【感想・ネタバレ】私が語りはじめた彼は(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

私は、彼の何を知っているというのか? 彼は私に何を求めていたのだろう? 大学教授・村川融をめぐる、女、男、妻、息子、娘――それぞれに闇をかかえた「私」は、何かを強く求め続けていた。だが、それは愛というようなものだったのか……。「私」は、彼の中に何を見ていたのか。迷える男女の人恋しい孤独をみつめて、恋愛関係、家族関係の危うさをあぶりだす、著者会心の連作長編。(解説・金原瑞人)

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Posted by ブクログ

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澄んだ人間を描くことが多い三浦しをんさんの著作の中では珍しく、男女の愛憎をはじめとした人間関係の軋轢、葛藤が数多く描かれた作品。 舟を編むや月魚などのような学術分野、職にフォーカスする作品ではなく、人の心の揺れを細かく描いている。

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2024年11月30日

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ネタバレ

事実はひとつ、真実はひとつじゃない。一人一人の人生のドラマに目を向けたい。
1人の男性村川を取り巻く、周囲の人、妻、浮気相手の旦那、再婚相手、実息子、再婚後娘、等それぞれ目線の物語。取り巻く女性達は村川の不貞を知りながらも、それを理解した上でも愛してしまう。
村川のような男性は、常に自分が人生の主役。「女のために全てを投げ出す自分の役柄に夢中」と奥さんが彼をいうように。生涯自分が一番幸せな道を選び続けていくことは、どこか羨ましいと思いながらもやはりできないなと思った。だからこそ皆村川のような生き方を批判しながらも心のどこかで羨ましい思いがあり、引き込まれる女性、振り回される男性がいるのか。
しをんさんの作品はどれも文体、表現に引き込まれるものがある。単なる簡単な「辛い」「悲しい」の言葉では完成されない。しをんさんの文章だからこそ、重いけれども引き込まれてしまう作品ができるのだと思った。

◼️印象深い文章、表現メモ
いい加減ですが、不真面目ではないのです。
責任を負うことはしないけれど、義務は己に課します。エゴイストですがロマンチストでもあります。
無邪気に愛を集めて喜び、冷え冷えとした魂を腹に隠しながら何食わぬ顔顔をで生きる
私のうちにある汚いものひどいものを突きつけられる
屈辱を闘志にかえ、どんな手段を使っても女を排除する
愛の言葉を麻酔に捕食されることを是とする。女のために全てを捨てる役柄に夢中
事実はひとつ。真実は複数ある
夫をいつ撮られるのか、猜疑心の塊になって暮らす日々
理解がないところに愛は生まれない。
だが確かに愛があると思っていた場所に後から理解の及ばない空白が出陣したらどうしたらいい?
目には目を、歯に歯にをというのは、強者の理屈だ。
変わってしまうことではなく、変化に対応する意志を無くしてしまう日がくることが

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2020年05月05日

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ネタバレ

2005年(第2回)。9位。
かっこいいわけでもない大学の先生がモテる。女性がいっぱい寄ってきて、妻子を捨てて、子持ちの女性と新家庭を気づく。そして誰も幸せにならなかった。
を、先生に関わってしまった人々の視点から見る小説。捨てられた妻子も、新家庭の誰も幸せじゃない。唯一、先生の助手は、それではいけないと気づく。
結婚して二人でいると閉塞する。子供作って家族作らないと閉塞する。あーあーあーあーあー
な感じで、物語を楽しむというより、作者の言葉(うんちく)に膝を打つ小説。そして助手は気づいてよかったと思う。

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2022年12月12日

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ネタバレ

この本を読んだときに唐突に思い出したのは、「桐島、部活やめるってよ」だった。物語の中心である桐島、(私が語りはじめた彼はの場合は村川融)について、周りの登場人物たちの描写からしかわからず、その主観は語られることなく、物語が終わっていく。
それと独特な表現。何かを表現するときの、〜のような〜といったような個性的な表現がとても気になった。三浦しをんさんは女性だそうで、男性視点からの物語だったが、男性の自惚れている様子や自尊心高めな様子、ああ、女性からみた男性はこういう風に考えられている、そしてそれは合っている、と思わざるを得なかった。

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2022年05月27日

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ネタバレ

いつ、「彼」が出てくるのかしら?と
私の中で「彼」がだんだん形成されつつあったのに、終いまでいってしまった。
「彼」自体は、語ることのないままで終えて、座りの悪さを感じた。まるで、御斎の食事のような。

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2021年08月03日

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