あらすじ
天気を変えることはできない。
人間も、他の生きものも、あるがままを受け入れるしかない。
天気の研究に生涯をささげた藤巻博士。博士一家・四世代の歴史と、彼らとの出会いで変化していく人々の生きざまや家族の在り方を丁寧に描いた傑作連作短編小説。
『うさぎパン』、『左京区』シリーズ、『ありえないほどうるさいオルゴール店』の瀧羽麻子、新たな代表作。
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Posted by ブクログ
気象学専門の学者、藤巻博士を取り巻く家族たちを登場人物にした連作短編。
いつも空を見て、雨が降ると全身に浴びたがるような藤巻博士は、母親から人との交わりを苦手をしていることを心配されるようなタイプの人なのだが、この博士が掲載1つめと最後の短編でとても良い雰囲気を醸し出すのだ。
ネタバレになるが、その最初と最後の小道具が長靴。作品の間には55年もの年月が流れていて、その間の家族たちの物語が間に挟まれている(不倫や中間管理職の悲哀など浮世のテーマ作品もある)短編を読んだら、この博士と長靴がガツンの効いてくる。
伏線を張って…というタイプの連作短編ではないのだが、こういう回収の仕方もあるんだなぁと感心する。非常に心地よい小説。
俺もこれからはメモ帳を持って暮らすとしよう。
Posted by ブクログ
話は、1人の女性が藤巻家へ家事手伝いに行くところから始まります。二十四節気でお祝いをするのが家族行事であったり、風変わりなお坊ちゃんがいたりと、どこか変わっている藤巻家。そしてその藤巻家を取り囲む人々。
藤巻家はどんな人たちなのだろうか。
語り手が家族もしくはその周りの人たち1人1人から順に移っていくオムニバス形式でした。
『自分の頭で考えたことは、あなたの財産です。
残しておかないともったいない。』p247
家族が1人、また1人と増えていく中で、ずっと変わらないものだけではありません。変わっていくのが常です。
家族の心が離れかけたかと思いきや、思わずほっこりしてしまうあたたかな結末が待っていて良かったです。