【感想・ネタバレ】一瞬の風になれ 第一部 イチニツイテのレビュー

あらすじ

春野台高校陸上部、1年、神谷新二。スポーツ・テストで感じたあの疾走感……ただ、走りたい。天才的なスプリンター、幼なじみの連と入ったこの部活。すげえ走りを俺にもいつか。デビュー戦はもうすぐだ。「おまえらが競うようになったら、ウチはすげえチームになるよ」。青春陸上小説、第1部、スタート! 2006年本の雑誌が選ぶノンジャンルベスト10 第1位。(講談社文庫)

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学生生活の全てを賭けていた。そんなことのひとつふたつ、ありませんでしたか?「最近あの頃みたいに熱くなってないな…」というあなたにぜひオススメしたい一冊です。きっと熱いモノがジワジワくるはず。自分もまた頑張ろうって背中を押してもらえます。
陸上競技に学生生活の全てを賭けて成長していく高校生たちを見ているうちに、思わず「あの頃」の自分を思い出す。信じあえる仲間、気になる異性、天才的な才能を持つライバル、自分の夢、挫折、諦められない情熱。なんだかもう全てがひたすらに青春!です。
学生時代に何かに打ち込んだ経験のある人なら絶対に共感してしまうはず。読後の爽やか感は120%!爽やかすぎて直視できない!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

一瞬の風になれ第1巻を読んで込み上げてくる「なんだろう、この気持ち」という涙は、きっと新二の中にあるコンプレックスと葛藤があまりにも生々しく、そしてまっすぐだからだと思う。

サッカーで挫折し、兄という“才能”の象徴を身近に持つ境遇。親や周囲の何気ない期待は、悪意がなくても重くのしかかる。兄と比べられることへの劣等感、でも本当は認められたいという思い。その矛盾した感情が、新二の中でずっと渦巻いている。その姿が痛いほど伝わってきて、胸が締めつけられる。

そして陸上部という部活の場。そこには記録という残酷な現実があり、タイムは言い訳を許さない。スタート前の緊張、バトンを渡す一瞬の重み。あの瞬間にすべてを懸けるからこそ、読者も息を止めるような感覚になる。

でも物語がただ苦しいだけで終わらないのは、友情の存在があるからだ。連という才能ある存在への嫉妬と尊敬、仲間としての信頼。リレーは一人では成立しない。誰かのために走り、誰かが自分のために走る。その関係性が、孤独だった新二を少しずつ変えていく。

また、先輩や先生の存在も大きい。厳しい言葉の裏にある信頼、さりげない助言。大人たちは完璧ではないけれど、彼らなりに本気で向き合っている。その姿が、青春という不安定な時間を支えている。

青春って、きっとこういうものなんだと思う。
何者でもない自分と向き合い、比べられ、傷つき、それでも前に進もうとする時間。

涙が溢れたのは、新二の物語が自分の過去や現在のどこかと重なったからじゃないだろうか。
「速くなりたい」という叫びは、「認められたい」「自分になりたい」という願いと同じだから。

あの涙は、きっと悔しさだけじゃない。
誰かが本気で何かに向き合う姿を見たときにしか流れない、まっすぐな感情だと思う。

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2026年03月01日

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