【感想・ネタバレ】ヴェネツィアの宿のレビュー

あらすじ

ヴェネツィアのフェニーチェ劇場からオペラアリアが聴こえた夜に亡き父を思い出す表題作、フランスに留学した時に同室だったドイツ人の友人と30年ぶりに再会する「カティアが歩いた道」。人生の途上に現われて、また消えていった人々と織りなした様々なエピソードを美しい名文で綴る、どこか懐かしい物語12篇。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

目次
・ヴェネツィアの宿
・夏の終わり
・寄宿学校
・カラが咲く庭
・夜半のうた声
・大聖堂まで
・レーニ街の家
・白い方丈
・カティアが歩いた道
・旅のむこう
・アスフォデロの野をわたって
・オリエント・エクスプレス

須賀敦子は14歳の時「たしかに自分はふたりいる」「見ている自分と、それを思い出す自分と」と思ったのだそうだ。
若いころ彼女の文章を読んだとき、社会のしがらみから離れて自分の来し方を考えるような年になったら、こんな文章を書けるようになりたい、と思った。
しかし今、そんな年齢になってみれば、私にはそんな才能もなければ、振り返ってみれば転換点だったと思えるような経験もなかったのである。

そうか、14歳の時にはすでに見ていた景色が違ったのか。

その国に住んで暮らしていても、どこか旅人のようにしばられない心。
決して順調とばかりは言えなかったはずの日本での家庭の状況や、海外での苦労もあるはずなのに、振り回されることなく自分のペースで悩んだり行動したりする自由さに憧れた。
私が振り回されてばかりだったからかもしれないけれど。

そして全編を通して感じられる静謐。
ああ、そういう大人になりたかったのに。

それとは別に、結婚して初めて日本に帰国したとき、父親が新婚旅行として九州旅行をプレゼントしてくれたこと。
別府から阿蘇を抜け、熊本経由でフェリーに乗って長崎。
このルート、いいなあ。
行ってみたいなあ、私も。

0
2025年09月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「遠い朝の本達」と同様、著者の少女時代や父に対する反抗と愛情、母への想いなど日本や日本人に関する随筆が半分を占める。特にこの本は父の生き様や、著者が奔走の末になんとか修復にこぎつけた父母の関係がはっきりと描かれており、驚くことも多かった。いままでの彼女の文章からは、そのような家族のもめ事は感じ取れなかったからである。若き日の彼女は、密かに心痛めていた両親の関係にも、自身の内側の問題同様、真摯に向き合い行動してきたのだなぁ。著者の常に精神的に学問的に(?)向上し続けようとするストイックな姿勢と、それ故に日本でもヨーロッパでもがき苦しむ内面の遍歴をたどることができる。それがとてもうれしい。このような文章を残してくれた著者に感謝せずにいられない。特に日本の女性たちは彼女の文章を読んで勇気づけられることが多々あるのではないかと考えるのだが。

0
2012年05月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

1929年生まれの著者がミラノでの生活から思い出した過去の日々。それはイタリア各地の旅行記であり、そして幼い日々の父と母の確執の思い出に繋がる。幼少期は関西の芦屋・御影が舞台になり、また母から聞き憧れていたという伯父が住んでいた青島(チンタオ)のエキゾチックな情景。私自身の過去とも重なり興味深く読むことができました。ペルージャ、ソレント、スコットランドのエジンバラなども登場し、旅行記といいながら、著者の精神史を思い起こさせる秀作だと思いました。

0
2013年08月24日

「エッセイ・紀行」ランキング