あらすじ
マルクスとエンゲルスの出逢いを阻止することで共産主義の消滅を企むCIAを描いた歴史改変SFの表題作をはじめ、零落した稀代のマジシャンがタイムトラベルに挑む「魔術師」、名馬スペシャルウィークの血統に我が身を重ねる青年の感動譚「ひとすじの光」、音楽を通貨とする小さな島の伝説「ムジカ・ムンダーナ」など6篇を収録。圧倒的な筆致により日本SFと世界文学を接続する著者初の短篇集。解説:鷲羽巧
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Posted by ブクログ
短編集でこんなに全部面白いことある!?ってくらい、良かった、とても楽しかった。
・魔術師
マジックが文面でこんなに生き生きと表現できるんだと圧巻。思わず心を掴まれる臨場感のある演出描写、含んだ終わり方も全部好きだった。めちゃめちゃ好み。
・ひとすじの光
競馬すぎて面白かった(笑)競馬好きとして非常に楽しめた。小川さんが競馬好きとしか思えないくらい熱意感じた(笑)血統のロマンがふんだんに描かれていて、ますます血統の魅力を感じました。
・時の扉
ファンタジー要素強め。いちばんよく分からなかったけど、世界観や価値観を楽しめたかな。抽象的で少し難しめ。
・ムジカ・ムンダーナ
音楽を通貨とする島のお話。独特の世界観が面白かった!オチも好き。良い。
・最後の不良
星新一っぽい社会風刺めいた話。とても好みだった!これ短かったけど、もっとこの世界観楽しみたかったなあ。
・嘘と正典
共産主義の話は難しかったけれど、分かりやすく書いてくれていたので、話はすっと入ってきた。何よりタイムトラベル絡みなのが面白かった。話としては短かったけど、充実度がとても高い!クオリティの高い短編だった。
全体的に、嘘や歴史が共通しているような感じがして、繋がりも楽しめた。
どれも短編ではもったいないくらいに好きな世界観で、クオリティが高かった。
すっごく好きでした!楽しかった。
(オーディブルにて)
Posted by ブクログ
ユートロニカでただならぬ雰囲気を感じてこちらの本をチョイス。
結論、この作者はめっちゃくちゃ面白い。
この本自体は6つの短編からなるが、短編とは思えない密度を保ちつつショートならではの小気味良さも持ち合わせているので面白い。
個人的には「魔術師」が面白かった。タイムマシンというマジックを披露した父の後を追って、数十年に渡ってトリックを準備し、後戻りのできない一世一代のマジックを披露する姉という短いながらも起承転結のしっかりした構成が好き。
表題の「嘘と正典」も小難しい感じはあるもののすごく練られていて面白い。
Posted by ブクログ
不思議な読み味の作品たちだった。
小川さんの作品は、君が手にするはずだった黄金についてと、君のクイズしか読んだことがないけれど、その2作ともに感じた内包するテーマは深いけれど、ジャンルに形容し難い独特な短編集だった。
ヒトラーの話、流行の話と最後の嘘と正典は、最後の最後にやられたー!と言いたくなる物語だった。
というか、歴史とフィクションの織り交ぜ方がうますぎる…
どの話も結構楽しめたので、このまま小川さんの作品を読み続けたい。
Posted by ブクログ
SF短編集。この短編集ひとつであらゆる時代のあらゆる物語が楽しめる。作者の着眼点・想像力が凄まじい。ただし、ものすごく分かりやすい文章にしてある所為か、文学的な要素は薄いと感じた。
○魔術師
父親の世紀のマジックを、姉が再演しようとする話。結局タイムトラベルを実際にしたのかどうか分からないままで、余韻の残るラスト。そこまで好みではなかった。
○ひとすじの光
作者の競馬愛がひしひしと伝わってくる作品。誰にも注目されず、ひっそりと現役生活を終える競走馬の一頭ずつにドラマが込められていることがわかった。
○時の扉
個人的には今作で一番微妙だった作品。あまり記憶に残ってない。
○ムジカ・ムンダーナ
個人的には今作の中でベスト。音楽を通貨とする部族の設定が面白かったし、それに魅了された父と子の物語もとても素敵だった。
○最後の不良
流行が消滅し、個性を出すことがダサくなった近未来を舞台に、懐古厨たちが暴れ回る話。と見せかけて、全て仕込みだったというオチ。これだけで長編一作できそうなくらい面白い設定だった。
○嘘と正典
一番ボリュームがある表題作。冷戦期のモスクワを舞台にしたがっつりSF。エンゲルスとマルクスの出会いを阻止することで、共産主義を世界から抹消しようとするCIA職員の物語。冷戦期のスパイ活動の緊張感がしっかりと伝わってきて、とても楽しめた。