あらすじ
「子ども、もらってくれませんか?」――彼氏の郁也に呼び出された薫は、その隣に座る見知らぬ女性からそう言われた。薫とセックスレスだった郁也は、大学時代の同級生に金を払ってセックスしていたという。唐突な提案に戸惑う薫だったが、故郷の家族を喜ばせるために子どもをもらおうかと思案して……。昔飼っていた犬を愛していたように、薫は無条件に人を愛せるのか。第43回すばる文学賞受賞作。「おいしいごはんが食べられますように」で第167回芥川賞を受賞した高瀬隼子のデビュー作!
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Posted by ブクログ
特別にグロテスクな場面があるわけではないのだが、愛や性の生々しさにじかに触れさせられるような感覚があり、どこか直視することに抵抗がある作品だった。
読みやすく、物語に引き込まれるし、質の高い作品だとは思う。
うまく感想を書けないので単行本の帯のコピーを転載しておく。
「どうしたら、証明できるんだろう。犬を愛していると確信する、あの強さで愛しているのだと——。」
「わたしたちがセックスを手放したあとに、やってきた『彼の子ども」。それでも二人でいつづけられるのだろうか、互いの身体を重ねることなしに……。」
「小説でしか表現できない、思考と文体を駆使しなければならない『複雑』さが、この作品の一番いいところだ。高橋源一郎(作家)」
Posted by ブクログ
女の人には確かに子供を作る、作らない、産むか産まないかなど選択肢が多い。
まあそもそも相手がいなければこんな選択肢はないけども。
私も子供欲しいと思ったことがないし、だから作る行為も必要ないと思うから共感できた。
最後は大体想像はできた。そりゃ、食べたいもの飲みたいものいろいろ我慢して痛めて産んだんだからそうなるよね。
逆に子供をかわいいと思えないのに主人公が他人の子供を育てられるのかってところもある。自分の子供だったら変わると思うけど。
だからこの結末でよかったと思う。
Posted by ブクログ
たしかに人間の子供より犬ほうが絶対とてつもなく可愛い。ただ、まだ見ぬ我が子の可愛さは計り知れない。
彼氏の浮気相手の作った子供を育てて欲しいとお願いされ、浮気相手と何度も会いやり取りを交わし、仕事や彼氏との日々をこなす中で子供を育てる決心をつけたが結局浮気相手は自分で産み育てると決める。彼氏に父親になって欲しいと浮気相手は頼んだが、彼氏は浮気相手と子供を選んだのか、私を選んだのかは明かされていない。
Posted by ブクログ
自分が女性だったらまた受け取り方が変わるのだろうかと感じた作品。
私自身、著者と出身が非常に近く、同じく上京して生活しているため、故郷で感じる漠然とした閉塞感やそれでも変わらない家族への感情、変わってしまうことへのやるせなさなど読んでいて苦しい部分もあったがそれもこの著者に望むものでもある。
この作品の終わらせ方については確かにその後どうなったのかなどのモヤモヤとした感情も少なからずあるが、
『小説を終わらせる作者の手つきというものはどんな場合でも邪魔に感じられるものなのだ。』
という奥泉光さんの解説は非常に秀逸であると感じた。
タイトルの「犬のかたちをしているもの」、これは主人公の愛の形なのかなぁ。話の主旨とは違うかもしれないけどミナシロさん最後ちゃんと離婚してくれたのかしら、そこだけめっちゃ気になる。
Posted by ブクログ
◾️record memo
時々偶然にわたしの涙が視界に入った人も、ごく自然に見なかったことにして立ち去る。そこには「見ちゃった、めんどくさそう、逃げよう」なんていう思考はなくて、ただ「見た、去る」だけがある。興味を持つ前にただ風景として受け流していく。
ああ、ここは東京だ。これだからわたしは、この街にいられるんだ。
「なんていうか、例えば、わたし昼休みはだいたい職場の自分の席で、コンビニのお弁当とかパンとか食べながら、パソコンをいじってるんですけど、ヤフーニュースを開いて眺めてたら、記事のアクセスランキングなんかに、だいたい毎日、どこかで女性が性暴力にあったって報じてるんですよね。そういうの見ると、あ、気持ち悪いな、って思って、気分の問題じゃなくて本当に気持ちが悪くなって、その時食べてるパンとか、飲み込めなくなって、ティッシュに吐き出しちゃうんですよね」
「うん、まあ、分かってはいるんです、わたしも、男の人みんながそうじゃないって」
そう、分かってる。暴力の正反対にあるセックスもあるんだって。愛し合っている二人が愛を確かめたり深めたりするための優しいセックスがあるんだって。
「それとこれとは違うって、分かってるんですけど」
そのセックスとこのセックスは違う。でも、何が違うんだろう。
動きがゆっくりで優しいとか、嫌がったらすぐに止めてくれるとか、好きだよと言いながらやるだとか、行為を終えた後も優しいだとか、そういうことかな。でも、それでも受け入れたくなかったら、どうしたらいい。
気持ちよくってたまらないといったあの息遣い。耳にかかる生あったかい息。普段自然に暮らしていたら決して他人の手がふれることなんてない場所に置かれた手。それが全部しんどかったら。
高校生の時は、とにかくこの町から出て行きたくて仕方なかった。いきぐるしいのは全部、自分が子どもで、ここが田舎だからって思っていた。だけど東京でもしんどい。大人になってもしんどい。
Posted by ブクログ
何となく結末を予想してたら予想通りになって
あ、やっぱりねって思ったけど普通にミナシロさんの自分勝手な行動に腹が立った。
郁也の“薫はおれがいないと生きていけないっていう話をしているんだよ”のセリフが主人公の事を理解しているように見えて全く理解してなくて、寧ろ下に見てる感があってさらにモヤついた。
だけど、作品自体はとても好みだし、高瀬さんの言葉の表現が面白くて一気に読んだ。
Posted by ブクログ
高瀬さんの「おいしいものが〜」に衝撃を受けたので、次に手に取った。
主人公は、卵巣の病気を持ちセックスも好きでなく、長く恋愛が続かない。
そんな自分でも愛して受け入れてくれていると思っていた彼氏、に子供ができた。その彼氏の子を宿った見知らぬ女から、その子供をもらってほしいと提案を受ける。
主人公の動揺をしていたものの受け入れる様子に、もっと感情的になってもおかしくないのでは?と疑問でしかなかった。
ラストは相手の女から出産後に自分の子として育てたいと言われるが、産んだ後に自分が育てたいと心変わりするなんて容易に想像できるのでは?作中の人物はみな想像力が足りない、浅はかすぎると思ってしまった。
誰かに相談できて、第三者から意見がもらえたら、こんな非現実的な提案は最初から受け入れられなかったのではないか。
このあとどんな選択をとるのか気になった。