あらすじ
いま日本中の人々が、不安、苦悩、孤独感にさいなまれている。「日本は再生できますか?」――。われわれに問われているのは、筋道立った思考の再起動である。親鸞聖人の思想、幕末の志士たちの生き様、そして関東大震災の教訓……。私たちの歴史を振り返ることで見えてくるものは何か? それはユーラシア大陸東端に位置する日本の地政学的な可能性であり、「原子力という火」と対峙する近代主義者としての覚悟である。親鸞聖人がいうように、「絶対他力」からはじめて自立自尊の大切さが浮かび上がるのだ。いま本気で考えるべきことは何か? 産官学のネットワークのなかで独自の思考を積み重ねてきた全体知の巨人が提示する真の復興構想、新しいエネルギー戦略とは? 『世界を知る力』待望の続編。
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Posted by ブクログ
"歴史を深く見つめて、現在の日本を考える。2011年3月11日に起こった未曾有の震災からどう復興していくかを考えた本。
共感する部分もあり、まだまだ自分の理解度が足りない部分もあり、勉強になった。"
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東日本大震災から6ヶ月後に出版された「3.11以降の日本を考える」ための書。
千年に一度の大事件から2年が経つが、基本的に現在でもここで述べられていることは有効である。むしろ現実が進歩していない。
「3.11以降の日本を考えるとき、安易な希望や絶望はいらない。根拠のない楽観に一喜一憂するのでなく、筋道を立てて深く考える事。その際、もっとも力になるのが、歴史の脈絡のなかで考えること」と、腹を据えてこの国難に立ち向かうべしと言われても、現在は原子力よりも景気といった金にしか興味のない人間ばかりになってしまった。
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歴史認識を深めるって、歴史に学べっていうことですよね。歴史は繰り返す。それはある意味、人間に進歩が無いということなんでしょう。子供の頃、否、今もよく言われませんか?「もう、あなたは何度言ったらわかるの⁈それはしちゃダメだって言ってるでしょ!」学ばないと。歴史に学び、先を読む者だけが生き残ることができる。これが正に歴史の事実です。波分神社は何の為に在ったのか?でも、学んだら、学んだ様に対策を打たなきゃね。こんなのがあったんだ。昔の人の知恵だねぇ。で、終わっていてはだめなんじゃない?って話ですよね。こんなにハイテクで便利な社会になつたんだから、学びつつ利便性も損なわない。そんな社会が創れるはずだよね。その為に投資しようよ。その為にはまた、日本人のアイデンティティを取り戻さなければならないよ、って話ですよね。パラダイムの大転換。社会主義でも無くて、自由主義でも無くて、日本人が歴史の中で培ってきた武士道的在り様をもう一度見直してみましょうよってことですよね。日本人よ、もっとしっかりせいよってことだよね。
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空間的な繋がりだけではなく過去からの時間的な繋がりたい。歴史から学ばなければならない。
日本創生として、太平洋側と日本海側(アジア)をリンクさせての産業復興、首都機能移転、原子力エネルギー戦略など、流石に日本のあるべき姿をよくよく考えていると思う。
ただ2018年現在、この本の提言通り良い方向に向かっているのだろうか。最後のページに「日本は終わっていない。(中略)この三重苦のなかで、何かに気付かざるをえなくなっているからだ」とあるが、果たして日本人は活力を持って日本創設を進めているのだろうか。
Posted by ブクログ
震災の直後に書かれた本書を長く積ん読にしていたのですが、その後の状況、日本を取り巻く環境の変化を踏まえて読んでみると、改めて参考になると思いました。時期もあるのでしょうか、やはり、叙述が熱を帯びていますね。
Posted by ブクログ
さすが寺島先生、重厚感のある、知識としても満たされた、満足感のある一冊です。
少し前の本ですが、今この時に読む意味のある本のように思いました。
寺島先生の原子力への主張は、一貫していてすごいと思う。
以前に、震災直後の東北の町での中継の中でもしっかり原子力維持の主張を貫いておられた。信念を感じる。
今、まさに寺島先生が経済学者を超えて、人間の道しるべとしてどのように日本人が歩むべきが示唆させれているこの姿に感慨を感じる。
ぜひ、新しい視座を与えてほしい。日本人の本当の琴線にふれる新しい時代を指し示してほしい。寺島先生の本を読んでいるといつも思うことがある。この時代に生きていて良かった。時代を交錯させて語るこの視点は今を生きる人たちに勇気を与えていると思う。
Posted by ブクログ
アメリカというプリズムを通さずに世界をみることが必要
大中華圏(中国本土+華僑)を意識する
ユニオンジャックの矢(ロンドン、ドバイ、バンガロール、シンガポール、シドニー)を意識する
小規模分散型が21世紀のITや電力系のキーワード
国境を超えるネットワークがうねりのような相関の中で世界を突き動かしており重層的に世界を見ることが必要
日本に求められているのは親米入亜=アメリカがアジアから孤立しないように配慮しながら、日本はアジアから信頼を確立していく
agree to disagree=賛成は出来なくても相手の主張の論点を理解する
Posted by ブクログ
日本総研の理事長、多摩大学学長、三井物産戦略研究所会長である寺島実郎さんの書。
テレビのコメンテーターで何度かお見かけしたことがあり、著作を読んで見たいと思った方だ。
本書は、大震災により日本人が不安、苦悩、孤独感にさいなまれていることに対し、歴史を振り返りながら日本復興の方策について熱く語る。
親鸞の思想、幕末志士たちの生き様、関東大震災の教訓から見えてくる日本再生へのヒントは秀逸だ。
気になったフレーズは以下のとおり。
多くの人たちから、震災への見舞いと励ましの言葉を受けたが、彼らの目の奥に「さて、この苦難の先に日本はどこへ向かうのだろうか」という問いかけを感じた。
直結する祖先の誰一人欠損していても、わたしやあなたの生命は存在しなかった。
祖先の知恵に謙虚に耳を傾けることが、新しい日本を創生していく上で、求められているのかもしれない。
ジャンルが違う重いテーマである。けれども、わたしはなるべく、そういう依頼をことわらないようにしている。自分の思想を鍛えるいい機会だからである。
古今東西を問わず人間は、社会不安が募ると、混迷し迷走している状況を束ねてくれるような力を志向する政治思想にもたれかかりやすい。
出荷したとき一本15円のトウモロコシが、最終的に札幌大通公園で焼きトウモロコシとして300円で売られている。(のこりの285円はどこに行ったのであろうか?)
アジアのダイナミズムと向き合うことを判断の基本とすることは間違いない。
IAEAで「堺の核査察予算の3割が日本で使われている」と聞かされて、意表をつかれた記憶がある。
「日本には友だちがいないよね」(シュミット独元首相)
絶対他力という考え方を見つめて思うのは、やはり、最初から「所詮自力で努力しても無駄」と考えていたのでは、他力の偉大さに気が付かないとうことである。
こうした米国の底なしとも思えるやさしさの裏側には、「これで、日本は終わった。恐れるに値する存在ではなくなった」という、一種の安心感が潜んでいることを感じるのである。
Posted by ブクログ
前作『世界を知る力』が売れたのでその続編ってか。タイトルには「?」
さて中身。
寺島さんが宗教を語るとは意外であった。
メインは4章、5章。
寺島さんの思いが書かれている。
日本国民が参画できるような政策を。
まさにその通りだと思う。
上から目線で復興のための増税よろしくって言われてもね。
ほんと、政治家、官僚はだめだな。
Posted by ブクログ
著書が伝えたいことは?
日本人に問われているのは、根拠のない自己過信や無原則な一億総懺悔ではなく、筋道立った思考の再起動である。創造の為には、深い洞察が不可欠である。遠く時間の経過を振り返り、深く問題の本質を考える視座なくして、真の創造はありえない。その視座が、広く深いほど、未来への構想は中身の濃いものとなる。
日本の歩むべき進路は、『自立自尊』の意思を明確にすることである。
親鸞を引用し、親鸞が説く、絶対他力という考え方…衆生の救済、浄土往生は、わたしたち自力によって達成できるものではなく、阿弥陀仏如来の働きという絶対他力に委ねるほかないとする教えである。
わたしたち、日本人は、戦後、平和で豊かな国を目指して歩いてきた。しかし、3.11によって、物質的な豊かさや空虚さや平和なるものの浅さを知った。
豊かさと安易な平和を追求するあまり、自立自尊の精神を見失った。日本の基軸を取り戻すための、日本同盟の在り方、日本の外交安全保障の在り方について、考えることが、内発の起点である。
それを取り戻さない限り、日本の未来は拓けない。
Posted by ブクログ
19日に日立製作所のイベントで寺島氏の講演会を聞いたこともあり、より氏の理解を深めるために本書を読んだ。歴史を振り返りながら、どのような心持で震災後の復興をしていくべきかを述べている。学者みたいに過度に理屈っぽくないところに好感が持てた。
「後代の負担を可能な限り少なくする無利子国債を提案したい…」「たとえば復興債券を購入すれば、相続税が減免されるというインセンティブをつけてはどうか」というアイデアや、東北で放射能汚染が軽減されるまで、バイオエタノールの材料として植物を生産するというアイデアはなかなか面白いと思った。
Posted by ブクログ
今この本を検索した際、前作も一緒にヒットして、再確認してみたけど、やっぱり星5つ付けてた。で、それならばってことで、次回作にも手を出してみた訳です。でもこれは期待はずれ。前回もこういう系統の内容だっけ?って首を傾げてしまった。広い意味でいうと、今回の震災の経験を通して世界に目を向けよう、ってメッセージかもしらんけど、正直、タイトルと内容の齟齬が目立ってしまっている。前作にあやかりたいという魂胆が見え見えだし、こんな内容だったらいっそのこと、原発関連書籍ってことをもっと前面に謳うべきじゃないか。という訳で、かなりの流し読みになったけど、タイトル抜きに考えても、充実しているとは言い難い内容でした。
Posted by ブクログ
自分の意見をしっかり形成していくためにはこのように勉強していくのだ、というとてもいいお手本になると思いました。
「(3.11のような)絶望的な状況に直面し、無力さを自覚し、瞬間的には打ちひしがれてしまったとしても、自力でとことん突き詰めてきた人には、必ず他力の働きが、闇夜のなかの一点の光明として浮かび上がってくるということだろう」と筆者は浄土真宗の他力本願の意を解して、日本人の魂の基軸を呼び覚まそうとしている。このほか夏目漱石だどか、先人の貴重な教えをうまく引用し、今の国難にどう立ち向かっていくかを力強く主張されています。東北復興に関しての具体的な対応が述べられているわけではありませんが、すくなくとも何かやらなければ、いやしっかりとした考えを持たなければと意識づけをしてくれる読みやすい本だと思います。
Posted by ブクログ
3.11以後のモノの捉え方について述べた本。
これまでの価値観を拠り所にして復興をはかるのではなく、
より深く掘り下げて自分達のあり方を問うて復興をはかるべしということですね。
政治家はいまだ冷戦時代のモノの考え方を脱し切れていないという指摘は「なるほど」ですね。
Posted by ブクログ
東日本大震災から東北とそして日本がどのように復興するかを考える本。 復興を考える場合、ビジョンとともに基底となる考えが必要とするならば、それは親鸞の魂であると説明する。親鸞は悪人も善人もナムアミダブツと唱えれば救われると説いた。自分の力ではどうしようもなく、他力に頼った昔の時代背景と、大震災を体験した現在は似た境遇にある。
具体的な政策提言
・太平洋側の県と日本海側の県が経済的に協力をする。(例:新潟県と福島県)アジア経済圏に近い日本海側地域の活性化と太平洋側の被災地域の復興を同時に進める。
・首都機能の移転。移転先を東北地方とし、復興のシンボル真剣度を世界に示す。
・原発の稼動が難しい状況にあるが、日本は原子力の基礎技術を失ってはならない。エネルギー問題は復興後も継続して考えなければならないテーマだから。
Posted by ブクログ
「識者が寄ってたかって意見を述べ、官僚が要領よく取りまとめる形の報告書は必ず平板な総花に落ち着く。未来構想とは全体知を持った人間とトップリーダーの鮮明な問題意識に支えられたビジョン形成力と仮説設定能力に依存するものであり、平板な知性の集合では生まれない。」痛切です。