【感想・ネタバレ】流星ワゴンのレビュー

あらすじ

死んじゃってもいいかなあ、もう……。38歳・秋。その夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。そして――自分と同い歳の父親に出逢った。時空を超えてワゴンがめぐる、人生の岐路になった場所への旅。やり直しは、叶えられるのか――? 「本の雑誌」年間ベスト1に輝いた傑作。

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「最近、いつ泣きましたか?」――ジメジメした梅雨も終わり、そろそろ疲れも溜まってきたのでは?そんな時は本を読んで泣いて、心をすっきりリフレッシュするのはいかがでしょうか?そこで、悲しいけれど心が暖まるストーリー、重松清の『流星ワゴン』をご紹介します。
リストラ、妻の浮気、息子の家庭内暴力など、度重なる不幸と家庭崩壊によって、死を考えていた主人公の永田一雄。そんな時、1台のワゴン車(流星ワゴン)に乗って、人生の岐路となる場面を旅するという物語。
タイムマシンで時空を巡るといった、非現実的な物語を想像するかもしれませんが、書かれている内容は実にシビアで現実的。流星ワゴンは決して希望に満ち溢れているわけではなく、非情なくらい現実を突きつけてきます。しかし、それでも主人公は問題解決のために必死に体当たりしていく…。そんな姿に「過去は振り返るためにあるのでは無く、前を向くためにあるのだ」と強く教えられたような気がして、何度も涙を流しました。人間とは何か、過去とは何か。心に残る名作です。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

凄くファンタジーなお話なのに、その中で向かい合っていく現実は実にリアルで「サイテー」な惨状。
そのドロドロ感とSF感の混ざり合いが実に面白かった。主人公にとってこの旅は、サイテーな現実でも目を背けず、幸せのために戦い続けるために必要な勇気を授けてくれる旅だったのだ。
関係が修復できずに終わってしまった生(橋本さん親子、主人公と父)もあり、主人公もこれから家族を幸せに導けるかは分からない、それが現実的なのだが、その中にも小さな救い、それも現実を生きる私達からしても「ギリギリありそうな」救いを見い出せる点が、ファンタジーなのにリアルなこの物語の魅力に思えた。

橋本さん親子は走り続けているのかな、でも2人で成仏できていたらそれも良いなと思う。

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2025年07月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

一家離散とリストラに遭った永田一雄はもう死んでもいいかな、と思っていた。
終電の終わった最寄駅のバス停のベンチで、不思議なワインレッドのオデッセイに乗ることになる。

広島の故郷では折り合いの悪かった父親が63歳でガンを患い亡くなろうとしている。
一雄は大会社の社長である父親がくれるお車代目当てに月2~3回の帰郷を繰り返していた。

オデッセイの運転手は5年前に交通事故で亡くなった父子。
一雄を人生のターニングポイント「たいせつな場所」へ導いていく。

一回目のダイブは妻がテレクラにハマり出し、息子が受験のストレスを抱え出した1年前。一家離散の未来を知っている一雄だが、過去を変えることはできない。
家族に不正解の行動をとり、過去をなぞるだけのダイブに一雄はストレスを隠せない。
唯一過去と違うのは、自分の今の年齢と同じ父親と出会い、一緒に過去を見たこと。

日中は過去世界に、夜はオデッセイの父子と過ごすことになる。
一雄は過去をダイブすることに疲れ、オデッセイの父親橋本義明に恨み言を話すが、義明は「過去を何も知れない方が悔しい」と言う。
それには賛同しきれない一雄だったが、父親とまた会えることを一縷の望みに過去世界にまた戻っていく。

今度は近くの町の、観覧車がランドマークのショッピングモールだった。
クリスマス前の、息子の広樹の模試の後。
また過去を繰り返しそうになる一雄の前にチュウさんが現れる。
チュウさんがいる間は過去に縛られず動ける仕様のようだ。
チュウさんと、嫌いなはずの記念写真を撮ってから観覧車に乗ることに。
観覧車から見下ろすと頭を抱える健太が見える。
ストレスは相当量に達しているようだ。
受験に疲れた広樹に、受験を諦めさせ未来を変えようとするが失敗する。
反面チュウさんと広樹の出会いがあり、祖父と孫としては折り合いが悪かった二人も「黒ひげ危機一髪」をやったりして仲良くなっていく。
その後、恩師の葬式に出ると言った美代子を駅に迎えに行き、不器用ながらもカマをかけるが躱され未来は変わらず。

一雄はまた疲れて夜にオデッセイに戻るのだった。
義明は健太を母校に連れていく。
他に遊んでいた場所を知らないので、遊ばせる時はいつも学校だった。
そこで一雄は健太に成仏するために事故現場に行こうと説得を試みる。
健太と義明は義理の父子関係だった。健太は自分が心を開けなかったから義明は何とか仲良くなろうと、ドライブに行くため頑張ったのだと。
それが事故に繋がってしまったことに罪悪感を感じていた。
父子はお互いの成仏を祈っており、自分の幸せよりもそれを優先している状態だった。

オデッセイに戻るとそこにはチュウさんの姿が。
余命いくばくもないチュウさんを一雄の冒険に付いてこさせるため、義明が無理にオデッセイに乗せたのだった。
自分の死を受け入れられないチュウさんと一雄は、また過去世界にダイブしていく。

今度は地下鉄乃木坂のホームだった。
チュウさんと揉み合いになった健太も一緒に来てしまった。
一雄はリストラに合わないように立ち回るためにここに来たのではないか?と考えるが、健太に「それだともっと後の時間軸に来てるんじゃない?」との指摘に我に返り、地元へ向かう。
最寄駅に着いた時、チュウさんの不思議な能力で近くの公園でペットボトルを改造パチンコで撃ち抜いている広樹と出会う。
現実世界では広樹が中学受験に失敗していじめられたと思っていたが、実際いじめは始まっており、広樹は誰にもそれを言えず既に孤独を抱えていた。
一雄は受験しなくても良い、と伝えるが広樹の受験したい意志は固く、未来は変わらない。

その夜一雄は美代子に自分が全てを知っていることを打ち明ける。
美代子は狼狽しながらも夫の言葉を半ば受け入れ、自分の夫以外を求めてしまう性癖を告白する。

健太は偶然オデッセイの外に出られたことに喜び、母親に会いに行くが、母親は再婚し新しい子供を授かっていた。
オデッセイに戻った橋本父子は事故現場に行き、健太を成仏させることを決意する。
が、健太は血の繋がっていない父親と離れがたく、それは実現しなかった。

一雄はチュウさんと最後に散歩しながら話す。
お互いの気持ちが知れた二人に後悔はない。
連れションしたのを最後に、一雄は途中下車する。

一雄は「サイテーな現実」に戻った。
依然現実は「黒ひげ危機一髪」と「観覧車でのツーショット写真」以外変わらなかったが、全てを受け入れた一雄は壊れた家族と共に再び人生を歩きだしたのだった。

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同い年の父親に出会うという設定は最高。
これは自分の身にも起きてほしい奇跡だ!
チュウさんが広島方言なのが更に泣ける設定だった。

過去世界を旅して「未来を変えよう」という話ではなく「未来を受け容れよう」という物語なのが深い。

流星ワゴンが「流れ星のように願い事を叶えてくれそうなファミリーカー」というのがオシャレ。オデッセイ=冒険っていうのもオシャレ。

これは偶然だったが、作品が2000年代初期で、携帯電話やゲームの描写が懐かしいのもノスタルジーを掻き立てた。

親子の関わり方って難しいよな!って子供いないのに思えるほど息子に対する親としての接し方が正しい。それに対して反発する子供の心理も正しい。どちらかに偏って描いてしまうと簡単な問題になってしまうところを、絶妙なバランスが表現されていた。

奥さんの性癖は異常ではあったが、愛情がなくなったわけではなかったのでギリギリ受け容れられなくもない、これまた絶妙なラインだったと思う。

橋本父子もストーリーテラーとして優秀。
本人達にもドラマがあって、成仏するかしないかのところは感動してしまった。

チュウさんも良い昭和の親父。平成も令和も関係ない。良いお父さんなんだと思った。自分の父親とも重なる部分があり、感情移入できた。
一雄が嫌いになるのもわかるし、橋本さんが認めるのも理解できる。派手に人間関係を広げて財を成すのに、死に直面するとみっともなく取り乱す、こういう大人になりたい。
でも一雄や義明みたいに、そこまでガッツリいけず小さくまとまって最低な結末を迎えるみっともなさにも共感した。

一雄と美代子の官能小説みたいなシーンが度々出てきて女性には勧めづらいところが少し残念。「このエロゲー、エロシーン必要?」っていう感覚に似ている。

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2025年07月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

過去に行っても行動を変えられず過去をなぞることしか出来ない前半。少しずつ行動を変えられたのに未来に影響することはない後半。
「あのときこうしていれば」「こんな言葉をかけておけば」そう思えるのは全て今になってから。
融通のきかないやり直しに主人公がもどかしくなって嫌気をさす。そんな融通のきかなさが「そりゃそうだよな」と思えて、たまらなく好きだった。過去をやりなおしたから未来がハッピーエンドに変わるわけじゃなくて、今を生きなおしてこの先を変えていこうとする終わり方が凄くよかったと思う。
健太くんがお母さんに会いに行って、自分が亡くなった後再婚して子どもがいると知って、砂場で泣く姿にもらい泣きした。中学生の時に読んだときは「そういうこともあるよな」とあまり印象に残っていない部分だったけれど、親になった今まだ幼い子どもの健太くんを思って泣けた。

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2025年05月15日

ネタバレ 購入済み

息子を父親のみなさんにおすすめ

父親と息子の物語。私自身が息子をもつ父親であり、共感を持って拝読しました。
自分と親父の関係、自分と息子の関係、この物語と同じ道を辿ると思うと少し寂しくなります。
父親が息子とどう接するべきか、答えのないこの問いに作者なりの答えがあります。それを読み思うのは、父親と息子は上下関係ではなく、寄り添う関係がいい。友達とも違う、ただ見守るのとも違う。言うは易し、行うは難し。

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2022年01月28日

ネタバレ 購入済み

ドラマをみて読んだのですが、

本作も凄く素敵でした。
ドラマの配役のイメージが、先についていたので、
ドラマを基軸に読みきった形になりますが、
違和感なく読みきれました。
あぁーこう終わるのかと切ない気持ちで終わりましたが、これも1つかと。
ドラマはどうなるのか!?楽しみてす。

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2015年01月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

死の際で、変えられない過去の分岐点を廻る、そんのな救いのない展開で進んでいく本作でしたが、最期には展望が見える形で結ばれました。
近くにいても見えない家族間での思いやすれ違いが描写されています。相手を思うからこその行動が相手を傷つける⋯自分が主人公の立場であるなら、どうできるのだろうか考えながら読んでしまいました。
自分の子供と同じ歳だった頃の自分を重ねる、親の視点になってから再び読んでみたい作品です。

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2025年04月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

バックトゥザフューチャーみたいなワゴン。
未来は変えられないのが異なるところか。
ただあの時を振り返ることによって今の感じ方が変わる。

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2025年11月21日

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