あらすじ
「その他」の側から世界を見る
翻訳大国日本。多くの外国文学が翻訳され、読まれている。その中には日本では学習者が少なく、「その他」とくくられる言語によるものも含まれる。
しかし、「その他」だといって存在感が小さいわけではない。インディペンデントな文学賞として知られる「日本翻訳大賞」の第1回大賞の2作品は、韓国語とチェコ語による作品だった。いずれも「その他」に分類される作品が、読者からも、翻訳者からも多くの評価を得たこと自体が、このカテゴリーの奥深さのあらわれではないだろうか。
では、「その他」を生み出しているのはどのような翻訳者たちなのか?
日本では馴染みの薄い言語による文学を、熱意をもって紹介してきた九人の翻訳者が、その言語との出会いや学習方法、翻訳の工夫、そして文学観を語るインタビュー集。
序文・斎藤真理子
鴨志田聡子(ヘブライ語)
星泉(チベット語)
丹羽京子(ベンガル語)
吉田栄人(マヤ語)
青木順子(ノルウェー語)
金子奈美(バスク語)
福冨渉(タイ語)
木下眞穂(ポルトガル語)
阿部賢一(チェコ語)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
いろいろな方の人生を垣間見た。
特にマヤ語とバスク語の方が印象に残った。
アフリカ(アンゴラ)にポルトガル語の国があるのを知らなかった。
世界は広いな〜。また読みたいと思う。
Posted by ブクログ
辞書も文法書も少ない「その他の外国語」を習得して翻訳者や文学者になる課程は、それぞれ、情熱に突き動かされたとしかいいようのないすごいものだけど、それ以前に、その言葉と出会ってしまった運命のようなものにすごく心を動かされた。
それにしても、日本て、英仏独や、中韓だけでなく、これだけバラエティ豊かな言語の研究者や翻訳者がいるんだなあ。このことはとても大切にしなくちゃいけないし、各国文学がこれからも読まれていくよう、心から願ってる。
と同時に、あー、もっと本読まないと、仕事しないとと尻をたたかれたのであった。
Posted by ブクログ
語学とのつながり、語学からの広がりが、読んでいて楽しかった。
こんなふうに深く勉強できてはないけど語学が好きなので、いろいろな接し方が知れてよかった。
何に出会うか、どう出会うかは人それぞれなんだよな。
わたしもこれ、と決めて腰を据えて勉強しようかな。
Posted by ブクログ
“その他”の外国文学翻訳者たちの、その言語との出会い、
学習法、翻訳の工夫などの翻訳への道程、文学観を紹介する。
・「その他」の側から世界を見る
ヘブライ語 チベット語 ベンガル語 マヤ語
ノルウェー語バスク語 タイ語 ポルトガル語 チェコ語
各言語での翻訳の参考になる本、その言語のお勧めの文学、
その言語を知るための本、その国を知るための本などの
リスト有り。
ノーベル文学賞で“その他”の外国の文学者が選ばれるとき、
その言語から日本語翻訳された作品があることに驚きます。
そんな“その他”の外国文学翻訳者たちは、どのように
その言語と出会い、翻訳への道を歩んだのか。
きっかけは人それぞれ。
元々の専門言語から苦手な言語へ。
その言語に通じる家族からの影響。
翻訳の無い自分だけが原文で読める作品と出会いたい。
その地域の調査研究の過程から学んだ言語。
オーロラを見るツアーでその国への興味。
映画祭へ行ったこと。その文学作品をその言語で読みたい。
国費留学生との交流、その言語で話をしたい。
中学時代の一年間暮らした国の言葉という親近感。
世界で最も難しい言葉をやってみたい。
その想いからくる積極的な歩みは疾走感漲るもの。
海外に、現地に行って学ぶ。フィールドワークを行う。
それらの行動力と熱意が迸るような道のりを歩んでいます。
人と人との繋がりも大事。現地で、日本国内でも同様に。
だが、その言語が分かることと翻訳が出来ることは、別物。
外国文学は、その土地に根差した価値観を直に知ることが出来る。
宗教や政治によっても異なる、その地域の歩みも。
翻訳者たちのその言語を、その文学作品を知らしめたい熱量を
大いに感じさせてくれました。その活動にも刮目。
また、その言葉の音の響きやリズムに惹かれてというのも、
興味深いものでした。
Posted by ブクログ
「その他」や「マイナー」扱いされがちな言語――本書ではヘブライ語、チベット語、ベンガル語、マヤ語、ノルウェー語、バスク語、タイ語、ポルトガル語、チェコ語――や文学の研究や翻訳に携わる方々へのインタヴュー。どのような経緯でその言語と出会ったのか、どのような苦労が学習し習得する上であったのか、どのようなきっかけで文学作品を翻訳することになったのか等、興味深い話だった。本書に登場する方々はいずれも翻訳専門ではない点が意外だった。
大型書店の海外文学コーナーでふと、馴染みの無い国・地域/言語/作者の名前の一冊に目が留まり、手を伸ばし購入した経験は誰しもあるだろう。そのような経験そのものの契機をつくり出し、自分の読書欲と読書経験を満たしてくれたのは本書に登場するような方々かもしれないと思うと感謝に堪えない。
Posted by ブクログ
読み物として面白い、ブックガイドとしても面白い......。盛りだくさんの出会いがある一冊だった!バスク文学も気になるし、タイももっと読みたい。ガイブンの沼、まだまだ深かった。
Posted by ブクログ
先日ネット配信された『その他の外国文学翻訳の楽しみと苦しみ』というタイトルのイベントで、「本当に面白い本なのでぜひ読んで!」と韓国語翻訳の斎藤真理子さんが絶賛していただけあって、登場するみなさんはもちろん、インタビューも読みやすく、もっと知りたい人のための読書案内、学習者のための参考図書の紹介まで、至れり尽くせりのおもしろさ。
Posted by ブクログ
翻訳というものは単に言葉を違う言葉に置き換えるだけのことではなく、文化や歴史、ほかの国との関わりやその言葉がどのように扱われてきたかなどをふまえて作り上げるものであり、その難しさ、おもしろさが書かれている。読まれるときには読者に背景がわかるようにしつつも、作品のおもしろさや流れが損なわれないように翻訳者は苦労する。まえがきにあるとおり、「その国や地域の社会的・歴史的コンテクストと、それを取っ払っても通じる文学としての面白さ」を持つ外国文学を読むことで「「その他」の側から世界を見ること自体が重要なのだ」が、それができるのは翻訳者のおかげだ。この本の中で紹介されている「その他の外国文学」の作品もおもしろそうなものばかりで読んでみようと思った。
Posted by ブクログ
序にあたる部分で韓国文学翻訳者の斎藤真理子さんの文章が良い。英語一強の世界で、”その他”の翻訳者は「でこぼこを埋める人なのか?またはでこぼこはそのままにして、ここに道があるよと示してくれる人なのか?」
どの翻訳者の方も、マイナー言語を選んで翻訳するにあたり、その国・地域の文化や歴史、言語の特徴を知り紹介したい、翻訳にそれを反映させたいと努めておられた。一方で、それ一辺倒でもいけない、単に面白いから訳すのだ、という姿勢もあるようだった。
思えば、外国語の文学作品を読むこと自体がほとんどないし、あっても何語で書かれたかということを意識することは皆無だったように思う。おそらくこれまで読んだもののほぼ全てが英語で書かれていたものだったと思うけど、”その他”の言語のものも読んでみたくなった。(というか、日本語も世界から見たら”その他”なのだよな。)
各言語の訳書や、その言語を知るための参考文献などが多くつけられているのが嬉しい。
読んでみたいと思ったもの:
・ここにも激しく躍動する生きた心臓がある(チベット語)
・百年の孤独(ラテンアメリカ)
・穢れなき太陽(マヤ)
・薪を焚く(ノルウェー)
・オババコアック(バスク語)
・ビルバオ-ニューヨーク-ビルバオ(バスク語)
・白の闇(ポルトガル語)
・私は英国王に給仕した(チェコ語)
・白い病(チェコ語)
・耳の中の魚 翻訳=通訳をめぐる驚くべき冒険
・「世界文学」はつくられる 1827-2020(世界文学の翻訳者や研究者など裏方の本とのこと)
Posted by ブクログ
外国文学を読むときに、「誰が書いたのか」は見ることはあれど、「訳者は誰か」について考えるのは、かなりの本好きでないとあまりないような気がします。
そして、翻訳そのものも、原書に沿った直訳が好きな人もいれば、意訳を好む人もいます。
今自分が取り組んでいる英語ですら、難しく感じるのに、豊富に教材があるわけでもなく、まして辞書すらない言語に立ち向かっていく、本に出てくる訳者たちは、それぞれがオリジナルの学習法を編み出していて、非常に面白かったです。
共通しているのは、辞書があることの便利さと、現地で学ぶことの有意性でしょうか。
平坦な道では決してない、そして報われるかどうかもわからない、相当な努力をしてきたことが、文章を通じて伝わってきますが、きっとそれ以上の苦難があったはずと思わざるをえない。
この本を読んでからは、必ず訳者の略歴は見るようにしようと思いました。そして、機械翻訳ではいまの段階ではまだ乗り越えられない壁があることを改めて感じさせられた一冊でした。
手元に残して、時期が経ったら再び読んでみようと思います。
Posted by ブクログ
1回目の感想
とても面白かった。外国文学を翻訳で読むことの意味やそれぞれの翻訳者の目指すところなどを知ることができて刺激になった。
2回目
芸術、スポーツ、科学etcの分野でそれぞれに「すごいひと」はいるけれど私にとってのトップオブ「すごいひと」は言葉をあやつるひとだ。あまりにもはるか高みに位置するひとたちなのでめまいがするほどだ。子どもの頃から翻訳文学が好きだったので本当に翻訳者の恩恵をたっぷり受けてきたと思っている。もっともっと文学作品を読みたくなった、もちろん「その他」の外国文学にも挑戦するつもりだ。
2025年2月チェコ語の阿部賢一さんが読売文学賞受賞
Posted by ブクログ
私は元々外国語に興味はあるが、外国の文学は人から借りた本や有名な作品のいくつかしか読んでこなかったので、この本で紹介された様な「その他の外国文学」にくくられるものは読んでこなかったように思う。ですが、この本を読んだことで、日本で「マイナー言語」とされている言語で書かれた翻訳本を読んでみたいと思った。
この本でインタビューされていた翻訳者の方たちは元々大学で割とメジャーな言語(フランス語など)を学んでいたが、ひょんなことから別の「マイナー言語」やその作品に見せられ深く学ぶようになった人が多いように感じた。思いがけない面白い出会いはあるのだなと思った。
この本ではそれぞれの翻訳書の方のおすすめ翻訳本も紹介されているので、読んでお気に入りの本に出会ってみたいなと思った。興味深い本でした。
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チベット語、ベンガル語、マヤ語など、マイナー言語の文学の翻訳者に丁寧に取材し、その言語を習得したきっかけ、翻訳本との出会いを綴った本。流石、白水社の視点はスゴイ!
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白水社でないと出せない本!その他の言語から訳された本は、大体外さない。そりゃそうだ。出版までのハードルがもう一つ高いんだから。ともかくなんか熱量高い。緩いひともなんか突き抜けてる。愛だよ、って言った人いたなあ。
Posted by ブクログ
発売前から期待していたが、読んで本当によかった。
海外文学を読む上で、その仲介者くらいの位置付けしかしていなかった翻訳者の方々の、翻訳にかける並々ならぬ熱意と努力が知れて、また一つ世界が広がった気がする。単語の意味だけでなく、文法も、その土地独特の文化も自力で調べなければならない。その上、出版社に持ち込むために企画を練ったりもする。マイナー言語であるというだけで、その苦労は底知れない。
一つの物語を伝えるとき、そこにまた一つの物語、翻訳者の人生が生まれるんだなあ。
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翻訳の苦労や翻訳家になったきっかけなどを読むことができます。未開拓の世界を進む行動力が印象に残りました。様々な国の言語や文化も学べます。外国文学に興味がある方におすすめの本。
Posted by ブクログ
はじめて読む言語学の本でした。最初に読むにはマイナー言語が多くてとっつきにくいかと思いましたがそれぞれの言語の良さが分かりやすくまとめてあってよかった。個人的にはチベット語とバスク語チェコ語がいいなぁと感じました。知らない国の言語から社会情勢、歴史にまで足を踏み入れて作品を翻訳していく翻訳家はやはり勤勉でたくましいと思った。
Posted by ブクログ
私は海外の翻訳ミステリーが好きだが、北欧とか、一度英訳されて後に邦訳されるケースを目にするので、「その他の」と一括りされる外国文学の翻訳者がどんなものか興味を持った。言語との出会い、学習のアプローチはそれぞれ異なるが、いずれも辞書や発音記号もわからない様な手探りの状態から道を究められた熱意に感動した。
また為政者の都合や侵略などで母国が使えぬまま失われた言語もあり、とても興味深く読んだ。
Posted by ブクログ
面白かった。よつばとのとーちゃんに憧れてマイナー言語の翻訳家になりたいとぼんやり考えて初めて手に取った。思ったよりも生まれの良い高学歴で知識層の学者が翻訳もやっているというケースが多いように感じて自分のイメージする仕事とは少し違うなと感じた。話者も多く国際的に存在感もあり、日本とも国交のある国でも翻訳文学というのはまだまだ未開の地なんだなと知った。3000以上、5000以上とも言われる言語の中で億を超える話者がいても文学としてのジャンルは「マイナー」に分類されてしまうのはなんだか変な感覚だし寂しい気もした。
Posted by ブクログ
話者が多くともマイナー言語として扱われるものもある。なるほどそうかと気づかされる。
それぞれの言語に関心を持ったきっかけや学習法が語られ、それぞれの外国文学に興味を抱かされる。外国語を習得することって楽しいのだなと気づく。
僕にとって外国文学とは、児童書やYAでお馴染みのもので抵抗感はあまりない。特に現代を舞台としたYAだと、各国の情勢や習慣や制度に触れることができて楽しい。
それもこれも日本語の物語として翻訳してくれる方がいるからこそ。ありがたや。
外国文学を敬遠している人も是非手に取って欲しい一冊。
Posted by ブクログ
福翁自伝で辞書も教材も手に入りづらい時代に福沢先生すごいと思ったけど、今この時代でもその他の外国文学の翻訳者たちは福沢諭吉ばりにガッツあった。
Posted by ブクログ
これぞ読書の醍醐味という感じだった。だって、中学校以来数年に渡って学んだはずの英語さえままならず、語学を「あれは、語学の天才がやるもの」として、自分から完全に切り離している私が、翻訳者達数名の自身の体験や、人生の歩みや、その言語への思いをじっくりと読めて、疑似体験できたんだもの。
「その他の外国文学」と括られるいわゆる(日本では)マイナーな言語の翻訳者9名を取り上げている本書。具体的には、ヘブライ語、チベット語、ベンガル語、マヤ語、ノルウェー語、バスク語、タイ語、ポルトガル語、チェコ語・・・・
あぁ、なんてマイナー。しかも、私、外国文学はほとんど読んだことがない。「赤毛のアン」や「若草物語」や「足長おじさん」などの有名児童書(?)くらい。つまり、なじみがない上に、マイナー言語・・・
だからこそ、私にとって全く知らない世界が広がっていてとても興味深かった。言葉もそうだけれど、その国の文化もあまり知られていないとなると、やはり翻訳するには相当な努力と苦労があるのだなぁとしみじみ感じた。その裏で、「この本を訳したい、知って欲しい」という熱意が溢れていて、読んでいて清々しいというか、その熱量にこちらもわくわくさせられるというか。今でもなかなか手が出ない外国文学だけれど、「読んでみようかな」と素直に思える。
まだ言語というものの重要性やその文化との関係などが全く理解できていなかった小さい頃、翻訳なんて、ひとつの外国語の単語を決まり切った作業のようにひとつの日本語に置き換えるものだと思っていた。(最近わが娘も同じことを思っている節がある。)
今となっては翻訳は製作活動であり、研究にもなりうる大変なお仕事だとさすがにわかっている。そして、語学が苦手な者としては尊敬しかない。
常々、語学って、努力はもちろんのこと、「才能」が必要なのでは、と思っていたのだが、それが読後は確信に変わった気もする。
Posted by ブクログ
ウェブマガジンの書籍化なので、やや食い足りない部分はあるが、マイナー言語の文学の翻訳がどのようにして行われているかが垣間見られて興味深い。出版社のウェブマガジンだけあって、「その他の外国文学」の読書案内として「使える」ものにもなっている。
Posted by ブクログ
「その他」に入れられてしまう言語(本書では、ヘブライ語、チベット語、ベンガル語、マヤ語、ノルウェー語、バスク語、タイ語、ポルトガル語、チェコ語)の文学を扱う翻訳者さんたちの奮闘が書かれている。
日本では学ぶにはかなりマイナーな言語ということでテキストを探すところからの苦労、未知の国への留学、ことばのバックグラウンドを知ること、訳したいと思う本との出会い、出版への道のり。一筋縄では行きません。でも、皆さんに共通するのは言語と訳す本への大きな愛。いやぁすごい。バイタリティと愛がないと先駆者にはなれないのだなぁとひしひし感じました。
読み手として、そのお仕事の結晶の本を読むことができて幸運です。
お勧め本の中にいくつか積んでるものがあって心苦しい(;'∀')
チェコ語の阿部さんがウリツカヤの『通訳ダニエル・シュタイン』を翻訳の参考の本として挙げられてる理由をちょっと知りたい(欲しいけど絶版本…)。
お勧めの中で気になった本
バーデンハイム1939/アッペルフェルド
走れ、走って逃げろ/オルレブ
銀河の果ての落とし穴/ケレット
イタリアの詩人たち/須賀敦子
薪を炊く/ミッティング
アコーディオン弾きの息子/アチャガ
Posted by ブクログ
マイナー言語の翻訳家たちの話。
P28 イスラエル人は自己評価が高く、特に根拠もなく 「自分はこんなことができる!」と主張するという。
そういった自信満々な気概や文化、メンタリティーの違いを訳文で表すのは難しい。
これは分かる。英語圏はストレートな物言い。
中国や韓国の歴史には日本に対する偏ったステレオタイプな考え方が未だに存在している。
言語はその国の文化や人を表現し、また影響し合うものだから、言葉だけでなくバックグラウンドも理解することが大切なのだな。