あらすじ
小・中学校の正式な教科となった「道徳」。時代や社会、文化によって変わるものをどうやって学ぶのでしょう? そもそも道徳って何? 独特の視点とユーモラスな文章で日常に光を当てるノンフィクション作家・髙橋秀実さんが、道徳教育の現場を皮切りに、地球温暖化、映画、小説、シェアリング、VR、ハラスメントなど、あらゆる社会問題や現象から「ニッポンの道徳」を考察する傑作ルポルタージュ!
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Posted by ブクログ
めちゃくちゃ面白くて声を上げて笑ってしまった。この人の著書を他にも読んでみようと思った。考え方が面白い。決して学校教育の専門家でも、道徳教育の専門家でもないらしいが、道徳とは何ぞや?という出発点から、小学校1年生の道徳の教科書を読んで、「なんじゃこりゃ?」と思って、小学校の学習指導要領などを読み込み、斜めからなんとも言えない突っ込みを入れる。それが、ここ数年真面目に道徳教育を推進してきた私が読んで、すごく腑に落ちてしまうところが、悔しいけど面白い。
そう!そうなの!だから道徳教育って難しいのよ…なぜうまくいかないのかよくわかったわ…という感想です。道徳の教科書でやたら「がっこうは たのしい」と繰り返し書かれるけど、「たのしくない子もいるだろ?」とか。
「どうとくでは、よりよくいきるために たいせつなことについて みんなでかんがえるよ」という記述に対して「定年後か?」と突っ込み(笑)。
著者は語学が専門のようで、そもそも「よく生きる」とは…?と、「よく」の意味をとことん突き詰めて色々述べていて、実に面白い。「みんなでかんがえよう」の「で」についてもしかり。みんなで考えるなら自分で考えなくてもいいのか、とか。考えるとは一人ですることではないのか。「みんなとかんがえる」ならわかる、と。なるほどー!日本語は奥深い。
私はこの本で初めて「間主観」という考えを知った。昔の道徳では例えば、「正直であれ」だったが、それでは価値の押しつけになるので、「自分に正直であることについて、考えてみよう」となる。「正直である自分について考える」のだ。
ああ、なんてまどろっこしいのだ。押しつけはよくないとか、そんなこと言わず、人に優しくするとか、親切にするとか、正直であるとか、絶対的に正しい価値観は、人間社会にあるでしょう?道徳ではそれを教えればいいんじゃないですかね?
という感じで、著者が色々疑問に感じたことを突き詰めていく。VRに興味をもてば、取材を兼ねてVRのアミューズメント施設やVRのエッチな体験が店に行ったりとか、ハウステンボスの「へんなホテル」でAIのロボットとやり取りをしたりとか(このやりとりもすごく面白かった)。
世の中ではやっていることや(スマホやアプリ、話題の映画など)、現代の価値観(ハラスメントやコミュニケーション障害などの考え方)を、独自の切り口で「なんかおかしい」と捉え、道徳をなめてはいけない、と締めくくる。
あぁ、道徳。なんとも奥深い。