あらすじ
並行世界を行き来する少女たちの1度きりの青春を描いた表題作など、ベストSF2019[国内篇]1位に輝いた傑作集がついに文庫化
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Posted by ブクログ
世界観を掴むのに手こずる話ばかりだったけど、1作目と最後が素晴らしかった。
「なめらかな世界と、その敵」
並行世界を自分の意思で行き来することが当たり前になった世界。事件により乗覚 障害(並行世界を行き来する能力を失う障害)をもった少女とその友達の話。あまりに滑らかに移動するので物語の構造を掴むまで???だったが、この滑らかさが斬新だし、最後の駆け抜けていく描写は圧巻だった。
「 ゼロ年代の臨界点」
架空のSF作家ドキュメンタリー。ある女学校を舞台に3人の作家の人生を綴る。よくも悪くも本当の伝記っぽくて淡々としてる。
「 美亜羽へ贈る拳銃」
お互いの脳に拳銃で操作をすることで科学的に保証された愛を得ることができるという発明をした少女。「ハーモニー」の内容忘れてしまったけど、その小説から名前を取ったと言うだけであんまり関係ない。
「 ホーリーアイアンメイデン」
抱擁することで改心させることができる姉へ、その妹が死後送る手紙。とても美しい日本語。段々真実が分かってくる独白もので、「妹を殺したのが姉」というのがわかってなるほどね!となった。
「 シンギュラリティ・ソヴィエト」
人工知能に支配されたソ連とアメリカの話。赤ちゃんの行進など独特なディストピア感で世界観を把握するに苦労したけど、最後の全てを理解する感覚の描写が良かった。
「 ひかりより速く、ゆるやかに 」
時が少しずつ進む新幹線に囚われたクラスメイトたち。その姿を見てある事ないこと言うネット民たちがさもありなんという感じ。わかりやすいし、はるか未来の描写かと思っていたのが主人公の黒歴史小説だったし、解決方法もしっかりSFでハッピーエンドで素晴らしい。とてもすき。
そして何よりあとがきから伝わる著者のSF愛が良い。本になってない作品でも、傑作は数多くあるのだろうな。作者の編んだアンソロジーも読んでみよう。
Posted by ブクログ
短編集。
なめらかな世界と、その敵
ゼロ年代の臨界点
美亜羽へ贈る拳銃
ホーリーアイアンメイデン
シンギュラリティ・ソヴィエト
ひかりより速く、ゆるやかに
SFど真ん中の作品を初めて読んだ気がする。やはりSF……あまり得意ではないなぁ。と、ミステリー畑の人間は思うのであるが、その私をして悩んだ挙句、評価が星4である。面白かったんかい、というツッコミを自分で自分にしてしまうよな。
というのも、短編集で読みやすいのと、SFを読み慣れていないが故にSF独特の世界設定を把握するのが容易でないため入りにくいものの、物語として綺麗にまとまり何かしらの印象を受けること、それらの総合点から「慣れぬし好みかと問われると首を傾げるが面白いと思う」との結論に至ったのである。
元々、ライトノベルだろうが一般文芸だろうがなんだろうが、現実世界の荒唐無稽な設定は違和感が先に立ち受け入れづらい性質なので。現実世界ではないと明らかに明示されていたら比較的理解はしやすい。その点、本書は、馴染んだ日本という国の、歴史やら現実やらが舞台なので、いやSFだから当然そうなのだが、「ええ現実にあり得る?」が先に立ってしまう。諸外国からもとから日常に身近でないのでそこまで違和感もないのだが。
そんなこんないいつつ、個人的なお気に入りは「ひかりより速く、ゆるやかに」である。
ヒーローになり損ねた男の話、とか思ったりもしたのだが、ひとかけらの幸福とは名誉とは無関係なところに生まれるものよな、などと思ったりもしつつ、結局は、抗い難い脅威に抗い難い幸福を掴むちいさな生きものたちの物語が好きなのだ。