あらすじ
コウコは、寝たきりに近いおばあちゃんの深夜のトイレ当番を引き受けることで熱帯魚を飼うのを許された。夜、水槽のある部屋で、おばあちゃんは不思議な反応を見せ、少女のような表情でコウコと話をするようになる。ある日、熱帯魚の水槽を見守る二人が目にしたものは――なぜ、こんなむごいことに。コウコの嘆きが、おばあちゃんの胸奥に眠る少女時代の切ない記憶を呼び起こす……。
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Posted by ブクログ
文体から、いい子ちゃん小説かと思いきや、まったく逆ベクトルの凄まじい小説だった……!
悪意、暴力、女性性、旧約聖書の世界、罪と罰、罪悪感、の連鎖。
死体を石で幾度も打ち付ける場面には背筋が凍る思いをした。
願わくば最後に飛び出してきたエンジェルが、さわちゃんの心に届かんことを。
Posted by ブクログ
梨木香歩さんの本を久しぶりに読んで、切なく、そして心が震えた。タイトルがすごくきいているのもいい。孫と祖母の話が交互に展開していく中、老いること、生きて死ぬこと、誰かにバトンを繋いでいくこと、そういった戦災な優しさの詰まった名作。
ツネがさわちゃんに託した天使が、コウコのところにやってきたこと、たとえ、本人に物が伝わらなくても、会えなくても、大切なものは時間をかけてやってくること、とても切ないけれどいいラストだった。
Posted by ブクログ
子どもの頃に読んで、なんだかよくわからない難しい話という印象だけがありましたが、大人になってから読み返すと色々な感情が。
章ごとに時代が現代から過去、過去から現在へ移り変わり若かりしおばあちゃんとコウコ2人の目線で物語は進んでいきます。
章ごとでの主観人物の移り変わりやおばあちゃん視点の章の昔な文章の書き方、認知症?のおばあちゃんの介護や嫁の苦労など、なるほどこれは小学生の自分にはたしかに難しすぎたな、と納得でした。
当たり前だけどおばあちゃんにも若い娘さんの頃はあったんだよなぁ、と自分の祖母に思いを馳せ、コウコと覚醒したおばあちゃんとの解釈の違いに切なさを覚えつつ最期にあのような時間を過ごせたのは一生思い出に残るだろうな、と感じました。
Posted by ブクログ
孫の「こうこ」に古き思い出の公子さんを投影していたのだろうか。「こうちゃん」と呼びたかったことや翆川先生と山本さんの姉妹の関係が羨ましたかったこと。エンゼルさま(エンゼルフィシュ)が少女時代の後悔を抱くさわこへ僅かな時間をくれたのだと思う。
止められない嫉妬心・攻撃的な態度で人を傷付けてしまった過去。そういう黒い気持ちってずっと忘れられないものだよね。
それを、どうにもできなかったエンゼルだってかわいそうだよと、他ならぬ「こうちゃん」に許された。
きっと安心して旅立だっていけたのだろうな