あらすじ
ひと癖もふた癖もある「光」と「影」のツアーメンバーたちは、ドタバタ騒ぎとニアミスをくりかえしながらも、それぞれのパリの旅を楽しんでいた――かに思えたが、ついにツアーの二重売りがバレそうになって、さあ大変。さらに「王妃の館」に秘められた太陽王・ルイ十四世の愛の行方をからめて、物語は十七世紀と現代とを縦横無尽に駆けめぐる。思いっきり笑って泣いて、ついに感動の大団円。
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2015年4月の映画化作品!映画と本筋は同じですが、それ以外はだいぶ異なるようなので安心してこちらもお楽しみ下さい。
倒産寸前の旅行代理店が、起死回生の策として講じたダブルブッキングツアーが舞台。150万円の高級組と20万円の格安組を、お互いにバレないよう同日・同部屋に宿泊させて費用を浮かせるっていくら小説だからって無理でしょ。
ツアコン二人の四苦八苦(一人がドジ過ぎて泣ける)と、両ツアー客の絶妙なすれ違い、散りばめられたオヤジギャグで、読む手が止まりません。
合間に、水谷豊さん演じるベストセラー作家「北白川右京」(あの右京さんとは違います)の劇中作が織り交ぜられ、物語を二重に楽しめるお得な作品です。
ちなみに、『王妃の館』はパリに実在する歴史的ホテルがモデルですが、普通にネット予約できます。お金と時間があれば・・・
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このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
ヴェルサイユ宮殿に行く予習として、この下巻は良いと思った。飛行機の中で上下巻読み切れるくらいの本ですし。
下巻になって良い話になってきた。人生に対して明るい気持ちになれる。ルイ14世の考察が深まる。正統派喜劇だった。
17世紀のルイ14世の物語がちょくちょく間に挟まるなって思ったら、北白川先生の作品という、そういうメタ構造の小説良いなって思った。
ルイ14世がどうしてこれほど豪奢な建築物を作ったのか。ヴェルサイユ宮殿はルイ14世の心の陰に対をなす、太陽だったのである。
フロンドの乱でトラウマを覚えたルイ14世の心の闇を追いやるための、光り輝く「鏡の間」なんて、よくあるんだろうけれど、良い考察だよね。
シャトー・ドウ・ラ・レーヌに実際にパリで行ってみようとは思わなかったが、次回、二度三度目のパリ旅行で、ディープな旅をするって時に行ってみたいね。
p317 軍司令官コルティッツ
ヒトラーはパリ撤退に際して、街の破壊を命じた。しかし、ナチスのコルティッツはそれに反抗してパリの街を守った。そのために、パリ防衛のために残されたドイツ軍は戦わずに降伏した。それほどの伝統の力が、パリにはあった。
こういうの、かっこいいよね。
p322 古きものの良し
「美しいものをこしらえるのは為政者の実力ですが、それを守り続けるのは市民の実力です。悲しいかな我が国には、どちらの力もないと思った。そればかりか、力ある祖先が築き上げた美しいものを、自然にしろ、造形物にしろ、たかだか利益と便益のために惜しげもなく壊してしまう。」
こういうのはヨーロッパに旅行に行くと実感できるよね。
フランスはヒトラーにパリの街を壊されるくらいなら、降伏を選ぶという、プライドを見せた。これスゴイいい話だった。
あとがきの渡辺えり子の文章を好きといってる人がいるけれど、僕は気持ち悪かったです。
いやぁ、面白かった。
Posted by ブクログ
笑いと泣きの割合でいうと、泣きのほうが多かった。特に、ヴォージェ広場のビストロ「マ・ブルゴーニュ」の店主であるマイエの言葉「愛されるより、愛するのです」という言葉が胸にぐっときた。彼は死ぬまで愛するディアナとプティ・ルイのために晩餐を届け続けたのだ。途中でディアナに愛の告白を拒まれても、死ぬまで愛し続けた美しい心の持ち主であり、大尊敬に値する。プティ・ルイの物語は途中から北白川右京の作品と、老コンシェルジュが語るものとがごっちゃになってきて、どちらの話なのかまったく検討が付かなくなるのだが、どちらにせよ涙無しには語れないほどの感動ストーリーで、最終的にはどちらでも構わないという不思議な気持ちになってしまう。近藤とクレヨンも無事結ばれたことだし、吉本新喜劇的なエンディングも良しとしよう。
Posted by ブクログ
光と影、太陽と月が陽と陰をなし、お話は自分の幸せは自分が決めるって感じでハッピーエンドなんだけれども…。
後半はルイ14世とその認知されなかった息子さんの創話がメインになっちゃって、ツアーに参加した人生いろいろの陰と陽の方々の交流が「みんなでラスベガスにリゾートを作るぞ!」で簡単に終わっちゃったのが残念。
浅田さんだったら、もっと彼らの心の交流を機微に至るまで描けただろうに…。
ルイ14世時代の話はアレクランドル・デュマさんに任せて、そっちをメインに描いて欲しかったな~。
らじのなかでは、幼いルイ14世をフロンドの乱の夜に抱いて守ったのは料理長さんじゃなくて、ダルタニャンだからさ…。
ちょっと尻すぼみなお話でした。