【感想・ネタバレ】小学五年生のレビュー

あらすじ

収録された17話の主人公は、いずれも小学五年生の少年。転校先で友達作りにしくじった子、男女のカラダの違いを意識しはじめる子、父親を亡くした寂しさで心が折れそうな子、親の離婚で幼いながら母親を支えていく子…。それぞれが直面している現実を、その小さな体で精一杯受けとめ、自分で考えながら成長していく。多感な時期の少年特有の感じ方、かけがえのない一瞬を、重松清ならではの温かいまなざしで切りとった。健気さに胸が熱くなる、愛おしい短篇集!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ーー重松清さん作品の「子ども」はタイムマシンだ。

手を取って教室まで引き込んでくれる。僕も生徒のひとりになった感覚にしてくれる。それはくすぐったかったり、ヒリヒリしたりするが、干上がっていたあの頃の感覚がみずみずしく蘇ってくるのを感じる。

今、僕にはちょうど小5の娘がいる。去年まで男の子の家にお邪魔させていただくこともあったが今年から行かなくなった。背が急に伸びだす子もいる。

つまり「小学5年生」は男女それぞれを意識し始める頃。ここからが分かれ道が始まる。逆に言えば、この頃までは「男女が体験や感覚を共有している」とも言える。

だから重松さんは第二次成長前の子どもたちをよく登場させるのではないかと思った。元「男の子」の男性読者も、元「女の子」の女性読者も共感できる領域が広い小学5年生。タイムスリップさせるには最適な季節だ。

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2023年08月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

少年の心の機微を、ここまで描けるのが本当にすごい!と思った。

『「人生で大事なものは、みんな、この季節にあった」と僕は考えていて、それは今後もずっと変わらないだろう。』
あとがきを読んでストン、と腑に落ちた。

自分も小5の頃が人生で一番、色んな事を感じていた時期だったなぁと常々思っていた。
大人になるにつれ、感じることから逃げるのが上手になっていくイメージ。

翌日が来なければ良いのにと毎日泣いたり、家族を心から愛おしく思ったり、心配かけたくなかったり、友だちと大冒険したり、本当に全力だったなぁ。

この感覚を忘れずに子どもと関われる大人でありたい、という戒めのためにも、大切な本棚リストに追加しました。
繰り返し読んでいこう。

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2023年05月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

様々な小学5年生の微妙な心の揺れ動きを描いた17編を集めた短編集である。
印象に残ったのは、「カンダさん」である。

「少年」は、隣の家に住む「久美子ねえちゃん」と姉弟のように育った。表題にある「カンダさん」というのは、その「久美子ねえちゃん」と婚約したものの、双方の両親の反対で結婚に至らなかった男の名前である。
「少年」にとって「カンダさん」は、「歳の離れたお兄さん」のような存在となり、一緒に雪合戦をし、プラモデルを作った。小学5年生だった少年にとって、「カンダさん」が手伝ってくれたプラモデルの出来は、「魔法か手品のようにきれい」であった。しかし、お姉さんとの結婚が破談となり、2年経ったとき、中学生になった「少年」が改めて目にしたプラモデルは、「接着剤が意外と外にはみ出していて、たいしたことはなかった」。
子どもに頃は、憧れていた大人や輝いて見えたものが、小学5年生から中学生への時間の中で、色褪せたことに気がつく物語だった。その後、「カンダさん」とは違う男が、「久美子ねえちゃん」と結婚することになる。ただ、その男は、もう中学生となってしまっていた「少年」にとって、「歳の離れたお兄さん」という存在にはならなかった。
「少年」の記憶に残るのは「カンダさん」という「お兄さんになりそこねたひと」であることが、子ども時代の思い出の持つ特別さを伝えている。

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2022年12月03日

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