あらすじ
小・中学校の正式な教科となった「道徳」。時代や社会、文化によって変わるものをどうやって学ぶのでしょう? そもそも道徳って何? 独特の視点とユーモラスな文章で日常に光を当てるノンフィクション作家・髙橋秀実さんが、道徳教育の現場を皮切りに、地球温暖化、映画、小説、シェアリング、VR、ハラスメントなど、あらゆる社会問題や現象から「ニッポンの道徳」を考察する傑作ルポルタージュ!
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Posted by ブクログ
現代の日本の道徳について考察したノンフィクション。
テレビの事件報道を見ていて「これは道徳的にどうなのか」と思ったのが、この本を読むきっかけ。(首相の息子のスキャンダルなど) 道徳は家庭内のしつけとして、親から教えられるものと思っていたが、現在は学校で学ぶものらしい。この本では、子供から大人まで 道徳観についてのインタビューを行い、教育以外にも様々な現場の道徳観を知ることができて大変面白かった。
以前、大学教授が書いた道徳本を読んだが、論理的なあるべき論が多かった。正論だし言いたいことはわかるが、現実世界ではどうなのと思うことが多かった。道徳は人が共生していくための最低限のルールで、頭の中だけでなく実践して身につけるしかない。この本の事例は、いろいろ考えさせられることが多かった。
Posted by ブクログ
2018年度から小学校で「教科」として授業の
一つに割り当てられています。
通知表でも評価が下されるとか。
道徳では何を学ぶのでしょうか。前半はその
内容に迫ります。
後半では、大人の社会でも◯◯ハラスメント
など、道徳的観点で考えると、どういう結論
が導かれるのか、など実践的な題材を取り上
げます。
考えれば考えるほど深みにハマりそうな首題
に対して、リアルな取材を通して答えを見出
す著者の姿勢は、実に道徳的な感慨を抱かず
にはいられない一冊です。
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ面白くて声を上げて笑ってしまった。この人の著書を他にも読んでみようと思った。考え方が面白い。決して学校教育の専門家でも、道徳教育の専門家でもないらしいが、道徳とは何ぞや?という出発点から、小学校1年生の道徳の教科書を読んで、「なんじゃこりゃ?」と思って、小学校の学習指導要領などを読み込み、斜めからなんとも言えない突っ込みを入れる。それが、ここ数年真面目に道徳教育を推進してきた私が読んで、すごく腑に落ちてしまうところが、悔しいけど面白い。
そう!そうなの!だから道徳教育って難しいのよ…なぜうまくいかないのかよくわかったわ…という感想です。道徳の教科書でやたら「がっこうは たのしい」と繰り返し書かれるけど、「たのしくない子もいるだろ?」とか。
「どうとくでは、よりよくいきるために たいせつなことについて みんなでかんがえるよ」という記述に対して「定年後か?」と突っ込み(笑)。
著者は語学が専門のようで、そもそも「よく生きる」とは…?と、「よく」の意味をとことん突き詰めて色々述べていて、実に面白い。「みんなでかんがえよう」の「で」についてもしかり。みんなで考えるなら自分で考えなくてもいいのか、とか。考えるとは一人ですることではないのか。「みんなとかんがえる」ならわかる、と。なるほどー!日本語は奥深い。
私はこの本で初めて「間主観」という考えを知った。昔の道徳では例えば、「正直であれ」だったが、それでは価値の押しつけになるので、「自分に正直であることについて、考えてみよう」となる。「正直である自分について考える」のだ。
ああ、なんてまどろっこしいのだ。押しつけはよくないとか、そんなこと言わず、人に優しくするとか、親切にするとか、正直であるとか、絶対的に正しい価値観は、人間社会にあるでしょう?道徳ではそれを教えればいいんじゃないですかね?
という感じで、著者が色々疑問に感じたことを突き詰めていく。VRに興味をもてば、取材を兼ねてVRのアミューズメント施設やVRのエッチな体験が店に行ったりとか、ハウステンボスの「へんなホテル」でAIのロボットとやり取りをしたりとか(このやりとりもすごく面白かった)。
世の中ではやっていることや(スマホやアプリ、話題の映画など)、現代の価値観(ハラスメントやコミュニケーション障害などの考え方)を、独自の切り口で「なんかおかしい」と捉え、道徳をなめてはいけない、と締めくくる。
あぁ、道徳。なんとも奥深い。
Posted by ブクログ
「道徳」が学校の教育課程の中で正式な教科として位置付けられる、
少し前なら、「そりゃあ たちの悪い冗談でしょう」と一蹴されるところが、なんと現実となって立ち現われてきた。
私の知る限りの学校現場を思うと、こりゃあ ろくでもないことになっていくだろうなあ。
としか思えない。
「善と悪」はセットになって一つになっていると思うのですが、「善ばかり」が推し進められるのは怖しい。
Posted by ブクログ
学生時代、道徳の授業がなんとなく気持ち悪く、
意見を求められ、その意見に正解はないけど、まわりが納得するような意見を求められているような空気が苦手でした。
筆者の言うところの「日本の道徳教科書は「みんな仲良く楽しい」が大前提」で、それを感じ取ってと言われているような。
読んでみて腑に落ちたのは、日本の道徳の授業では「みんな」の中の自分を見つめる、みんなとうまくやっていくための「気持ち」を重視しているということ。
学校(あるいは道徳の授業)はファンタジーの世界だと思えば、当時の自分はもう少し気楽に過ごせたのかな。
なるほどと思ったのは、
ドイツの道徳教科書は「一人でいる」ことの価値を尊重する。一人の良い面と悪い面を考えさせ、そこから家族、共同体、国家、宗教へと広がり、「公平な方法で、人々がうまく共生することができるように法律が存在する」現実に目を向けさせる。論理的。そもそも孤独者同士のコミュニケーションなので障害があるのは当然で、技術やルールの学習が重要という考え方。
この本では、道徳からビジネス、AI、エコバックなどに話が広がり、ロボットにインタビューするところなど面白く読めた。ただ、最後にほぼ怒りで書いてるな〜と感じられる部分は少し残念でした。
Posted by ブクログ
道徳について真面目に語っている本かと思いきや世の中について考察している本でした。最初の方が堅苦しくてちょっと読みづらいですが後半が面白いです。SNSなどを見ていると気になるよくわからない正義感の正体がちょっとわかる気がしました。
Posted by ブクログ
道徳の授業は洗脳を行っているのか…と思ってしまった。集団で過ごすために和を重んじることは大切だけど、なんでもかんでも「みんなで」とか「みんな一緒に」とかを目指すのは怖いなぁ。「みんな」っていう言葉は曖昧でとても便利。
読みやすい文章でサクサク読めました。
Posted by ブクログ
道徳の小学校の教科書及び道徳の授業を参観しての筆者の感想をきさいしたものである、しかし面白いのは筆者がハウステンボスのロボットが働くホテルに宿泊して、ロボットにいろいろと聞いてみたりさらに実際に体験した不便なことを書いた場面であった。
Posted by ブクログ
著者の本読んだのこれで6冊目。現場に足を運び、当事者達に直接話を聞くスタイルは変わらず、小学校で先生や生徒に話を聞いたり、VRを体験したり、スマホ教室に通ったり。実体験からの独特の感性、切口による(とぼけた)考察は今回も面白かったが、若干いつもよりこじつけ的な感じが拭えなかった。
道徳とは、間主観、つまり自分を客観視する「自分」と、「みんな」(全員という意味ではなく)が承認する規範に気付き、それに従う事だと。簡単に言うと、「みんな」が困ったり迷惑に感じる様な言動をしない様に気をつけるという事か。小学校の道徳の時間は、「みんな」でその事を考える時間になっているらしい。
本作では、当時の菅総理の答弁が人ごとっぽく責任回避でしかないとか、眞子さん小室さん結婚騒動での眞子さんのコメントを批判していたりで、特定の個人に対する批判があり珍しく感じた。
Posted by ブクログ
小学校で導入される道徳の科目を発端に色々と著者の意見を述べている。少し自虐も混じえて冷笑気味。いじめをなくす目的で道徳の時間を作るのなら、その時間を面談などにあてて貧困や虐待、ヤングケアラーに気付けるようにしたほうがいいと思う。いじめは無くならない。大人の社会でもあるから。でも子供のいじめは発端が上記のようなことが理由だったりするのでそこに先生たちの大事な時間を投入できたらと思う。