あらすじ
「裏ノーベル賞」の異名を持つ「イグ・ノーベル賞」の人気が高まっている。本書は1991年の創設以来、「ハトを訓練してピカソとモネの絵を区別させることに成功」「犬語翻訳機<バウリンガル>の開発」「迷路を解く粘菌の研究」「ジャイアントパンダの排泄物から採取したバクテリアで、生ゴミを90パーセント以上削減できることを実証」(2009年生物学賞)などの功績で、19年間で14件を受賞し、文字通りイグ・ノーベル賞で世界をリードする日本人受賞者の取材をもとに、「まず人を笑わせ、そして考えさせる」研究を徹底分析。たかがオモシロ科学と笑うなかれ。科学とは本来自由であり、「笑える」ものなのだ!
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志村幸雄
1935年北海道生まれ。技術ジャーナリスト。工業調査会相談役。早稲田大学教育学部卒業。工業調査会で半導体技術専門誌の編集に携わったのち、同社取締役編集部長、専務、社長、会長を経て2008年より現職。この間、産業技術審議会専門委員など政府委員、学協会役員を歴任。また早稲田大学理工学部、麗澤大学国際経済学部、名古屋大学経済学部の非常勤講師を歴任、現在は金沢大学共通教育機構で「ベンチャービジネス論」を講じる
第3章 ピカソとモネの作品を識別するハト
第4章 イヌとの対話を実現した犬語翻訳機「バウリンガル」
第5章 兼六園の銅像がハトに嫌われる理由の化学的考察
第6章 人々が互いに寛容になることを教えたカラオケ発明
第7章 バニラの芳香成分「バニリン」を牛糞から抽出
第8章 粘菌による迷路の最短経路の解法
実際、この賞の本領は、万事に胸を張ったり背伸びをしないことにある。一般的に言って賞と名の付くものは、優れたものを賞賛し、劣ったものを無視する。しかし、「我々を取り囲む環境はすべて秩序だっているわけではない。イグ・ノーベル賞は、そのような『混乱』こそ重要」と考えて、物事の良し悪しや善悪の区別がつきにくい業績をあえて選び出し、授賞の対象にしている向きがある。
イグ・ノーベル賞委員会は当年度の受賞者が決まると、通常Eメールないし電話で受賞者にその旨を知らせ、受賞者の意思の確認や授賞式への出席の応諾を求めている。日本人受賞者が出た場合は、選考委員と知り合いの日本人を介して、その種の打診を行うケースもあるようだ。
その内容は、 メイのごとき頭の固い人間が科学者の真剣さを判定すべきでないし、科学の精神を踏みにじっているとの理由で業績を無視すべきでもない。 イグ・ノーベル賞は科学を嘲笑しているのではなく、科学が持つ楽しさを笑うものなのだ。 純粋に「真剣」な科学者による仕事は、テレビや大衆紙によって 揶揄 されたにしても、長期的にその価値が損なわれるものではない。かりに世間の注目を集めたら、科学者は自らの仕事に資金を提供する価値のあることを説明すべきである。 メイはイグ・ノーベル賞委員会が受賞者の同意をあらかじめ得るべきだと主張しているようだが、昨年、英国の科学者は事前に同意したうえで受賞しており、その指摘は当を得ていない、の四点に集約される。
ベルクソンも指摘しているように、古来多くの人々(主として哲学者だが)が、人間を「笑うことを心得ている動物」と定義してきた。しかしそれは同時に「人を笑わせる動物」と定義することにもなったとし、理由として「たとい他の或る動物なりあるいは何か無生物なりが首尾よく笑わせえたとしても、それは人間との類似によって、人間がそれに刻みつけたしるしによって、あるいは人間がそれについてした使用によってであるからだ」(以上、岩波文庫版)と説明している。表現がいささか回りくどいが、イグ・ノーベル賞受賞の基本要件である「まず人を笑わせる」ことに着目しているのは注目してよい。
実験の結果は、被験者の多くがおもしろいと感じる冗談に対して、おもしろくないと思う被験者が何人かいた。教授らは、これらの被験者に「論理テスト」も行ったうえで、「推論能力の劣る被験者ほど思い込みが強く、自分の能力を過大評価する」という結論を導き出している。この種の人間には、ユーモアのセンスもなければ、笑いもない、と言いたげである。
渡辺氏は、以上のような実験結果を踏まえながら、「われわれが抽象画の鑑賞でおかすような誤ちをハトがおかし、われわれが具象画で気がつくようなことにハトが気づいているとすれば、ハトはわれわれと同様に具象画ではそのなかに現実の世界を見ているのだろう」と結論づける。そこには比較認知科学に長年取り組んできた研究者の自信と満足感が顔をのぞかせる。
「ミスター半導体」「光通信の父」などと呼ばれる元東北大学総長の西澤潤一氏は、小学生の頃から絵を描くのが好きで、今でも国際会議などで外国へ出かけたときには必ず近くの美術館へ足を運ぶ。なかでもセザンヌ、ルノアール、モネ、マチス、ピカソ、ルオーの絵には目がない。
実際、ある研究者が日本の大学生に人間の知能を一〇〇とした場合の動物の頭の良さを評価してもらったところ、チンパンジーは七五点、ニホンザルは七〇点という結果が出た。イルカ、イヌは六〇点台、ウマ、ネコ、クジラは五〇点台にランクされている。一見してニホンザルが高得点にすぎるとの見方もあろうが、身近でサルに接している日本人にとっては、人間がこの動物から進化したと考えても、それほど不思議に思えないかもしれない。「欧米でたいへん抵抗を受けた進化論が日本ですんなり受け入れられた理由の一つは、日本にニホンザルがいたからかもしれない」と渡辺氏は笑う。
早速、開発部隊が組織され、「ドリトル・プロジェクト」と名づけられた。もちろん、米国の児童文学者ヒュー・ロフティングの名作『ドリトル先生物語』に 因んだものだ。ドリトル先生の愛情は人間に対してよりも動物に対して向けられ、鳥類、魚類、そして貝類までも話し相手にしてしまう。井伏鱒二氏の名訳と相まって、それら一連の作品は日本でもロングセラーになっている。
金沢大学で一〇年以上前から続けている「コーヒー学講義」は同大学きっての名物講義で、受講希望の学生が殺到する。「コーヒーはあらゆる学問につながる」と説く氏の持論が学生たちの心をとらえるのだろう。
最後に話を鳥除け合金に戻すと、この種の合金を使ったネットやチェーンなどが製品化できれば、ごみ集積場や集合住宅などの糞害防止や、停電の原因となる電柱へのカラスの営巣防止に役立てられるかもしれない、と広瀬氏は考えている。理論物理から実験物理に転じた研究者らしく、「楽しい研究と同時に、考えさせる研究、役に立つ研究を目指したい」というのが本音のようだ。
そのカラオケの発明者、井上大佑氏が二〇〇四年にイグ・ノーベル平和賞を受賞した。なぜ平和賞なのかと言えば、「カラオケを発明し、人々が互いに寛容になることを教えた功績」(公式発表)が大きいからだという。
「私は小さい頃から、自分の気になったことを徹底的に考え抜くのが好きだった。WHAT、WHYのような問いから論理的な結論を導き出すプロセス自体に、とても魅力を感じている。研究者の生活に満足しているのも、『自分の頭で考える』のが仕事だからなのだろう」
まさに「たかが粘菌、されど粘菌」と言うにふさわしいが、冒頭に紹介した南方熊楠がこの粘菌に魅せられた理由の第一は、それが動物と植物との境界領域にあることであった。粘菌は、かつては菌類に分類され、今日では原生生物という別の一群に分類されているが、南方は粘菌の変形体が固形体を採って食べるところを観察して、粘菌が植物ではないこと、原生動物に分類すべきことを強く主張した。
「妻が発するオナラの臭いにじっと耐えているうちに、何とかしなければならないと決心しました」――バック・ウェイマー(「オナラの臭いを除去する炭素フィルター付きパンツを発明した偉業」で二〇〇一年生物学賞を受賞)
博士は、一九九一年、京都賞受賞のため来日した際、紅葉が燃える京都・嵐山の光景を目のあたりにして、「石が落ちればニュートンの古典力学の法則、木の葉がひらひら舞い落ちればカオス」と名言を吐いた。博士は以前、自らの論文で「ブラジルの一羽のチョウの羽ばたきが、巡りめぐってテキサスに竜巻を起こすかもしれない」と書き、これを「バタフライ効果」と名づけているが、嵐山の木の葉にもそれと同じことを読み取ったのだろう。
Posted by ブクログ
完全な文系人間ですが、初心者向け科学本は読んでてわくわくします。イグ・ノーベル賞って単なるパロディだと思っていたけど、みんな真面目に研究しているんだなあ。自分の興味と信念を貫く姿勢を尊敬します。そして、やっぱり人生に「笑い」って大切だと思った一冊。
Posted by ブクログ
イグノーベル賞の成り立ちや本質について分かりやすく、おもしろく書かれています。
イグノーベル賞はただのおもしろ科学…と認識してましたが「笑えて、かつ考えさせられる」という深い意味もあり、科学としての真面目な一面も。
個人的にカラオケを発明してイグノーベル平和賞を受賞した井上大佑氏に関する話が興味深かったです。
これを読むともっとイグノーベル賞について知りたくなります!
Posted by ブクログ
人々を笑わせ、考えさせてくれる研究に対して贈られる「イグ・ノーベル賞」の日本人受賞者を中心に紹介した本。 イグ・ノーベル賞の存在は知っていましたが、どのような研究が受賞しているのかを知りたくて読んでみました。個人的にはバニリンの話が面白かったです。
研究者のたゆまぬ努力と奇想天外な発想が、どのような形であれ評価されることは素晴らしいことだと思いました。マスコミは科学の賞としてノーベル賞を毎年大きく取り上げていますが、このような賞をもっと取り上げることで科学研究の面白さを世間に広めてほしいと感じました。
Posted by ブクログ
<目次>
第1部 「笑う科学」の奇抜な司祭者
第1章 この特異なイグ・ノーベル賞
第2章 イグ・ノーベル賞に見る「パロディ性」と「科学性」
第2部 イグ・ノーベル賞大国を築いた日本人受賞者
第3章 ピカソとモネの作品を識別するハト
第4章 犬との対話を実現した犬語翻訳機「バウリンガル」
第5章 兼六園の銅像がハトに嫌われる理由の化学的考察
第6章 人々が互いに寛容になることを教えたカラオケ発明
第7章 バニラの芳香成分「バニリン」を牛糞から抽出
第8章 粘菌による迷路の最短経路の解法
第3部 「笑う科学」に未来あれ
第9章 イグ・ノーベル賞獲得のための実践的方法論
第10章 これだけある「日本発」イグ・ノーベル賞候補
<内容>
バカバカしくもまじめな研究(時には批判的に)に対し、与えられるイグ・ノーベル賞。以外にも日本は多くの受賞歴がある。この本は、そうしたイグ・ノーベル賞のすべてを紹介したもの(2009年のもの)。バウリンガルや兼六園の銅像はよく知っていたが、ほかにもあったのだ。ふざけているようで、真面目に紹介しているところが良い。
Posted by ブクログ
イグ・ノーベル賞のことって知っているようでちっとも知らない。そんな賞かなと思うんだけど、それをもう少しだけ詳しく知ることができる本。
内容的に硬めではあるけど、イグ・ノーベル賞の性質もあり、非常に楽しく読み進めることができる。
一つだけ気になったのは、最後の受賞して欲しい科学者の話かな。この内容は、単なる作者の主観を紹介しているだけなので、個人的に不要だと思う。
そんなことはさておき、発刊後も毎年日本人受賞者が現れていることを考えると、本賞と日本人の相性は非常に良いのでは? これからも面白い研究を知ることができれば楽しそうだよね。と思わせてくれる一冊である。
Posted by ブクログ
廣瀬教授の授業で名前だけ知っていたイグ・ノーベル賞について詳しく知れた。
カラオケを発明した井上さんの無欲な態度が素晴らしいと思う。
突飛なアイディアは世界を救う気がする。
昔の未来像がだんだんと現実のものになっていって、今から100年後を想像しようとしてもなかなか100年前のそれのようには浮かばない。これは何故か。
科学は敷居が高くみえるが、親近感を持てるテーマから入っていくのは大切だと感じる。本の解説も分かり易かった。
「みんなに喜ばれるようなものになって、よかった」
「まず人を笑わせ、そして考えさせる」
Posted by ブクログ
理科音痴の私でも、興味深く読めました。理科音痴だからこそ楽しめたというか。
イグ・ノーベル賞の存在は、バウリンガルが受賞したのをきっかけに知ったのですが、その当時は、バウリンガルがおもちゃだというのと、ノーベル賞のパロディだというので、何じゃそらーwwwと思っていたのですが。
良いとか悪いとか、役に立つ、立たないではなく、「まず人を笑わせ、そして考えさせる」、「真似が出来ない、またするべきでない」科学について真面目に笑わせる賞です。科学に大事なのは権威ではないという点でも、笑えると思います。
バウリンガル以外の日本人受賞者も紹介されてましたが、「バニラの芳香成分『バニリン』を牛糞から抽出」が衝撃的でした。受賞者の山本麻由さんは、授賞式で牛糞由来とおぼしきバニラアイスを審査員に振る舞って会場を沸かせたそうです(笑)
実は、主催者が地元の最高のアイスクリーム店から調達した、牛糞とは無縁の特製品だったそうですが。
授賞式も楽しそうですね。
ノーベル賞受賞者とプロのオペラ歌手が競演する科学を題材にしたミニ・オペラとか、本物のノーベル賞受賞者とのデートをかけたコンテストとか。受賞者は、ノーベル賞と違って賞金も交通費も出ないけど、楽しんでるんじゃないでしょうか。見てみたいー(≧∇≦)
Posted by ブクログ
イグ・ノーベル賞について書かれた本。
おれはこの本を読むまでイグ・ノーベル賞って名前は知ってたけど、実際にどんなものかは知らなかった。
イグ・ノーベル賞とは、ノーベル賞のパロディーとして生まれた賞。選考基準は「まず人を笑わせ、そして考えさせる」こと。この基準からもわかるように、ユーモアに満ち溢れてる。
過去の受賞研究が「落下するバタートーストの力学的分析」「ハトによるピカソとモネの作品の識別」「性交中の男女の生殖器と性的に興奮した女性のMRI撮影」とかだからね。
でも、それぞれの研究が、取っ掛かりは奇妙キテレツで、なんでそんなこと調べるのかわからんようなものなんだけど、その成果はなにかに応用できたり、たしかに考えさせられたりする。
この賞がもっとメジャーになれば、科学好きの人も増えるんじゃないかな。
とにかく、とっても面白く読めて、勉強にもなった。
イグ・ノーベル賞の授賞式に一度参加してみたいなぁ。
Posted by ブクログ
裏ノーベル賞というか、ノーベル賞のパロディであるイグ・ノーベル賞についての新書。
アカデミー賞に対するラジー賞とは違ってイグ・ノーベル賞はマイナス評価が基準ではないこと、ノーベル賞授賞者も選考委員に加わっていること他から、ともすればノーベル賞授賞者からもうらやましがられるというイグ・ノーベル賞。
対象となるのは、「まず人を笑わせ、そして考えさせる」研究。
日本人もかなり授賞者がいて、日本人すげー!と思いました。
Posted by ブクログ
素材自体が面白いので面白くないわけがない。
とはいえ、第一章と二章のイグノーベル賞の歴史背景や運営実態などはもっとコンパクトにまとめて、さらに具体的な受賞例に紙幅をさいてほしいかった。
日本人の受賞者が多いのでも有名なイグノーベル賞は真面目な研究の裏に潜む、意外性、パロディ性、バカバカしさにフォーカスした「笑える科学賞」です。
では、面白かった内容を挙げていきます。
まず、受賞者の受賞スピーチは60秒以内と決まっており、超えるとステージ脇の8歳の少女(Miss Sweetie Poo)が「Please stop.I’m bored.もうやめて、飽きちゃった」と繰り返し発言する。
以下は、日本人の受賞研究例。
《ピカソとモネを識別するハト》
ミスター半導体の西澤潤一氏に指摘されるまで、パリのマルモッタン美術館でモネの「睡蓮」が上下逆にずっと展示されていることに気が付かなかった話もハトの認識能力を笑えない例として登場。
また、人間の知能を100とした場合、他の動物の知能は、チンパンジー75、ニホンザル70、イルカや犬は60、馬、ねこ、クジラは50という話も。ハトは不明だが帰巣本能は侮れない。
《バウリンガル》
犬語翻訳機はタカラトミーが2002年14,800円で発売。その後、ミャウリンガルも開発したが(犬の感情表現は悲しい、フラストレーション、威嚇、要求、楽しい、自己表現の6種に分類)、猫は満足、求愛、威嚇、要求、喜び、自己表現に分類したのはやはり猫同士の求愛行動は無視できなかったらしい。
《兼六園の銅像が綺麗な理由》
上野にある西郷どんの銅像がハトの糞まみれになっているのと対称的に兼六園の日本武尊の像が綺麗なのは、ヒ素と鉛の含有量が通常の5倍以上だったためだが、その理由は毒性よりも電磁波による(らしい)。
その後、日本武尊像に、はぐれガラスが一羽だけ止まっていたという情報が寄せられた。キョエちゃんかズン吉なのかは定かではない。
《カラオケ》
発明したのは井上大佑氏だが、特許を取らなかった。(特許登録していれば、年間100億円の特許料が見込めた)
《粘菌による迷路の最短経路の解法》
中垣俊之氏の2008年受賞のこの研究内容は素晴らしい。細胞レベルの材料が原始的な知性を持ちうることを示し、カーナビなどそれ以外の応用範囲も広い。
また、ドクター中松氏も34年間の食事を毎日カメラで撮影し続けたことで2005年「栄養学賞」受賞。
その他、温水洗浄便座、回転寿司、樹研工業の100万分の1グラムの歯車(小さすぎて用途はまだないという無用の用だが、開発投入資金は2億円以上)、慰謝料電卓(2009年2,415円でバンダイから発売した開発者はたまごっちの開発者)など日本人の発明品はユニーク。
日本人以外の面白い受賞では、
《統一教会の文鮮明》の(自動車のオートメーション化に成功した)フォード並みの結婚産業のマスプロダクション化貢献で「経済学賞」を受賞、創設者のコメント「経済学賞の受賞者は、受賞式に出席することはほとんどない。ほとんどの受賞者が、5年から15年の懲役に服しているからだ」とブラックユーモアも忘れない。
この流れから、もしかして今年は我らが自公政権も堂々と反日教育をしている中国からの移民政策が「日本人の税金で反日民族を受け入れる博愛的優しさ」から「(ノーテンキ)平和賞」受賞も有り得るかもネ。あっ、でもこちらは笑える話ではない!
Posted by ブクログ
志村幸雄(1935~2020年)氏は、早大教育学部卒、(株)工業調査会で半導体技術専門誌の編集に携わった後、社長、会長などを歴任。また、産業技術審議会専門委員など政府委員、自然科学書協会理事長など学協会役員、早大、麗澤大学、名大などで非常勤講師を務めた。
私は、「イグ・ノーベル賞」のことをいつ、どのようにして知ったのかは覚えていないのだが、少し前に、英国人のトーマス・トウェイツ氏が、2016年の「イグ・ノーベル生物学賞」を受賞した、四足歩行できる人工装具を使ってヤギになりきる「GoatMan Project」について書いた『人間をお休みしてヤギになってみた結果』を読んでいたところで、偶々本書を新古書店で目にして入手した。(本書は2009年出版だが、紙の本は既に絶版である)
本書は、イグ・ノーベル賞について、内容と歴史、どのような研究・発明が受賞の対象となるのか、これまでの日本人受賞者の研究・開発の事例、同賞を獲得するための心構えと実践的な方法、同賞候補となりそうな日本発の研究・発明の成果を紹介したもの。
イグ・ノーベル賞とは、1991年に米国人のマーク・エイブラハムズ氏が創設し、授賞の公式基準は「人を笑わせ、そして考えさせる」研究で、「真似ができない、またするべきではない」業績であること、更に非公式基準は「目を見張るほどバカげているか、刺激的でなくてはならない」というものである。創設当初は、賞の目的や選考方法を非難・否定したり、受賞の報に戸惑う受賞者もいたが、現在では、「パロディ性」に基づいて「笑わせ」、「科学性」に裏打ちされて「考えさせる」という賞のコンセプトが理解され、また、新聞やTVにも登場するようになって知名度も大きくアップし(本書出版から十余年を経た現在では一層である)、賞としてのステータスを確立していると言えるだろう。
日本人の過去の受賞実績については、「ハトによるピカソとモネの作品の識」、犬語翻訳機「バウリンガル」、「ハトに嫌われた銅像の化学的な考察」、「カラオケ」、「バニラの芳香成分バニリンの牛糞からの抽出」、「粘菌による迷路の最短経路の解法」の6つを挙げ、その内容、研究・発明の経緯、裏話等を詳しく紹介している。
また、受賞の候補となりそうなもの(あくまで著者の主観である)としては、「日本笑い学会」、「トイレ文化」、「回転ずし」、「青いバラ」、「二足歩行ロボットの未夢とアシモ」、「100万分の1グラムの歯車」、「定刻自動起床装置」、「クモの糸による新素材」、「畳ドクター、焚火学会」、「慰謝料電卓」の10例が挙げられている。(残念ながら、2022年までに実際に受賞したものはない)
読み終えてまず感じたのは、「人を笑わせ、そして考えさせる」という同賞のコンセプトは、現代社会においてこそ、重要な意味を持っているのではないかということであった。というのは、科学は、19世紀以降、近代化・文明化を牽引してきたが、21世紀となった今、我々の抱えるプラネタリー・バウンダリー、バイオテクノロジー、AI、軍事など様々な側面における問題には科学が関わっており、その根本的な原因は、科学が「科学のための科学」から「社会のための科学」に変化し、役立つ科学のみを追い求めてきたことにあると考えられるからである。科学の進歩自体は、無論、否定されるべきものではないが、我々が人間らしく生きるためには何が大切なのかを考え直すために、イグ・ノーベル賞(のコンセプト)はもっと注目されていいのかも知れない。
(2023年4月了)
Posted by ブクログ
この本自体の評価としてはイマイチなんだが、なにせ元のネタ - イグノーベル賞受賞対象 - が面白いので楽しく読める。個人的には兼六園の銅像がハトに嫌われる理由を着想から40年かけて成果物にした金沢大・広瀬氏の章が好き。
「経済学賞の受賞者は、授賞式に出席することはまずない。ほとんどの受賞者が、5-15年の懲役に服しているからだ」 同賞創設者エイブラハムズ氏(P180)
Posted by ブクログ
イグノーベル賞のなんたるかがよくわかった。
概要はわかったので、次は、受賞したものの紹介がメインの本を読みたいな。
一見下らないことを、真剣に一途に研究することは、本当に信念がないとできない偉業だと思う。
Posted by ブクログ
ハトはピカソとモネの絵を識別することが、、、できる。
犬に寄生するノミは猫に寄生するノミよりも高く飛ぶ。
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役に立たない学問を称して、「木の葉学問」と呼ぶ向きがある。字義どおりに解釈して、木の葉がひらひらと舞い落ちるのを研究しても何の役にも立たないというのだ。
しかし、決定論的カオスの研究で知られるエドワード・ローレンツ博士は、まったく逆の見方をする。博士は、1991年、京都賞受賞のため来日した際、紅葉が燃える京都・嵐山を目の当たりにして、「石が落ちればニュートンの古典力学の法則、木の葉がひらひら舞い落ちればカオス」と名言を吐いた。
博士は以前、自らの論文で「ブラジルの一羽のチョウの羽ばたきが、巡り巡ってテキサスに竜巻を起こすかもしれない」と書き、これを「バタフライ効果」と名付けている。(178p)
冷凍庫に湯と水を入れると、湯の方が早く凍る。(p185)
「鶏は美しい人間を好む。」(ストックホルム大学、ステファノ・ギンランダ)
人間がシロップの中を泳いでも水の中を泳いだ場合と速さは変わらない。
薔薇には青色系の色素がない。
Blue Rose = 不可能な物のたとえ
愛知県のプラスチック加工メーカー、樹研工業は100万分の1グラムの歯車を二億円かけて作成したが、「小さすぎて、用途はまだない。」
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バニリンについてのイグノーベル賞の受賞は聞いたことあった。「牛糞から抽出したバニラの香りじゃあ誰も食わんだろ」と思ってたけど、バニラの香りは芳香剤とか他のものにも使えるのなら利用価値ありそう。
後半のクモの糸を再生医療に活かすっていう話題の、
クモの糸の強度→鉄鋼の5倍
伸縮率→ナイロンの2倍
っていうのがスゴイと思った。
しかもタンパク質素材だから、取り出す必要なしっていうのも嬉しい。ぜひアイデアの域を脱して実現させて欲しい。
イグノーベル賞は賞金がない分、人間の私利私欲に振り回されなさそうかな。
Posted by ブクログ
イグ・ノーベル賞創設の経緯からその意義、選考方法や賞の与えられ方について、過去の受賞研究などの一部紹介と日本人受賞者の取材、はてはイグ・ノーベル賞獲得のための方法論から著者独断のイグ・ノーベル賞候補まで、イグ・ノーベル賞分析に徹した本書。
バウリンガルやカラオケの発明、先ごろ読んだ『群れはなぜ同じ方向を目指すのか?』のレン・フィッシャーが受賞したビスケットを紅茶に浸す研究、中垣教授の粘菌、候補として、日本のトイレ文化、百万分の一グラムの歯車製作や阪大教授の石黒浩氏のジェミノイドなどなど、見知った研究があれこれ出てくる。
イグ・ノーベル賞は「まず人を笑わせ、そして考えさせる」研究が授賞対象だという。
確かに、バカバカしさ以外なにもないような受賞研究もあるにはある。しかし、兼六園の銅像がハトに嫌われる理由を考察して化学賞を受賞した広瀬幸雄教授が「今回の受賞で、科学は人を楽しませなければならないという本質を再確認した」と述べているように、人の知的好奇心をくすぐる、探求心をそそる、ちょっとした「遊び心」こそがすべての科学研究の始まりであり、そこから広がって思わぬ成果を呼び、人類に多大な貢献をもたらす、それこそ「ノーベル賞級」の技術開発や先進研究へと結びつくのかもしれない。
受賞者ではないが、日立製作所の中央研究所初代所長馬場粂夫氏の言葉が紹介されており、印象深い。
「エンジニアはヘンジニアたるべし。世に変人と言われるほどの人間でないと他人に誇れるような発明・発見はできん」
Posted by ブクログ
「笑わせられる、考えさせられる研究」に贈られる裏ノーベル賞とも言われるイグ・ノーベル賞を解説した本。兼六園の銅像にはなぜ鳥が止まらないのかと解明した研究など、日本人が受賞した研究についても詳しく解説されていておもしろかったです。他にもなんでそんな研究を・・・!という研究がいろいろ紹介されています。
Posted by ブクログ
イグノーベル賞がなんたるかや、授賞式の様子、そして日本で受賞した研究について書かれています。
少し前の受賞作がほとんどですが、入門書にはいいかなあと思います。
でも学生にすすめるには、もっと色々な変わった研究がたくさん載っているほうが興味を持ってもらえそう。
Posted by ブクログ
笑いがあり、その後、考えさせられる科学賞こと『イグ・ノーベル賞』についてつづった本。
「バウリンガル」や「牛フンからバニラの香りを抽出」などで日本人が受賞し話題になりましたね。
まさに、笑える後考えさせられる研究です。
本書の中で、気になったのはドクター中松が2005年に受賞した「その日の体調は3日前に食べたもので決まる」というもの。
ほんまかいなw
Posted by ブクログ
難しいことを,かんたんな言葉で説明して,かんたんに考える。これができる人は本当に賢い人だと思う。いつでも遊び心,楽しむ気持ちをもって勉強したいなぁと再確認できた。
Posted by ブクログ
「ほとんどの受賞者は、受賞のニュースに喜びを隠さない(少なくとも、少しは喜ぶ)」
という、あのノーベル賞のパロディであるイグ・ノーベル賞。レン・フィッシャーさんや(ビスケットを紅茶に浸す理想的な方法の考察)、マーフィさん(勿論マーフィの法則)が受賞しているこの賞のことが前々から気になっていたので、この本を見つけて即購入。いやニヤニヤしてしまった。この本自体、「まず人を笑わせ、そして考えさせられる」というイグ・ノーベル賞の授賞基準のような本でした。
だって普通に気になるだろう、「ピカソとモネの作品を識別するハト」とか。学術的価値だってあるだろう。イグ・ノーベル賞、けして馬鹿に出来ません。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
「裏ノーベル賞」の異名を持つ「イグ・ノーベル賞」が隠れたブームとなっている。
その人気を語る上で欠かせないのが「パロディ性」。
「カラオケの発明」がなぜ“平和賞”なのかといえば、「人々が互いに寛容になることを教えた」から。
さらに、芳香成分のバニラが牛糞由来と聞けば誰しも目を丸くするだろう。
本書はイグ・ノーベル賞で世界をリードする日本人受賞者の取材をもとに、「まず人を笑わせ、そして考えさせる」研究を徹底分析。
[ 目次 ]
第1部 「笑う科学」の奇抜な司祭者(この特異なるイグ・ノーベル賞 ノーベル賞と比較して;イグ・ノーベル賞に見る「パロディ性」と「科学性」)
第2部 イグ・ノーベル賞大国を築いた日本人受賞者(ピカソとモネの作品を識別するハト;イヌとの対話を実現した犬語翻訳機「バウリンガル」;兼六園の銅像がハトに嫌われる理由の化学的考察;人々が互いに寛容になることを教えたカラオケ発明;バニラの芳香成分「バニリン」を牛糞から抽出;粘菌による迷路の最短経路の解法)
第3部 「笑う科学」に未来あれ(イグ・ノーベル賞獲得のための実践的方法論;これだけある「日本発」イグ・ノーベル賞候補)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
今や本家ノーベル賞をも凌ぐ人気賞に成長した、イグノーベル賞。この賞にまつわる様々なエピソードや、受賞者インタビューに基づいた日本人受賞者の紹介など、イグノーベル賞案内本。
最終章がやや冗長で読後感を損なったが、イグノーベル賞のユーモア精神をところどころに振り撒いた文章は軽快。
結局、学問の根本は好奇心であり、役に立つとか立たないとかいう俗世間の評価からは自由であるべきだ。イグノーベル賞受賞者に、いつか「もう少しましなこと」が起きることは、きっと間違いない。
Posted by ブクログ
イグ・ノーベルという名称、なぜなんだろうと思っていたが、やはりignobleのゴロからなんだとか。賞状には、本当のノーベル賞受賞者も三人、署名に名を連ねている。マーク・エイブラハムズによる本も出ているが、本書は日本人によるものだけに、日本人受賞者の研究内容について詳しいピカソとモネの作品を識別するハトバウリンガル兼六園の銅像がハトに嫌われる理由(昔の質が悪い銅でできており、砒素を含むために銅との境で電磁波が生じるためらしい)カラオケの発明バニラの芳香成分を牛糞から抽出粘菌による迷路の最短経路の解法(単細胞生物が集まって知性らしきものが生じるというのは面白い)