あらすじ
格別の思いがこもる、作家今村翔吾の原点!
明和七年、太平の世となって久しい江戸・日本橋で寺子屋の師匠をつとめる坂入十蔵は、かつては凄腕と怖れられた公儀の隠密だった。
学問は苦手ながら剣術に秀でた才を持つ下級武士の息子・鉄之助、浪費癖のある呉服問屋の息子・吉太郎、極度のあがり症ながら手先の器用な大工の息子・源也など、さまざまな個性の筆子たちに寄りそう日々を送っていたが、藩の派閥争いに巻き込まれた筆子の一人、加賀藩士の娘・千織を助ける際、元忍びという自身の素性を明かすことになる。
年が明け、筆子たちのお伊勢参りに同道する十蔵の元に、将軍暗殺を企図する忍びの一団「宵闇」が公儀隠密をも狙っているという報せが届く。十蔵は、離縁していた妻・睦月の身にも危険が及ぶことを知って妻の里へ向かった。
哀しみに満ちた妻との出会いと別れ、筆子たちとの絆の美しさ、そして手に汗握る結末――「本書は無冠だが、無冠の傑作として永く文学史に残るであろう」そう文芸評論家・縄田一男氏が絶賛し、作家自身が「最も自分自身を剥き出しにして書いたかもしれない」と語った、今村翔吾の原点ともいえる青春時代小説の傑作!
※この作品は単行本版『てらこや青義堂 師匠、走る』として配信されていた作品の文庫本版です。
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Posted by ブクログ
序盤は、元公儀隠密の寺子屋師匠の十蔵と、子供達、奥様が主人公となる連作短編のよう。
中盤からは、お伊勢参りの途中、
将軍暗殺を狙う忍びが、、!
痛感エンタメ!
今回も面白かったです!
キュンとくるラブもらあれば、人情もある。アクションあり、どうやって逃げ伸びるか?のミステリーあり、
盛りだくさんで楽しめました
子供達がでてくる感じは、
昔観た、僕らの7日間戦争を思い出しました!がんばれ〜と応援したくなりました♪
加賀藩と聞けば、ぼろ鳶のあの方を思い出してしまいます
禅助さんのいい男っぷり、千織ちゃんが惚れるのも納得。強さと優しさ、俳優さんでは真田ひろゆきを思い浮かべながら読みました。
ラスト,追ってが迫る中、命懸けの攻防、十蔵さんは勿論のこと、禅助さん、よかった!
「鉄之介,責めることよりも、赦すことのほうがよっぽど難しい。
俺はお前にはそれが出来ると信じている。」
「人は思いを伝えるべき時に伝えねばならぬ」
Posted by ブクログ
凄腕の忍びが寺子屋を開き筆子に教鞭を振るう。
こんな紹介では収まらない魅力あふれる登場人物たちの信条や絆が心を揺さぶる物語。
今村翔吾さんの作品は本当に人々が生き生きとしている。愛する者のために戦う姿はイクサガミにも通ずるものがある。
Posted by ブクログ
今村翔吾初期の傑作。最近の諸作と比べると粗い部分や、構成の無理っぽいところはあるものの、初期にこれだけの小説を書けているというのが凄い。
江戸時代を舞台にした青春学園忍術活劇。こう書けばわかる通りのネタてんこ盛り、剣の立会有り、忍術合戦あり、ミステリーあり、市井人情あり、学園友情恋バナあり、で読んでて飽きない。
さらっと読みたい時に最適な1冊。今村翔吾入門書としても悪くはないが、ここから入ると最近の作品は歴史小説(時代小説ではないという意味で)の比重が高く思えるかも
Posted by ブクログ
寺子屋の師匠になった凄腕の元公儀隠密の坂入十蔵と個性豊かな筆子たち。
互いを思い合う人情が交錯し、手練れの忍びたちも絡むワクワクハラハラ展開がおもしろくない筈がない。
「いかなる子であろうとも見捨てはしない」の誓いの元、十蔵が教え子のために走り寄り添う気持ちを問題児たちがなんだかんだで受け止めていて胸熱。
命を奪ってきた暗い過去や大切な者たちを奪われた凄惨な過去…それぞれ苦しみを背負う忍びたちもまた魅力だった。
十蔵と対しながら、心を通わせた筆子の窮地に颯爽と現れるニヒルで絢爛な火遁使い、鬼火の禅助が印象に残る。