あらすじ
「何もかもが面倒くさかった。生きていること自体が面倒くさかったが、自分で死ぬのも面倒くさかった。だったら、もう病院なんか行かずに、がん再発で死ねばいいんじゃないかなとも思うが、正直言ってそれが一番恐かった。矛盾している。私は矛盾している自分に疲れ果てた。」(本文より)乳ガンの手術以来、25歳の春香は、周囲に気遣われても、ひたすらかったるい自分を持て余し……〈働かないこと〉をめぐる珠玉の5短篇。絶大な支持を得る山本文緒の、直木賞受賞作!
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Posted by ブクログ
出てくる主人公が無職で、イヤな人、めんどくさい人ばかりなのにどこか親近感を覚える。やらないけど思ってることなんだろうな。いきなり終わる作品が多く読みやすい。何度も読んでるけど、やっぱり山本文緒最高だ。設定が古いのに今でも通じるいやらしさ。
最初のプラナリアが一番好き。乳がんで片切除、再建したが他人からいい加減元気になって働けという圧を感じ不満。だってその後も不調に苦しんでるのにどうして私だけ…という表現が本当にうまい。そりゃそうだ、他人から癌サバイバーを誇ってるように思われたって自分自身は辛いんだもんね。その気持ちの表し方は
自転しながら公転する
でも感じた。目に見えない不調を抱える人には刺さるなあ。
ハッピーな結末でないのがリアルでいい。
Posted by ブクログ
モヤっとするけど、なんか爽快。ほぼ全てがそんな終わり方で、不思議な気持ちに包まれた。個人的には最後の話が1番ハッキリとしたハッピーな終わり方なのかなと思った。好きなお話だった。長年の主婦がパートに出る話では、娘から色々言われるシーンで、自分も考えさせられるものがあった…
Posted by ブクログ
山本さんはどこか闇もあるし言いようのないままならない感情をいつも言語化してくれて直木賞受賞作の中でも好きだった。自分が無職に近いから余計に。一、二、四作目が特にすき。一作目の老人が「出口を教えて」というのを主人公が最後に言うのが上手い!主役以外もすごく効果がある。
角田光代さんとかの解説欲しかったなー!
『ナイフを持たされてケーキを半分に切りなさいと言われた子供のように、彼が必死に自分の欲と得を考える顔をした。きっと私も長い間こんな顔をしていたのだろうと思った。』
・プラナリア
乳がんになってから働く気が起きない。生まれ変わったらプラナリアになりたい。病院で知り合い雇ってくれた美人が乳がんとプラナリアの本を送ってきて、無断欠勤の末辞める。プラナリアになりたいという人生の非生産な投げ出しを根本的に理解せず、じゃあ生態を知るべきだと言う美人の怖さ。
・ネイキッド
離婚し夫の会社を出て無職。前の部下と出会い好かれるが結局疎遠に。友人の子供が「友達がいて楽しい」から学校へ行くと言われ泣いてしまう。
・どこかではないここ
夫のリストラを機に夜パートに出て昼は母の相手をし義父の病院へ通う。娘から本気で家を出たいと告げられ、息子には自立しろと殴る。
・囚われ人のジレンマ
博士の彼、社会人の私。父は過保護。プロポーズされるが気は進まないし浮気もする。囚人のジレンマの様に彼と私は大きなケーキ(責任)を譲り合う。
・あいあるあした
離婚し脱サラして居酒屋を始める。定期的に娘の髪を切る。客の手相観の女に失踪され探すと、好きだけど結婚か仕事を押し付けるなと言われる。