あらすじ
私たちは宇宙の謎の核心にここまで近づいている!
ビッグバン、素粒子のふるまい、ブラックホール、ダークマター……。アインシュタイン以来、宇宙のあらゆる事象を記述する究極理論、たったひとつの数式を、科学者たちは探求しつづけてきた。そして現在、多くの一流物理学者が、その答えに近づいていると考えている。『サイエンス・インポッシブル』『人類、宇宙に住む』等の著作で科学啓蒙に携わってきた著者が、本書では自らの専門分野にたちかえり、究極理論の「筆頭候補」であるひも理論研究の第一人者として、科学者たちの真理をめぐる論争と情熱、そしてその最前線を明快に語る。魅力的な科学者たちの挑戦の物語を読みながら、現代物理学のキーワードを一望できる一冊。
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Posted by ブクログ
SF好きな人には最高の一冊で、とにかく楽しかった!
・マルチバース
・宇宙は10または11次元
・ワームホール
・ホログラフィック宇宙
・ランドスケープ問題
・人間原理
などなど。SF小説でよく出てくる要素がてんこもり。物理学者たちがどのような理論/方程式から上記を現時点では否定できないあり得る現実として導き出したのかが分かる。
前々からミチオ・カクの名前は知っていたけど、私にとっては初めての一冊。一般人向けに物理学の不思議さを面白く解説してくれている点にとにかく感動した。ぜひ他の本も読みたくなった。
今回の内容を大雑把にまとめると・・
【前半】古典力学と量子力学の歴史を丁寧なのに数式を一切使わず一般人が想像しやすい言葉でその大変さと偉人達の努力についてまとめている。量子力学の不思議な点(例えば不確定性原理、いわゆるシュレーディンガーの猫)について、最近の物理学者がどのような解釈をしているかも簡単な言葉で書かれていて面白い。
【後半】現在の物理学で最大の課題である「重力と量子論を統一できない」問題を唯一数学的に解決可能な「超ひも理論」について。超ひも理論は宇宙の全てを記述可能な「万物の理論」として期待されているが、課題も多くある。優れている点、課題や今後の見通しがとにかくSF的な表現で分かりやすく面白く書かれている。
前半の物理学の歴史が本書の6割くらいを占めていて、「もうおなかいっぱい、はやくひも理論の話にいって…」と退屈になったけど、従来の理論で散々悩んでいた部分をおおよそでも理解することで、「ひも理論すごい!」という感動が得られたので、前半頑張って読み込んだ甲斐があった。
【全体を通した感想】
改めて感じたのは、やはり最先端で研究する物理学者達は「神」を信じているんだなということ。著者も不可知論者だと書いている。
ただし、その神というのは一個人の人間の存在に関わるような小さな存在ではなくて、宇宙全体を設計した存在というイメージ。
歴史上の物理学者たちは「神が作った宇宙は美しい(対称性を有する)はずだ」というのをモチベーションにして、自分の人生をかけてその美しさを方程式で証明してきたというのがすごい。
そして何十年、何百年とかけて歴代の物理学者達が導いてきた理論はやはり美しかった。相対性理論と素粒子物理学:標準模型のたった2つの理論だけで陽子から既知の宇宙を何もかも簡潔に記述できるのは、前もってエレガントな設計をした存在がいるに違いない!
天才的な物理学者が我々の住む宇宙の設計者、マルチバースの存在を感じているのだから、私がSFの世界に思いをはせるのはけして無駄な時間ではないなと思えた。
なので今後もSFや物理学の本を読むためにお金を使ってもいいね!ということでミチオ・カクの最新書を購入することに決めました。
Posted by ブクログ
ひも理論について
マックスウェルによる電磁波の記述から始まり、光子・電子の統一がくりこみ理論で乗り越えられたこと、さらにコンピュータによる大量の計算力でヤン=ミルズ場のくりこみを成し遂げて強い核力が統一され、現在の標準模型に至るまでの歴史が語られる。その過程で、物理学における美しさ(対称性)の重要性が強調され、標準模型は美しくないと主張される。
著者の専門でもあるひも理論は、現在の科学で達成できるレベルのエネルギーでは実証実験をすることができないが、十分に美しく、宇宙を矛盾なく記述することができる。究極の方程式には解が無数にあり、無数の宇宙が存在すると考えられるがほとんどの宇宙では物理定数が今の宇宙のようにちょうどよい具合ではないため、素粒子が漂うだけの死んだような宇宙だろうという。
数式は巻末の脚注にしか出てこず、一通りの流れがスムーズに頭に入ってくる