あらすじ
ふとした日常の風景から、万華鏡のごとく様々に立ち現れる思いがある。慎ましい小さな花に見る、堅実で美しい暮らし。静かな真夜中に、五感が開かれていく感覚。古い本が教えてくれる、人と人との理想的なつながり。赤ちゃんを見つめていると蘇る、生まれたての頃の気分……。世界をより新鮮に感じ、日々をより深く生きるための「羅針盤」を探す、清澄な言葉で紡がれた28のエッセイ。
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Posted by ブクログ
樹木・草花であれ、ものであれ、人であれ、ひとたび対象に向かうと、五感をフル稼働させて、大切なものを得ようとひたむきな梨木香歩さん。頼るもののあるときは頼り、支えのないときは一人で立つ生き方。植物や鳥たちとの付き合いが人との距離の取り方を教えてくれる。梨木香歩さん「不思議な羅針盤」、2015.10発行。読んでてほっとする28のエッセイ集。エッセイというより、詩情の浪漫を感じます。
Posted by ブクログ
先日読んだ本『金曜日の本屋さん』の中で、梨木さんの文章が「文字に色がついているみたい」とありこのエッセイ集を読んだ。
ほんとその通り!
何気ない日常のあれこれについて、梨木さん目線で描かれてあり、五感を大いに刺激された。
野に咲く貝母やスミレを「彼女」と親しみを込めて呼んだり、カラスとも意志疎通したりと自然や生き物に対して丁寧に接する姿勢が伺われた。
中でも「シロクマはハワイで生きる必要はない」「百パーセント、ここにいる」は心に突き刺さり涙が出た。
私にとって刺激されたり感心したりしながら、進むべき道を指し示す「羅針盤」となった。
Posted by ブクログ
初読。梨木香歩さんらしさがぎゅっとつまったエッセイ。エッセイなのに、なぜか涙腺を刺激する。梨木さんの本を読むと、丁寧にゆっくりと生きていくことの大切さをしみじみと感じ、自分の生活を見直して姿勢を正そうという気持ちになる。でもいつも実践できないままなんだけど。それでも梨木さんの存在と、梨木さんの書く作品の存在が、私の人生のどこか知らない深いところで拠り所になっている。
Posted by ブクログ
★
『西の魔女が死んだ』を読んで、梨木香歩さんの作品に興味を持った。
とても繊細な感覚で生き物や人、ものごとを見て、丁寧な言葉で表現されていて素晴らしいし、好きだなと思った。
このエッセイを読みながら、私が最近謎に思っていたことが解けたり、好きな自然や、きれいだなと思う言葉や感覚、懐かしい思い出に触れることができた。
また、自身の感覚に近いところが多々あり、親近感が湧いたし、深みを感じたので再読したいと思った。
15年以上前のエッセイなので、そういうところも興味深かった。
◯『世界は生きている』
つい先日4月の末に、帰宅の道を歩いていたら近くの校舎の脇の高い木の上からセミの声が聞こえてきた。〝こんな時期にセミ⁈やっぱり気候がおかしくなっているのか!?〟と不思議に思っていたことがあった。そして、この本を読んであれはハルゼミだったのかなと思った。
調べるとハルゼミの生息域は局所的で、市街地にはまず出現しない、とある。地域によって絶滅危惧種だとも。でも、ハルゼミだった可能性はゼロではない。ハルゼミっていうのがいるんだと知れたことは新鮮だった。
◯『夢と付き合う』
・夢って不思議、何かのメッセージであることもあるんだろうなと私も思っている。どんな意味があるんだろうと謎解きのようなことをしてしまうことも。でも梨木さんの〝心にずしんと響く夢を見た、という実感があるときは、その夢の全体を丸ごと抱きしめる感じで、長く意識のどこかにおいておく方が、「効く」ような気がする。〟という夢の捉え方には、なるほどとうなずけた。
◯『小学生の頃』
・「-略-エルネストのつつしみ深さは、ずっとわたしのものの感じ方のお手本でしたわ。」《ゼーバルト著『パウル・ベライター』》
梨木さんは、このように自覚しているマダム・ランダウに好感をもたれたが、私はこれに共感した。
私も、幼い頃の何気ない場面が、いくつか映像として浮かび残っている。直接的なメッセージを与えられた場面ではないけれど、やはり、それは私にと ってとても大切で、人生の羅針盤のような意味のあるもののようで、今も度々思い出しているのだと感じる。
◯『「アク」のこと』
・とても興味深かった。
春先の植物のアク、人が身体に溜め込んだ毒素、大きなショックを体験したことにより宿るアク、肩凝り…いろんな質の「アク」
アクは出した方がスッキリするが、〝自分にも、誰か、にもその時のコンディションがあるので、白黒つけようと追い込まないことも群れ社会で生きる智慧の一つのようだ〟と著者が考えるのに、そうだなぁと思うところがあった。