あらすじ
争乱渦巻く戦国時代、宣教師を送りとどけるために渡来した外国の船員を語り手とし、争乱のさ中にあっても、純粋にこの世の道理を求め、自己に課した掟に一貫して忠実であろうとする“尾張の大殿(シニョーレ)”織田信長の心と行動を描く。ゆたかな想像力と抑制のきいたストイックな文体で信長一代の栄華を鮮やかに定着させ、生の高貴さを追究した長編。文部省芸術選奨新人賞を受けた力作。(解説・饗庭孝男)
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Posted by ブクログ
理にかなう事を成し遂げる為に、自分自身をもまた理通りに思考し、孤独が刻み込まれているかのような織田信長。この様な視点はやはりヨーロッパ的なのだろう。翻訳本のような導入も、これを色濃くしている。
日本人の情に流されていくあいまいさからでは、理解しがたい信長だが、自分が良しと思える基準、掟を生を捧げて貫き通した大殿として描いている。とても哲学的と思える。
現実にかえって、自分の中での理、と考えるとやはり定まらない。それだけに宗教の力が怖い。自分の道理とその宗教が一致してしまえば、生をも捧げることにもなりかねない人々の誕生、と派生して考えてしまった。