【感想・ネタバレ】ザ・ロイヤルファミリー(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

お前に一つだけ伝えておく。絶対に俺を裏切るな――。父を亡くし、空虚な心を持て余した税理士の栗須栄治はビギナーズラックで当てた馬券を縁に、人材派遣会社「ロイヤルヒューマン」のワンマン社長・山王耕造の秘書として働くことに。競馬に熱中し、〈ロイヤル〉の名を冠した馬の勝利を求める山王と共に有馬記念を目指し……。馬主一家の波瀾に満ちた20年間を描く長編。山本周五郎賞受賞作!(解説・今野敏)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かった。本編も文句なしだったが、最後に掲載されているロイヤルファミリーの競走成績を見ているだけで思わず目頭が熱くなった。

欲を言えばテーマから外れているのも承知の上で、本編で描かれなかった最後の一年を読んでみたかった気持ちもある。
大阪と春天といった春のG1戦線を経ての凱旋門挑戦への決意。フランス・ロンシャン競馬場で行われるフォワ賞での敗北と、日本競馬史上初となる凱旋門賞の制覇。
そして日本帰国後にソーパフェクトと繰り広げられた秋のG1戦線、ジャパンカップを経た有馬記念のラストラン。

正直に言えば、とても読みたい。読みたいが、あの競走成績を見るだけでそういった各エピソードが想起できた時点で、省いたことは正解なのかもしれない。書いていても蛇足だろうから。

それでも、やはりもう少しだけ見たかったし浸っていたかった。
ロイヤルホープとロイヤルファミリー、その子々孫々に連なる継承の話に。

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2025年12月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

競馬知識はないが、それでもあまりあるくらい感動した。
馬の世にのめり込んだ山王社長、ワンマン企業で一代を築いたがその人生は決して順風満帆ではない。その中でも馬主を続けていくのは馬の向こうにいる人を見て、想いを継承していくことに価値を見出していたからであった。
前半のロイヤルホープも決して栄華な成績とはいえないが、熱狂的なファンがおり、信頼できるチームもいて、確かに次世代へのバトンを渡している。
後半は耕一が馬主を引き継ぎ、かつて山王のライバル関係にあった椎名のその息子とは、別の関係性で切磋琢磨しながら時代を築いていく。山王社長は、栗栖に「絶対俺を裏切るな」というほど、人に裏切られてきた人生であったが、最後には信頼できる人間と後継者がいて、幸せな最期だったのではないだろうか。
耕一やロイヤルファミリーも、重い重圧を抱えながらも有馬優勝を目指した。山王と一緒に住んではいなかったものの、山王が病で倒れた後のわずかな時間だけで、そのDNAは確かに耕一に継承されていた。
ときにはチームとの軋轢もありながらも、最後の有馬では最高の仕上がりと最高のレースを見せる。
最後に勝ったのは、山王の種馬で椎名が馬主、騎手は佐木という一時代前の巧者の繋がりであり、簡単には引き渡さないぞという執念がまた、簡単には継承させないという力強さを感じさせる。
最後の、ロイヤルファミリーの戦績を見てまた気持ちが高まる。その後のG1レースで複数優勝するという、圧倒的に父を超えた成績を残しているのだ。この1ページでまた胸が熱くなり、読者にこの一年を想像させる非常に感慨深い作品だった。

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2025年12月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

馬主の秘書目線で送られる競馬ストーリー。

本書を通じて考えさせられるのは、人生とは総じて思い通りにいかず、儘ならぬものだということだ。

ロイヤルホープという馬に、上手くいかぬ不器用な性格や人生を託し、有馬記念に挑むも結果は惜敗。非嫡出子の息子が相続した、ロイヤルファミリーは父の仇ともいえるレースに同じ産駒と激走の末、敗北。

最終的にロイヤルファミリーは名馬となるようだが、その部分について描いていないのもこの本の魅力。

作中に何度か出てくる「いつの時代も、息子は父を超えていかなければいけないもの」という心意気は学ぶものがある。

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2025年11月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

主人公視点によるデスマス調の淡々とした文章に品を感じる。
それが盛り上がりの妨げになるように思えるところ、作中何度も泣けるシーンがある。
最終ページに載っているロイヤルファミリーの戦歴等の記録表を見るだけで目頭が熱くなる。本編で言及のなかった最後のレースの天気。
テーマは継承。主人公の役割はその架け渡し役。
レースの描写中は早く決着がついてくれとドキドキしながら読んだ。なかなか勝たせてくれなかったのもまた良い。
久しぶりに見つけたずっと本棚に置いてきたい小説。

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2025年11月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

馬主と馬に焦点を当て、馬主の世界の独特な熱や世界観、人生を描ききった作品でした。涙を流すことはなかったですが、物語の視点として進むクリスさんの喜怒哀楽はまったく同じ解像度で感じられるくらい、登場人物がよく書かれています。早見和真のまなざしが注がれていると言えばいいのでしょうか笑 ロイヤルホープ、ロイヤルファミリーを勝たせない所には驚きましたが、勝負の世界はリアルということでしょうか。 間隔を空けて読んでしまいましたが、またまとめて読んでみたいと思える作品でした。

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2025年12月05日

匿名

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ザ・ロイヤルファミリー

テレビドラマ化されると知って、久々に小説を読みましたが、文章も読みやすく、競馬に詳しくない私でも最後まで飽きずに読めました。競馬に関しては、説明というよりは簡単なガイド的なものなので、逆により興味を持てました。順風満帆なサクセスストーリーではないのに、読み終えた後は、何となく競馬場の緑の芝生の爽やかな風が吹いてくるような後味の良さがあります。ドロドロした人間模様は疲れるから敬遠したい方におすすめです。取り敢えず私は、競馬場に行って美しい競走馬をこの目で見たくなりました。

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2025年08月24日

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