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アイルランドの村に移住してきた元警官は消えた青年を捜すが――緻密な描写で年間ベストミステリに多数入選した重厚なる犯罪小説
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Posted by ブクログ
長編小説特有のずっしりした読後感。アメリカで長年警察官だった男が、都会ぐらしや警察の闇に疲れ、アイルランドの辺鄙な田舎へ引っ越す。何十年も放置されていた家屋を修繕し、少しずつ近隣住民に溶け込んでいく。ある日、村民から除け者にされている家の子供からの、妙な依頼を引き受けたことがきっかけで、不穏なことが...続きを読む起こり始める。元警察官の勘と知識で取り組んでいくが、事態は想像よりずっと深刻だった、、、。田舎暮らしで起こる住民との交流(良くも悪くも)、悪気のなさが引き起こす好ましくない事態、独特の倫理観など、どこにでもあるちょっとした違和感が重なる重たいストーリー。ゆっくり時間をかけて読む一冊。
『本の雑誌』で絶賛されてたのと、物語の舞台がアイルランドだと言うのが気になって取り寄せ読んでみたところ、なるほどなるほど。シカゴで長年警察官だったのを辞め当地に移住してきた主人公をはじめ、登場人物のキャラクター設定(動物含む)がすごく効いてる。文庫本としてはギョッとする厚みだけれど読み始めたらページ...続きを読むを捲る手が止まらず一気読み。
タナ・フレンチを初読。アメリカ生まれのアイルランド在住の女流作家。ダブリン警察殺人課のシリーズ作品が主流なのだそうだが、未訳も多く、ぼくは読んでいない。本作は捜査小説というよりも、ヒューマンな色合いと、文明論、人生の深みといった本質部分を突いた完全独立作品である。 シカゴ警察を退職し、家族と別...続きを読むれ、人生を取り戻すためにアイルランドの片田舎に独り移住したカル。古い建物を修復しつつ、生活を再建させようとしていた彼は、頭を剃り上げた子どもトレイと出会い、その行方不明となった兄の捜索を出来る範囲でとの条件で引き受ける。 大都会シカゴから、大自然の真っただ中にある閑散とした小村への移住。広漠たる農地。泥炭地や森に囲まれた原野。ページを開くと、大河のようにゆったりとした時間が流れる。空気の静謐。哲学的孤独。そしてミヤマガラスたちの賑やかな営み等々が、読者の眼に飛び込んでくる。何という生活。 シカゴからやってきた刑事がすべてを捨てて、やってきた土地。古びた農家や古い家具を修繕する日々。近隣の孤独な農夫との僅かなつきあい。夜の星。近づく冬。 670ページの長大な作品である。行方不明の若者捜査は、公的なものではなく、警察の力は借りられない。村の者たちのつきあいもスタートしたばかりで心もとない。普通小説のような日々の狭間で作る真実探しの時間。家や家具の修繕。狩り、釣り、食事。 村に下りてゆくと食料品店や酒場がある。食料品店の母娘らとのふれあい。酒場では、村の者たちが酔いつぶれている。女性がマイクをとって「クレイジー」を歌う。かつてリンダ・ロンシュタットが歌っていた同じオールディーズ・ナンバーだろうとはぼくが想像。場のカオスな雰囲気にフィットする曲である。 主人公カルの車は、赤い三菱パジェロ。10年前までぼくが長年乗っていたマニュアル車と同じ奴であるかもしれない。パリ・ダカで篠塚が何度か優勝を決めていた時代の名車だが古い。今も残る幻のようなステアリングの手触り。 カルの捜索のお礼としてトレイが家具の補修やペンキ塗りを手伝う。その中でのやりとりは、きっと誰にも思い出させる。ロバート・B・パーカーの『初秋』だ。もしかしたらこの作品で一番美しく、一番心ときめくシーンはこの部分かもしれない。無口な子どもが次第に心を開いてゆく素敵なシーン。ミステリー部分よりも、このシーンこそが本書を最も気高くしているものなのかもしれない。 また主人公は、村と言う名の生き物の総体であるのかもしれない。村を構成する広大な農地、羊の放牧地。そして泥炭地を抱き込んだ未開の山脈。その中に呑み込まれた人々の生活とは、人生とは、季節とはなんであるのか? 消えた若者はどこに飲み込まれたのだろうか? 驚くほどの文学性と気品を示しつつ。タナ・フレンチのペンはぼくらの想像力を刺激してくる。終盤に至って思いがけぬ真実がいくつも、しかも徐々に明らかになってゆく。静かなる辺境であるからこそのドラマが見えてくる。そして人間たちの喜怒哀楽を飲み込む大自然という協奏曲が聴こえてくる。 美しいミステリー作品。『ザリガニの鳴くところ』が胸に突き刺さった読者に是非お勧めしたいネイチャー派の傑作である。
登場人物が丁寧に描かれ、アイルランドの村の自然と共に静謐な筆致で物語が語られていく。穏やかな中にも謎と伏線は張られ解き明かされていく、その過程にも無理がなく、好感。
アメリカ人の元警察官のカルがアイルランドに移り住みそこで出会ったトレイという子供。兄を探してほしいと依頼され少しずつ調べ始める。カルとトレイの交流がまず良くてそれだけで読む価値がある。その交流の中に徐々に漂い始める不穏な空気。トレイの兄はどこにいるのか、どうなったのか。派手な展開があるわけじゃなく直...続きを読む接的に犯罪が描かれているわけではないのに犯罪の匂いや不安が物語にずっと流れている。著者の作品をずっと待っていた甲斐がある出来で本当に面白い。
特に大きな事件が起こるわけではないが、主人公カルの周囲でいろんな出来事がおこりアイルランドの風景描写のなかで次第に集約されていく、ゆっくりとした流れが自然でパブでの村人の酒宴はあたかもその場にいるような臨場感がある。674ページの大長編だが2日間で読み切ってしまった。カルの周囲で飛び跳ねるトレイがか...続きを読むわいい。
アイルランド西部の田舎街。豊かな自然や動物たちと、まるで対照的な個性あふれる住民たちで構成された濃密なコミュニティ。そんな中に飛び込んだ元シカゴ市警の刑事。ゆっくりとしたペースで、主人公と「キッド」の関わり、そしてキッドの兄の行方探しが始まるのであった。 著者が女性というのに最後まで気づかなかったけ...続きを読むど、アメリカ在住の娘が長距離電話で主人公にアドバイスするシーンがすごく良かった。 3.7
ミステリではありますが、大自然の中、ゆったりしたテンポで進む小説。 そのリアルさで、胸に迫ります。 シカゴで警官をしていたカルは次第に熱意を失い、離婚し、職を辞めて、父祖の地アイルランドに移住してきた。 人里離れた廃屋をわざと選んで、補修しながらの暮らし。 村人とも少しずつ交流が始まるが、まだ互い...続きを読むに手探りで、ペースが合わないでいた。 ある日視線を感じ、男の子が覗いていたと知る。 少し離れた所に住むトレイという子で、みすぼらしい格好が気になり始める。 何気なく手作業を見せたり、教えたりするようになっていった。 このトレイは、仲のいい兄が失踪したので探してほしいという望みを実は抱いていた。 困惑しながらも、放ってはおけないカル。 兄というのが、自分で勝手に出て行っただけとも考えられたが‥ 愛し合っていた妻にとうに見限られ、それでもいまだに以前の感情がよみがえったり。 娘のことが気になって仕方がないが、もう子供ではないと突き放されたりしつつ。 閉鎖的な村の住人との付き合いも、近づきかけては不穏な気配が立ち込める。 必死で愚かな人の営み、精一杯でみみっちいすべてが、立ち向かいようのない自然の一部であるかのように。 取り返しがつかないことも、絶望ではなく、大きな流れの中に。緩やかにおさまっていく‥
シカゴ警察を退職したカルはアイルランド西部の村に移住し、廃屋を修繕しながら暮らしていた。 ある日カルは、地元の子どもに失踪した兄を探して欲しいと言われるが……。 アイルランドの大自然の美しさと不穏な空気感にのまれる物語。→ 登場人物がとてもリアルで、フィクションなのにまるで現実にある話かな、と思わ...続きを読むせる文章。すごい。 カルも、元警察官だけど全然警察官っぽくなくて、それがすごいリアル。ヒーローやないんよね。それがいい。 アイルランドの風景描写も秀逸。行ったことないけど目の前に浮かんだ。
高緯度地方に特徴的なものは、泥炭地だ。 本書の舞台になったアイルランドの田舎町でも、泥炭地が印象的に描かれる。 思春期に差し掛かった少年(象徴的な意味で少年だ)に大切なことはなんだろう。 丁寧に一つ一つの過程を、身体を動かして積み上げていく、例えば大工仕事のようなことか。あるいは、猟銃が扱え...続きを読むる欧米では狩猟も含まれるのか。銃の扱い方を教わることは、大人への通過儀礼としての役割もあるのだろう。 ロバート・Bパーカーの『初秋』を思わせる展開で、ミステリとしての要素よりも登場人物の成長譚として読み込んでいく。また、『初秋』でのスペンサーとスーザンのように、本書では主人公カルとレナの自立した関係が魅力的だ。 すっきりとした展開ではないが、高緯度地方特有の曇天を思わせるストーリーだった。
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