あらすじ
海の向こうでは、戦争で毎日人が死んでいる。
でも遠くない将来日本からは、戦争を経験した人がいなくなる。
まだ若い僕たちは、この事実とどう向き合えばいいのだろう。
「僕は祖父の戦争体験を捏造したことがある」
戦時中のモノクロ写真をカラーにして掲載した『時をかける色彩』という写真集が刊行された。祖父母ですら戦争を知らない二十代の書店員がそれを店頭に並べたことで、やがて世界が変わり始める。保健室登校の中学生、ワーカホリックのテレビマン、アメリカから来た少年と、福島で生まれ育った高校生。遠い昔の話のはずだった「戦争」を近くに感じたとき、彼らの心は少しずつ動き出す。
平和を祈る気持ちが、小さな奇跡を呼ぶ。
読み終えたとき、少しだけ世界が優しく見える感動の青春小説。
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
『今なお、繰り返される戦争、忘れてはならない…』
戦時中のモノクロ写真をカラー化した写真集「時をかける色彩」をめぐる4編の連作短編集。本作のテーマは【戦争】だけど、【戦略的保健室登校同盟】にすべて持っていかれた!共通点は、様々な視点で考えることの大切さ、かな?
Posted by ブクログ
題名とは逆に、
モノクロ写真に急に色が付いてきて、写真の中の人やモノが動き出すイメージ。
中編が4つあって、それぞれが2層構造。
全編、『時をかける色彩』(戦時中のモノクロ写真に色を付けた写真集)で貫かれていて、
全編、現代を生きている人がメインだが、各編の最後にちょっとだけ、戦時中を生きた人と、その心の中を登場させている。
「ある晴れた夏の朝」(小手鞠るいさん)と同じような読後感だが、構造が分かりやすい分、小手鞠さんの作品の方が僕にはよく伝わってきた。戦争を体験していない若い世代の、戦争の是非についての洞察が深いように感じた。もちろん、額賀さんのこの作品もとてもいい。
Posted by ブクログ
若いから、知らないから綺麗事で済ませて良いのか?
第二次世界大戦中のモノクロ写真をカラーにした本を中心に、それぞれの人達の視点からの戦争への想いを綴ったオムニバス短編集。
色々刺さりましたが、一番はラストの「remember」。
アメリカと日本のミックスの少年・レオ。親の仕事の都合で日本の高校へ編入したが、日本人は自己主張しすぎるのを嫌うから、おバカなフリをするってのは何となく解る気がしました。そして、原爆についてのアメリカと日本の解釈の違い。歴史はそれぞれの国の視点で大きく変わるってのも痛感させられました。
クラスメイトから浮いていた桜太は福島の原発によって移住した一人。その話もとても刺さるものがありました。
読み終えた後、ふと考えてしまう、そんな一冊でした。