訳はラーラ・プレスコット『あの本は読まれているか』の吉澤康子さん。
ミステリ度は低めだが、渋い良書を訳されますね。
Posted by ブクログ
アマンダ・ブロックのデビュー作。
ミステリに限りなく近い家族小説。
7つのおとぎ話が書かれた絵本を残し、姿を消した父を探す物語。残された娘が、一つ一つのおとぎ話を手がかりに、家族や親戚が絶対に話そうとしない父の姿を追う。
おとぎ話から父へアプローチする過程がミステリ風(それだけではなく、ある一点も非常にミステリな要素あり)。
ただ本質は家族小説。なぜ父は姿を消したのか。父の本当の姿は。この辺りは、ベタといえばベタなのだが、読みたいものを読ませてくれる感じが非常に良い。
心が暖かくなる小説を読みたい時に、ぜひおすすめしたい。
Posted by ブクログ
本の題名が面白そうで手に取った本だったけれど、ただただ面白かった。
祖母から渡された父からの贈り物の物語から、ぼんやりとした記憶の中でしか覚えていない父を探し始めるお話。
父親との再開とその後の話は読みながら泣いてしまった。