あらすじ
アイルランドの村に移住してきた元警官は消えた青年を捜すが――緻密な描写で年間ベストミステリに多数入選した重厚なる犯罪小説
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Posted by ブクログ
長ーい小説だった。
大自然の描写とゆったりした生活感と町の人間との触れ合いをじっくり描いて
トレイと会うまでも長いし、会ってからもゆっくり。
カルの娘にしてあげれなかったことを奇しくもトレイにやってあげるところが良かった。
最後に彼女を見守る選択をするのもかっこいい。
カルの人生再生物語に見立てて、家はボロボロで家具もほぼなし、一から集めていったり、自分で作ったり、そしてトレイが来て、終盤にはレナが来てと擬似家族を形成していく。
今度こそ彼は間違えないように、だいぶレナに助けてもらいながらだけど、進んでく。
よく出来た構成。
かなり地味なのに面白い。
暴力が発生するのは、かなり後半でしかも撃つのはトレイなのが意外やった。カルもチンピラはボコボコにしたけどそこまではしてないし。
娘のアリッサが襲われた話から
犯人が分かってもおそらく同じようなことはしないだろうなと思ってた。この小説での進む先は決まってたから安心したくらい。現実なら受け入れ難いだろうけど。
これも北上次郎氏がその年のNo.1って言うてたのを聞いてから読むまでに時間かかりすぎてしまった。評判そのまま!めっちゃ面白かったです。
Posted by ブクログ
アメリカとアイルランドにルーツを持つ作家、タナ・フレンチの作品。集英社文庫から数作出ていたが、今作はハヤカワ・ミステリ文庫から。
妻と別れ、シカゴ市警を辞めたことをきっかけに、アイルランドの片田舎に引っ越してきたカル。隣人や雑貨屋の主人達とそれなりに仲良くやってきたが、村八分の扱いを受ける子供から兄を探して欲しいとお願いされ。。。
兄の探索というミステリ要素がありつつも、アイルランドの豊かな自然や、小さいコミュニティでの暮らしが濃厚に描かれる。いわゆる、文芸ミステリ。
正直ミステリとしてはそこまで。期待して読むと肩透かしかも。ただ、妻も娘も仕事までなくした孤独な男が、子供とのやりとりをとおして再生していく、その筆致が非常に良かった。
Posted by ブクログ
捜索者
職を捨て、妻子とも別れて、一人でアイルランドの片田舎にある廃墟同然の家に越してきた、元アmリカの警察官カル。
廃墟同然の家をDIYで修繕しつつ、大自然の中で静かに暮らす第二の人生を模索実践していく中で、カルは見張られているような違和感に気づく。気配の正体はみすぼらしい格好をした13歳の子供トレイ。
次第に距離めDIYを手伝うまでになったトレイは、ある日カルに「兄貴を探してほしい」と依頼する。
幸せとは決して言えない境遇に育ったゆえに、少々ヒネてる子供に大工仕事や家事を通じて、人生を教えるパターンは大好きな小説「初秋」リスペクトである(あとがきにも書かれている)。
もちろん…というか、この本の奥深さというか、単純にトレイの成長譚だけでは済まない物語で、そこにはカルの成長や人生の振り返りだけでなく、小さな村社会の良し悪し、人間関係の距離の取り方、荒涼でありつつ豊かな自然の描写、そしてもちろんミステリーとしての伏線回収など、それらの読みどころ全てが上手く調和してボリューム以上に雄大な小説となっている。
最後のページを読み終えた時「読んでよかったな」とじわじわ浸れた。そりゃまぁ面白い小説はどれも読んでよかったなぁ…なのだが、なんというか余韻の深さ濃さがなんともいえない心地よさなのだ。書評家、読書家連中に高評価なのも納得の1冊。
Posted by ブクログ
読み応えあり。丁寧な描写がじりじりと続くと読み進めるのに時間もかかるが、それが人物や情景に厚みとリアリティを持たせる。そしてアイルランドを描くのに、このペースはぴったりだ。田舎町の閉じた人間関係は、どの国も一緒だなーと今更ながら思う。
ワンコがいい味を出していて、これも”ワンコ小説”と言えそう。
Posted by ブクログ
人と関わらないで済むような土地に引っ越したつもりだったのに、ここではここのわかりにくいルールがあるという、都会よりも面倒な出来事に巻き込まれていく主人公が不憫だった。一度住んでみないと分からないこともある。
トレイと出会い、田舎の穏やかな生活は崩れ去るが、人と関わることは基本的にはやはり楽しく豊かで人間的な行為なのだと思う。
マートをはじめとした仲間たちは、村の秩序を守るためとはいえ、自警団を超えてもはや村人たちを私物化していることや、殺人と遺体遺棄までしているのは驚いた。
この村でなければ通報して解決なのに、結果的にカルも掟に従う結果になるところに闇深さを感じる。
でも、自分にとって何が一番大切か、誰を守りたいかを優先させたカルの判断を責められない。娘アリッサの時のようなあやまちは犯さないという慎重さがうかがえた。二度目の判断はおそらく失敗しなかった。
きっと誰もが正しいことをしたいけれど、何事もなかったかのようにして、ここでの生活を守ってきたのだろうと思う。
カルが一人で生活していて不安に思ったり、迷うシーンがあるところが良かった。失敗した経験のある人間は色んなところで迷うものだと思うから、迷わない人よりも信頼できる。ありのままが書かれているように感じて、この生活、私は好きだった。
ラストはカルもトレイもこのまま村での生活を続けられそうで、なんだかホッとしてしまった。トレイにとって友人のように、父親代わりのように、これからも暮らしていくのかな。どんなラストもあり得たのでハラハラしていた。
Posted by ブクログ
ハラハラドキドキというのはないけど、田舎の空気感を静かに感じる作品でした。真相の割に読後感は悪くなかった。主人公と子どもの交流部分が好き。
Posted by ブクログ
本の雑誌・上半期ベストから。文庫700ページの大作だけど、比較的淡々と進む。それもあり、続きが気になって仕方ない!みたいな、ジェットコースター小説的爽快感は殆どない。美しいけど物寂し気な情景描写と相俟って、じわっと沁みわたってくる系。”ザリガニが~”みたいな。こういうのはこういうので、やっぱりなかなかに味わい深いですな。
Posted by ブクログ
アイルランドの田舎の自然風景の描写が魅力的に映る分、人間関係の閉鎖感が際立って見えました。
風景描写は素敵なのですが、ミステリーやサスペンスのジャンルとして期待して読んだ分、展開が遅く感じてしまいました。
上記したような環境下での主人公と相棒?の絆の話として読むと良いかもしれません。