あらすじ
武士から菓子職人に転身した変わり種の主、治兵衛。父を助ける出戻り娘、お永。看板娘の孫、お君。
親子三代で切り盛りする江戸麹町の評判の菓子舗「南星屋」には、味と人情に惹かれやって来るお客が列をなす。
麹町を大火が襲った夜以来、姿を見せなくなった気のいい渡り中間を案ずる一家だったが、ある日、思わぬところから消息が届き……。
「誰だって、石の衣は着ているもんさ。中の黒い餡を、見せねえようにな」
やさしい甘みで包む親子の情、夫婦の機微。
諸国の銘菓と人のいとなみを味わう直木賞作家の大人気シリーズ最新刊!
〈収録作〉
饅頭くらべ
母子草
肉桂餅
初恋饅頭
うさぎ玉ほろほろ
石衣
願い笹
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
江戸の菓子屋、南星屋シリーズ3作目。安定の面白さだった。
この物語の魅力は、なんといっても登場人物達にあると思う。武家出身ながら、菓子屋を営む治兵衛、出戻り娘で、治兵衛の菓子帳を絵本がわりに育ったお永、元気いっぱいの看板娘である孫のお君、治兵衛の弟で、甘いものに目がない高名な僧侶、石海。そして、前作から、南星屋の職人に加わった雲平。みんな、懸命に働き、日々を楽しみ、困っている人がいれば寄り添って力になる。
こういう生き方幸せだなあ、と思わせてくれる。
もう一つの魅力は、もちろん和菓子!諸国を旅して様々な土地の菓子を覚え、試行錯誤して作る治兵衛。現代ではいくらでもできるお取り寄せを、江戸の町で人々に提供してるんだな。物語の中に入って、南星屋に行きたいと何度思ったことか。
今回は、渡り中間の鹿蔵を巡る話がメイン。1話目で起承、最後の2話で転結。南星屋が押し込み強盗に襲われるも、からくも難を逃れる‥。生活に根ざした素朴な話が多い中で、あまりにきな臭い話でドキドキしてしまった。鹿蔵には、また登場してほしい。
お君の見合い話は、もったいなかった!前のような、かわいそうな感じではないのが救い。お君が南星屋から出てしまうのは寂しいけど、この話の寿七はお似合いだと思ったのに‥。でも、寿七と兄の、お互いを思う様はほっこりする。治兵衛が自分の兄を重ね合わせたのも、じんと来た。
そして、私の一押しキャラ、石海の子供の頃の話。甘酸っぱい‥とまでいかなくても、豪快な人物の、意外な繊細さを見せられてなんか嬉しかった。予想外のオチも笑える。
気になる事が一つ。表紙のお菓子は、表題でもある、うさぎ玉だよね?と思い読み進め、なんか違うような??と、さらに読んでいき、これ、石衣かなあ??と思った。どっちだろう?普通は、表題のお菓子を表紙に持ってくるよね。むむ‥。
久々に、「まるまるの毬」と「亥子ころころ」を再読しようかなと思う。続編も待ってる!