【感想・ネタバレ】窓辺の愛書家のレビュー

あらすじ

高齢者向け共同住宅に住む90歳のペギーが死んだ。彼女は推理小説の生き字引のような人物で、“殺人コンサルタント”と名乗り、多くの作家の執筆に協力していた。死因は心臓発作だったが、ペギーの介護士ナタルカはその死に不審を抱き、刑事ハービンダーに相談しつつ、友人二人と真相を探りはじめる。しかしナタルカたちがペギーの部屋を調べていると、覆面の人物が銃を手にして入ってきて、一冊の推理小説を奪って消えた。謎の人物は誰で、なぜそんな不可解な行動を? 『見知らぬ人』の著者が贈る、本や出版界をテーマにした傑作謎解きミステリ!/解説=杉江松恋

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

ナタルカと愉快な仲間たち~
とでも表現できそうな、ミステリだけれど
真犯人は誰?とマジで深入りしてしまうほんでした。
中心人物、ペギー・スミスは冒頭で死んでしまうし(有意義なメッセージを残し)次々と、登場人物は殺されてゆくし、それでいて、
本に対する人々の礼を尽くしたマナーなども十分感じられるし。本読み人のためのミステリ-という感慨深い一時をもてました。

一作目とはかなり異なる印象だったけどこちらも楽しい読書タイムでした。

0
2022年10月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

高齢者用の共同住宅に住んでいたペギーが死んだ。
発見したのは通いの介護士のナタルカ。
90歳という年齢で心臓疾患を抱えていたのだから、死因が心臓発作であることに問題はないはずだった。
しかし彼女は海の見える窓辺の椅子にいつも通り座ったまま亡くなったのだ。
目の前のテーブルには薬があったにもかかわらず

彼女は同じフロアに住むペギーの友人だったエドウィンと、ペギーの行きつけのカフェの店長であるベネディクトと3人で、事件の真相を探る。
元修道士のベネディクトはミステリが好きで、観察力や推理力に優れている。
エドウィンはBBCで働いていたこともあり、孤独な生活を送っている割にはコミュニケーション能力が高く、現実対応力もある。

ナタルカはウクライナ人。
数学が得意だったので、イギリスの大学に留学し、一瞬だけイギリス人と結婚したことにより、イギリスへの永住権を持つ。
最低賃金の保証のない介護士をしているが、実は財テクの特技を持つ。

これだけだと普通のミステリなのだけど、亡くなった(殺されたのかどうかも不明)ペギーが、殺人コンサルタントとして多くのミステリ作家にアドバイスをしていたことから、作家や編集者、ブックブロガーやイベントなど、現在のイギリスの出版事情も垣間見える。

そして、なぜペギーは殺人コンサルタントと名乗るようなことができたのか。
そこにはヨーロッパの、主に東欧の歴史が大きな影を落とすことになる。

この本が書かれたのは2020年だが、ウクライナ人はイギリス人にとって縁起の良くない民族と思われている節がある。
ナイチンゲールの時代からずっと戦時中であるというクリミア半島。
まあ、少数民族に対するマジョリティーの偏見というのは、刑事のハービンダー(イギリス生まれのインド人)も常に感じているところだが。

ナタルカの弟は反ロシア行動をとったということで、ロシアの捕虜になっていたことがあとでわかる。
トランプ大統領の口利きの捕虜交換で解放されて、政治難民としてイギリスへ来た。
祖国に帰らないのかと聞かれて、彼は答える。
「いつか、いつかは帰るよ。ロシア人がいなくなったら」

ポーランドも大きなカギだ。
ポーランド人の介護士。
第二次世界大戦中ポーランドにいた人物も。
ポーランドの「女学生暗殺者」。

日本のマスコミだけではわからない、世界の今と過去がこの本には書かれている。
「人は本のなかで世界を旅することができる」
前作『見知らぬ人』の時も思ったけれど、作者は本当に読書が好きなんだということが、今作では随所に現れていて楽しかった。

前作の主人公であるクレアがちょっとだけ出てきて、「ウィルキー・コリンズもディケンズもミステリを書いたことがあるのよ」という。
中世の文学が好きなクレアはミステリなんて読まないでしょという、ハービンダーの問いに対する答え。
「え?読むんだ!」と読者に思わせたかったのだろうけれど、私は逆にウィルキー・コリンズってミステリ以外も書いてたんだ!と驚いた。
ディケンズの遺作『エドウィン・ドルードの謎』はミステリだが未完なので、知らずに読んで衝撃を受けた。全集に入れるなよ!

タイトルの『窓辺の愛書家』もとても良い。
原題は『The Postscript Murders」という味気ないもの。
年を取ったら海の見える家(サ高住でも老人ホームでも)で、窓辺の椅子に座りながら膝の上にはいつも本。
テーブルの上にはクロスワードパズル。
そして海を眺めながら息を引き取ることが出来たらいいなあ。

0
2023年01月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

好きなところ
主人公のハービンダーが、時に脇役になったり、傍観者になる(でしゃばらない!頭も良い!)
登場人物が魅力的(シリーズ通して)
いつも犬が大活躍

ここがあんまり、、、なところ
前作ですごく好きだったゴシックミステリ作中作をなくしてしまった
推理小説として淡白

前作の作中作『見知らぬ人』がすごく好きだったから、作中作のタイトルでシリーズ化するのかと思ってた…。ホロヴィッツが今現在その手法でシリーズ化してるからなのか…。でもゴシックミステリの短編っていう点で差別化出来てるし、個人的に本当に好きだったから勿体ない。『断食して神に感謝せよ』とか概要だけでも面白そうだったし、タイトルも良いのに。
あと、ロシア・ウクライナ情勢後に読んだから、背景理解がすごく自然に出来た。

0
2024年09月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

高齢者向け共同住宅”シービュー・コート”に住む本好きの老婦人ペギー・スミスが亡くなった。

第一発見者のウクライナ出身介護者ナタルカは、ペギーの名刺に記されていた”殺人コンサルタント”の肩書、ペギーが保有していた本の数多くに彼女への献辞が添えられていることに不審な臭いをかぎ取り、ハービンダー部長刑事(前作『見知らぬ人』でも事件を解決に導いた、同性愛者で実家暮らしのシーク教徒女性刑事)に相談に行く。
決しておざなりに扱われたわけではないけれど、ナタルカは好奇心の膨らみを抑えきれず、ペギーの友人で75歳を越える老紳士エドウィンと、元修道士という異例の経歴を持つ皆の行きつけのコーヒーハウスのオーナー、ベネディクトの3人で素人探偵調査に乗り出す。

前作は作中作とその中で記されるキーワードが牽引する良作ビブリオミステリだったが、本作はまた別の角度からのビブリオミステリ。
ただ、むしろビブリオというよりも、どちらかというとダニエル・フリードマンだったり、リチャード・オスマンのような壮年活躍ミステリ色の方が濃いかな。

全く違う様相のミステリをまさかのハービンダー刑事のシリーズものとして仕立ててくるとはね。
もはやハービンダーシリーズといいつつ、主役はその他事件関係者が務めるというように感じた。

2021年度CWAゴールドダガー賞最終候補作とのこと。
受賞したのはクリス・ウィタカーの『We begin at the end(邦題:我ら闇より天を見る)』。
今後の活躍も期待したい。

0
2023年02月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ハービンダー・カーシリーズ2作目。
重苦しく暗い雰囲気だった1作目からかなり文章の雰囲気が変わった感じ。
ミステリーとしてはちょっと中途半端な気もするが、前作よりはこちらの方が良かった。

0
2022年12月04日

匿名

ネタバレ

動機と手段はこれでいいの?

第12章のタイトルに「動機と手段」とあり、作中人物も「動機と手段が大切」というようなことを言っていたように思いますが、残念ながらこの作品の殺人の「動機と手段」にはほとんど説得力がありません。 被害者に抵抗されずにインスリン注射を打つなんてことができるのですか? 前もって睡眠薬でも使わなければ。 殺人犯人の一人の動機は「自分の盗作を隠蔽するため」だそうですが、盗作のネタ元の読者全員を殺害しなければ発覚は完全には防げないでしょう。 その他ミステリの基本要件が十分満たされていない作品でした。 人種・性的嗜好・宗教の多様性等の今風の味付けも、それらの問題への真摯な対応というより読者層に迎合して(編集担当の入れ智恵?)TV/映画化でも狙っているように見えて好感が持てませんでした。この程度の作品の感想に熱心になれず、またこれ以上時間を使いたくないのでこれでおしまいとします。 正月休みをこの読書に使って(自業自得ですが)後悔してます。 ※人物キャラ設定や人間関係の描写も既視感横溢!! 

0
2023年01月05日

「小説」ランキング